ICIDH:障害理解への一歩

介護を学びたい
先生、「介護」と「介助」の違いがよくわからないのですが、教えていただけますか?あと、ICIDHとの関係性もよくわからないです。

介護の研究家
なるほど。確かに似ていますね。「介護」は、食事や入浴など、日常生活を送る上で必要な援助全般を指します。一方「介助」は、特定の動作や行為を支えることを指します。例えば、階段の上り下りを手伝うのは「介助」ですね。ICIDHは、これらの概念を整理するために作られた国際的な枠組みです。

介護を学びたい
つまり、「介助」は「介護」の一部と考えていいのでしょうか?ICIDHではどのように説明されているのですか?

介護の研究家
その通りです。「介護」の中に「介助」が含まれると考えて良いでしょう。ICIDHは、障害を「機能障害」「能力障害」「社会的不利」の3つの側面から捉えます。「機能障害」は身体機能の損傷、「能力障害」は日常生活動作の制限、「社会的不利」は社会参加の制限を表します。「介護」や「介助」はこれらの障害を軽減するための手段として位置づけられます。ICIDHの後継であるICFでは、これらの概念がより精緻化され、活用されています。
ICIDHとは。
「介護」と「介助」といった言葉に関連した用語集である『国際障害分類』(英語名:International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps、略称:ICIDH)について説明します。
国際障害分類とは

国際障害分類(ICIDH)は、世界保健機関(WHO)が1980年に発表した、障害を整理し分類するための国際的な基準です。正式名称はInternational Classification of Impairments, Disabilities and Handicapsで、病気や怪我といった医学的な問題と、日常生活での支障を結びつけて理解しようとする、当時としては画期的な考え方でした。
この分類では、障害を三つの段階に分けて説明しています。まず、身体の器官や機能に異常がある状態を『機能障害』と呼びます。例えば、視力の低下や、手足の運動機能の低下などがこれにあたります。次に、日常生活での動作や活動に制限が生じることを『能力障害』と言います。これは、『機能障害』の結果として現れるもので、例えば、字が読みにづらくなったり、歩行が困難になるといった状態です。最後に、社会生活への参加に制限が生じることを『社会的不利』と呼びます。仕事や学校に行けなくなったり、地域活動への参加が難しくなるといった状態です。これもまた、『機能障害』や『能力障害』が社会生活に影響を与えた結果として現れるものです。
具体的な例として、交通事故で足を骨折したケースを考えてみましょう。骨折によって足の運動機能が損なわれるのが『機能障害』です。その結果、歩いたり階段を上り下りすることが難しくなるのが『能力障害』です。さらに、通勤や買い物ができなくなり、社会生活への参加が制限されるのが『社会的不利』です。このようにICIDHは、障害を単に医学的な問題として捉えるのではなく、社会的な側面も含めて包括的に理解しようとする重要な枠組みを提供したのです。しかし、ICIDHは障害を個人に帰属する問題として捉えていたため、その後、社会モデルに基づいた国際生活機能分類(ICF)へと発展していくことになります。

