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医療

中心静脈栄養:IVHの基礎知識

中心静脈栄養とは、口から十分な食事を摂ることが難しい場合に、血管を通じて必要な栄養を補う方法です。中心静脈と呼ばれる心臓に近い太い血管に、カテーテルという細い管を挿入し、そこから高カロリーの栄養液を直接体内に送り込みます。これは、腕などの細い血管に針を刺して行う点滴とは異なり、高濃度の栄養液でも血管への負担を少なく安全に投与できるという利点があります。 この栄養補給法は、様々な理由で食事が摂れない患者さんにとって、とても大切な役割を担っています。例えば、大きな手術の後で体力が弱っている方や、胃や腸などの消化器の病気で食事を消化吸収できない方、あるいは、心の問題で食事が摂れない方など、命を維持したり、健康状態を良くしたりするために欠かせないことがあります。 中心静脈栄養は、一人ひとりの患者さんの状態に合わせて、栄養の量や種類を細かく調整できます。必要な栄養素を適切なバランスで補給することで、患者さんそれぞれの体にとって最適な栄養管理が可能となります。十分な栄養が供給されることで、体の抵抗力が高まり、感染症などを防ぐ効果も期待できます。そのため、病気からの回復を早めるためにも重要な役割を果たします。 中心静脈栄養は、長い期間にわたって行う場合もあります。だからこそ、患者さん本人だけでなく、ご家族も、この栄養補給法について正しく理解しておくことが大切です。医師や看護師、管理栄養士などの医療スタッフから、中心静脈栄養の目的や方法、注意点などについて、十分な説明を受けるようにしましょう。
医療

点滴静脈注射(IVD)について

点滴静脈注射とは、血管に針を刺して薬液を体内に少しずつ入れる治療法のことです。よく耳にする「点滴」はこの治療法を指しています。正式には点滴静脈注射といい、英語ではintravenous drip infusionと表記され、略してIVDやDIVとも呼ばれます。 点滴静脈注射は、針を血管に通して細い管を繋ぎ、その管を高所にある薬液の入った袋に接続します。薬液は重力によって管の中を通り、ゆっくりと体内に滴り落ちていきます。この方法によって、必要な薬を適切な量と速さで投与することが可能になります。 点滴静脈注射は様々な場面で役立っています。例えば、体が脱水状態になった時に水分を補給したり、口から食事をとることができない患者さんに栄養を補給したりするために使われます。また、飲み薬では効果が出にくい薬や、すぐに効果を出したい薬を投与する際にも点滴静脈注射は有効です。 点滴静脈注射の大きな利点は、患者さんの状態に合わせて薬の量や投与する速さを細かく調整できることです。そのため、それぞれの患者さんに最適な治療を行うことができます。また、薬を直接血管に入れるため、効果が早く現れることもメリットの一つです。点滴静脈注射は、医療現場で欠かせない、安全で効果的な治療法として広く利用されています。
その他

介護と介助における情報技術の活用

社会の高齢化が進むにつれて、介護を必要とする人は増えている一方で、介護の仕事に従事する人は足りていません。この深刻な人材不足を解消するために、様々な形で情報技術を活用する試みが始まっています。 例えば、従来、紙とペンで行っていた記録をタブレット端末で行うことで、記録にかかる時間や手間を省き、他の業務に時間を充てることができるようになりました。また、センサーを使って利用者の状態を見守ることで、転倒などの事故を未然に防いだり、異変にいち早く気付くことができるようになりました。さらに、遠隔医療システムを導入することで、病院に行かなくても医師の診察や健康管理の指導を受けることができるようになり、利用者の負担軽減に繋がっています。 このように、情報技術には介護現場の負担を軽くし、より良い介護サービスを提供する可能性が秘められています。しかし、情報技術を導入するには、機器の購入やシステムの構築にお金がかかる上、職員に機器の使い方を教えたり、使い方を覚えるための時間も必要です。また、利用者の中には、情報機器に慣れていない、あるいは抵抗がある人もいるため、情報技術を使いこなせる人とそうでない人の差も生まれてきています。情報機器に頼りすぎることで、人と人との触れ合いが減り、温かみのある介護が難しくなるという声も聞かれます。 情報技術の恩恵を最大限に受け、より良い介護を実現するためには、国や地方自治体による費用面での支援、職員への研修、利用者への丁寧な指導などを通して、関係者全員が協力していくことが大切です。そして、情報技術はあくまで道具であり、人の温かさや思いやりを大切にする介護の心構えを忘れてはいけないでしょう。
医療