ICIDHの課題と改訂

国際障害分類(ICIDH)は、障害を体系的に分類する画期的な試みでした。しかし、運用していく中でいくつかの課題が明らかになりました。ICIDHでは、『機能障害』、『能力障害』、『社会的不利』の三段階で障害を捉えていましたが、この三つの関係性が一方通行で、変化しないものと誤解されやすいという点が問題視されました。例えば、社会環境が整うことで『社会的不利』が改善されれば、『能力障害』も軽くなる可能性は十分にあります。階段の上り下りが困難な人が、社会の至る所にエレベーターやスロープが設置されれば、生活上の困難は少なくなります。このように、社会環境の変化が、個人の能力発揮に影響を与えるという視点がICIDHには欠けていました。
また、障害を個人の問題のみに限定して捉えがちであることも課題でした。障害は、個人の身体の状況だけでなく、社会の仕組みや周りの環境にも大きく左右されます。例えば、視覚に困難がある人が、点字ブロックや音声案内が整備されていない街で生活すれば、移動に苦労するのは当然です。このように、社会環境が整っていないことが、障害を持つ人の生活のしづらさにつながるという側面も考慮する必要があります。
これらの課題を解決するために、世界保健機関(WHO)はICIDHを見直し、二〇〇一年度に国際生活機能分類(ICF)を作りました。ICFでは、健康状態、身体機能・構造、活動、参加、環境要因、個人要因、これらがお互いに影響し合うことで障害が生まれると捉えています。さらに、ICIDHで使われていた否定的な表現を避け、より前向きで中立的な表現を使うことで、障害のある人が社会に溶け込みやすくなるように配慮しています。
| 項目 | ICIDH | ICF |
|---|---|---|
| 障害の捉え方 | 機能障害、能力障害、社会的不利の三段階で捉え、一方通行な関係性と誤解されやすい。個人の問題のみに限定して捉えがち。 | 健康状態、身体機能・構造、活動、参加、環境要因、個人要因がお互いに影響し合うことで障害が生まれると捉える。 |
| 社会環境の視点 | 社会環境の変化が個人の能力発揮に影響を与えるという視点が欠けている。 | 環境要因を考慮。 |
| 表現 | 否定的な表現 | 前向きで中立的な表現 |
ICFへの移行

国際生活機能分類、略してICFは、これまでの国際障害分類、略してICIDHが抱えていた課題を乗り越え、障害についてより広く深く、そして様々な角度から捉えるための新しい枠組みとして、世界中で広く受け入れられています。ICFでは、障害をその人自身の問題として捉えるのではなく、人と周りの環境との関わりの中で生まれるものだと考えます。これは、障害への向き合い方が、個人だけでなく社会全体にとっての責任であることを強く示しています。
つまり、障害をなくすべきものと考えるのではなく、一人ひとりの違いの表れとして受け止め、誰もが同じように社会に参加できる環境を作ることが大切なのです。ICFは、医療や福祉、教育や仕事など、様々な場面で使われています。医療の現場では、病気やけがをした後の生活のしづらさを評価し、より良い生活を送るための支援を考えます。福祉の現場では、介護や支援が必要な人の状況を把握し、適切なサービスを提供するために役立てます。教育の現場では、子どもたちが学びやすいように環境を整え、それぞれの個性に合わせた教育を行うために活用されます。また、職場で働く人々が能力を最大限に発揮できるよう、働きやすい環境を作るためにも役立ちます。このように、ICFは障害のある人たちの暮らしの質を高めるために、様々な形で役立っています。
日本でも、ICFの考え方に基づいた政策が進められています。障害を理由とする差別をなくすための法律が作られたり、様々な取り組みが行われています。これにより、社会全体で障害への理解が少しずつ深まってきています。ICFは、障害のある人もない人も、誰もが暮らしやすい社会を作るための大切な考え方と言えるでしょう。
| ICFの定義 | 障害についてより広く深く、様々な角度から捉えるための新しい枠組み |
|---|---|
| ICFの考え方 |
|
| ICFの活用場面 |
|
| ICFの効果 | 障害のある人たちの暮らしの質を高める。 |
| ICFと日本の政策 |
|
| ICFの意義 | 誰もが暮らしやすい社会を作るための大切な考え方。 |
理解の深まり