知能指数(IQ)を正しく理解する

知能指数、よく知られている知能指数(IQ)とは、人の知的な働きを数字で表したものです。知的な働きには、学ぶ力、筋道を立てて考える力、問題を解く力、覚える力など、色々な要素が含まれます。これらの力を総合的に見て、数字にすることで、その人の知能の高さを他の人と比べて知ることができます。 知能指数は、たいてい知能検査を受けて測ります。結果は年齢を基準に評価されます。同じ年齢の人と比べて、どのくらいの知的な力を持っているかを表す数字となるのです。例えば、10歳の子供が10歳児向けの知能検査を受け、その結果が10歳児の平均と同じであれば、知能指数は100になります。 知能指数は、学校での勉強や仕事探し、その他いろいろな場面で、その人の能力を評価する時に使われることがあります。しかし、知能指数だけでその人の全てがわかるわけではないことを知っておくことが大切です。知能指数はあくまでも知的な働きの一面を表すだけで、その人の性格や得意なこと、努力などは含まれていません。また、知能検査の結果は、体の調子や周りの環境などによっても変わる可能性があるので、知能指数を絶対的なものとして考えてはいけません。知能は複雑なもので、知能指数だけで全てを説明することはできないのです。 知能指数が高いからといって、必ずしも人生で成功するとは限りません。反対に、知能指数が平均より低くても、優れた才能や努力によって大きな成果を上げる人もいます。大切なのは、自分の得意なことを伸ばし、不得意なことを補う努力をすることです。知能指数は、自分の強みや弱みを理解するためのひとつの材料として活用し、より良い人生を送るために役立てることが重要です。
その他

自立への挑戦:IL運動とは

運動の目的は、一人ひとりが自分らしく、自立した生活を送れる社会を作ることです。これは、「自立生活運動」と呼ばれる取り組みの大きな目標でもあります。この運動は、特に障がいのある方や高齢の方が、介護を必要とする立場から脱却し、自分の人生を主体的にコントロールしていくことを目指しています。 具体的には、地域社会への参加を通して、自分たちの権利を守り、生活の質を高めるための活動を行います。例えば、移動の際に不便を感じている場所があれば、関係機関に改善を求める活動や、地域の人々と交流できるイベントなどを企画・実施します。こうした活動を通して、社会全体が、障がいのある方や高齢の方の気持ちやニーズを理解し、共に生きる社会を目指します。 この運動は、個人の自立を支えるだけでなく、社会全体の意識改革にもつながります。街の段差をなくしたり、公共交通機関を使いやすくしたりといった「バリアフリー化」も、この運動から生まれた取り組みの一つです。すべての人が暮らしやすい社会は、結果として、誰もが安全で快適に暮らせることにつながります。 誰もが他人の助けを借りずに生活できることが理想ですが、時には誰かの助けが必要になることもあります。この運動は、助けが必要な時に、必要な支援を受けられる体制作りも目指しています。そして、個人の尊厳を守り、誰もが自分らしく生きられる社会を実現することが、この運動の根底にある理念なのです。
医療

集中治療室:生命を守る最前線

集中治療室(ちゅうしゅうちりょうしつ)、略して「集中治療室」とは、生命の危険にさらされるほど状態の重い患者さんを、集中的に治療し、管理する特別な部屋のことです。生命維持に欠かせない呼吸、血液の循環、代謝といった機能が著しく低下している患者さんを受け入れ、昼夜を問わず常に状態を監視しながら治療を行います。まるで、患者さんの体を守り、回復へと導く砦のような場所です。 この部屋には、人工呼吸器や血液浄化装置など、高度な医療機器が備えられています。これらの機器を扱うには、専門的な知識と技術が必要です。ですから、集中治療室には、医師や看護師をはじめ、臨床工学技士や薬剤師など、専門的な技術を持った医療スタッフが常に待機しています。彼らは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、きめ細やかな医療を提供し、救命と機能の回復を目指します。まるで、患者さんの体を守るため、力を合わせた精鋭部隊のようです。 集中治療室は、一般病棟とは異なり、誰でも入れるわけではありません。入室できる患者さんは、集中治療室での専門的な治療や看護ケアを必要とする重篤な状態の方に限られています。そのため、入室基準が厳格に定められており、専門の医師が入室の必要性を判断します。これは、限られた資源の中で、より多くの命を救うために必要な措置です。 集中治療室は、患者さんにとって、まさに生命の瀬戸際を乗り越えるための大切な場所です。そして、医療スタッフにとっては、持てる知識と技術のすべてを注ぎ込み、患者さんの回復を願う場所でもあります。
その他

ICIDH:障害理解への一歩

国際障害分類(ICIDH)は、世界保健機関(WHO)が1980年に発表した、障害を整理し分類するための国際的な基準です。正式名称はInternational Classification of Impairments, Disabilities and Handicapsで、病気や怪我といった医学的な問題と、日常生活での支障を結びつけて理解しようとする、当時としては画期的な考え方でした。 この分類では、障害を三つの段階に分けて説明しています。まず、身体の器官や機能に異常がある状態を『機能障害』と呼びます。例えば、視力の低下や、手足の運動機能の低下などがこれにあたります。次に、日常生活での動作や活動に制限が生じることを『能力障害』と言います。これは、『機能障害』の結果として現れるもので、例えば、字が読みにづらくなったり、歩行が困難になるといった状態です。最後に、社会生活への参加に制限が生じることを『社会的不利』と呼びます。仕事や学校に行けなくなったり、地域活動への参加が難しくなるといった状態です。これもまた、『機能障害』や『能力障害』が社会生活に影響を与えた結果として現れるものです。 具体的な例として、交通事故で足を骨折したケースを考えてみましょう。骨折によって足の運動機能が損なわれるのが『機能障害』です。その結果、歩いたり階段を上り下りすることが難しくなるのが『能力障害』です。さらに、通勤や買い物ができなくなり、社会生活への参加が制限されるのが『社会的不利』です。このようにICIDHは、障害を単に医学的な問題として捉えるのではなく、社会的な側面も含めて包括的に理解しようとする重要な枠組みを提供したのです。しかし、ICIDHは障害を個人に帰属する問題として捉えていたため、その後、社会モデルに基づいた国際生活機能分類(ICF)へと発展していくことになります。
その他

ICF:できることに着目した新しい視点

国際生活機能分類、英語で言うとインターナショナル・クラシフィケーション・オブ・ファンクショニング、ディサビリティ・アンド・ヘルス、略してICFは、人々の健康状態をあらゆる側面から捉え、評価するための世界共通のものです。これは、二〇〇一年に世界保健機関(WHO)が提唱しました。これまで、障がいは個人の欠損や機能不全として捉えられていましたが、ICFはこの考え方から大きく転換し、個人が社会の中でどのように生活し、何が出来るのかという視点に重点を置いています。 ICFは、単に障がいの有無や種類を分類するのではなく、あらゆる人の生活機能、つまり人が生活の中で行う活動や参加の状態に着目します。そして、それらの活動や参加に影響を与える身体機能や構造、環境要因、個人要因といった様々な側面も合わせて評価します。例えば、足が不自由な人が階段を上ることが難しい場合、それは足の機能の低下だけでなく、階段に手すりがないといった環境要因も影響していると考えます。このように、ICFは心身の健康状態だけでなく、社会的な側面も包括的に捉えることで、より多角的で詳細な評価を可能にしています。 病気やけが、あるいは年を重ねることで生活機能が低下した場合、ICFを用いることでその状態を客観的に評価し、必要な支援やサービスを適切に判断することができます。例えば、家事や移動といった日常生活の動作が難しくなった場合、ICFに基づいた評価を行うことで、どのような支援が必要なのかを明確にすることができます。ICFは医療や福祉、教育など様々な分野で活用されており、個人に合わせた、きめ細やかな支援を提供するための重要な道具となっています。また、ICFは国際的に共通の尺度であるため、異なる国や地域間での比較研究やデータ収集にも役立ちます。これらのデータは、健康に関する政策の立案や国際協力にも活用され、世界中の人々の健康と福祉の向上に貢献しています。ICFは、人々の健康をより広く、深く理解するための革新的な枠組みと言えるでしょう。
介護保険

生活を支える介助の力

年を重ねると、これまで何気なく行っていた買い物や家事が、思うようにできなくなることがあります。足腰の衰えから、長い時間立っていることが難しくなったり、重たい買い物袋を運ぶのが大変になったりします。また、近年複雑になった家電製品の操作が分からなくなってしまう方もいらっしゃいます。このような体の変化や生活環境の変化によって、日常生活に支障が出てくることがあります。 買い物や家事の介助は、このような困難を抱える高齢者が、住み慣れた場所で安心して生活を続けられるようサポートするものです。買い物介助では、ご本人と一緒に買い物に出かけ、商品選びの付き添いや、重い荷物の持ち運びを支援します。また、ご本人に代わって必要な物を購入して届けることも可能です。ご家族に代わって買い物に行くことで、ご家族の負担軽減にも繋がります。 家事介助では、掃除機をかける、洗濯物を干す、布団を干す、食事の準備を手伝うなど、ご本人の状況や希望に合わせて、柔軟に対応します。たとえば、掃除機をかけるのが大変な場合は、ロボット掃除機の導入を提案したり、ご本人が掃除機をかけやすいように家具の配置を変えるお手伝いをすることも可能です。洗濯物を干すのが難しい場合は、洗濯乾燥機を活用したり、室内物干しを設置するなど、状況に合わせた対応を検討します。 介助は、身体的な負担を軽くするだけでなく、精神的な面でも大きな支えとなります。「自分のことは自分でやりたい」という気持ちを持ちながらも、思うように動けないもどかしさや、人に頼らざるを得ない状況を受け入れることは、誰にとっても容易ではありません。介助を通して、ご本人の「できること」を尊重し、できない部分を補うことで、安心感と自立心を育み、その人らしい生活の継続を支援します。また、介助者とのコミュニケーションを通して社会との繋がりを維持することにも繋がります。