『国際生活機能分類(ICF)』という枠組みは、私たちが『障害』についてどのように考え、向き合っていくべきかを大きく変えました。これまでの『国際障害分類(ICIDH)』では、障害は個人のみに存在する問題として捉えられていました。そして、その状態は『病気』や『けが』の結果であり、社会とは切り離されたものとして扱われてきたのです。そのため、障害のある人は社会から隔離され、特別な支援や保護が必要な存在と見なされることが多かったのです。
しかし、ICFは障害を『個人の問題』から『社会全体で取り組むべき課題』へと転換させました。ICFでは、障害のある人も社会の一員であり、社会参加を通して充実した生活を送る権利を持つと考えます。つまり、障害は個人と社会環境との相互作用によって生じるものと捉えるのです。社会環境に問題があれば、それが障害を生み出す一因となると考えるのです。例えば、段差の多い街では、車いすの人は移動に苦労します。この場合、車いすの人の身体的な状況だけでなく、バリアフリー化が不十分な社会環境も障害を生み出しているとICFは捉えます。
ICFは障害のある人が社会に溶け込み、自分らしく生きるための具体的な方法も示してくれます。例えば、日常生活動作や社会生活への参加など、さまざまな側面からその人がどのような支援を必要としているかを明らかにし、適切なサービス提供につなげるためのツールとして活用できます。
ICFは、単なる分類にとどまらず、障害のある人の人権を守り、社会参加を後押しするための大切な道具です。私たち一人ひとりがICFの考え方を理解し、障害のある人への偏見や差別をなくすよう努めることが、誰もが暮らしやすい社会を作ることにつながるのです。
| 項目 | 国際障害分類(ICIDH) | 国際生活機能分類(ICF) |
|---|---|---|
| 障害の捉え方 | 個人のみに存在する問題 病気や怪我の結果 |
社会全体で取り組むべき課題 個人と社会環境との相互作用 |
| 障害のある人の位置づけ | 社会から隔離 特別な支援や保護が必要 |
社会の一員 社会参加を通して充実した生活を送る権利を持つ |
| 社会環境の役割 | 考慮されない | 障害を生み出す一因となる (例:バリアフリー化が不十分な環境) |
| ICFの活用 | – | 障害のある人が社会に溶け込み、自分らしく生きるための具体的な方法を示す 必要な支援を明らかにし、適切なサービス提供につなげるツール |
| ICFの意義 | – | 障害のある人の人権を守り、社会参加を後押しする 偏見や差別をなくし、暮らしやすい社会を作る |
今後の展望

人が年を重ねたり、病気やけがをしたりすることで、日常生活に不自由が生じることは避けられないことです。そのような状態になった時、周囲の支えは欠かせません。そこで重要となるのが「介護」と「介助」です。この二つの言葉は似ていますが、それぞれ異なる意味を持っています。
「介護」とは、日常生活を送る上で支えが必要な人を、心身両面から支えることを指します。食事や入浴、排泄の介助はもちろんのこと、話し相手になったり、趣味や生きがいを見つけるお手伝いをすることも含まれます。つまり、その人の生活全体をサポートするという、幅広い意味を持つ言葉です。
一方、「介助」は、特定の動作や行為を行う際に、必要なサポートを提供することです。例えば、階段の上り下りを手伝ったり、服を着替えさせたり、車いすの移動を支えたりといった行為が「介助」にあたります。つまり、「介護」の中の具体的な行動の一つ一つが「介助」と言えるでしょう。
高齢化が進む現代社会において、介護と介助の必要性はますます高まっています。今後、国際生活機能分類(ICF)のような枠組みをさらに活用し、それぞれの人の状態や希望に合わせた、きめ細やかな支援を提供していくことが重要です。誰もが安心して暮らせる社会を作るためには、介護と介助に対する理解を深め、共に支え合う仕組みを作っていく必要があります。周りの人と協力し合い、温かい社会を築いていきたいものです。
まとめ

これまで長い間、障がいは個人の問題として捉えられてきました。しかし、近年、障がいに対する考え方が大きく変わりつつあります。従来の考え方を示す国際障害分類であるICIDHから、新たな国際的な基準であるICFへと移行したことは、この変化を象徴する出来事と言えるでしょう。
ICIDHは、障がいを個人の欠損や機能不全として捉えていました。しかし、ICFは、障がいを個人と環境との相互作用の結果として捉えています。つまり、障がいを持つ人が社会生活を送る上で困難を感じるのは、その人の身体機能の問題だけでなく、社会環境が整っていないことも原因であると考えるのです。例えば、車椅子を使う人が階段しかない建物に入れないのは、その人の足が不自由であると同時に、建物にスロープなどの設備が備わっていないことが障壁となっているのです。
ICFの考え方は、障がいへの対応を個人だけでなく、社会全体で考える必要性を示しています。建物や交通機関のバリアフリー化を進めることはもちろん、障がいを持つ人への偏見や差別をなくすための啓発活動も重要です。また、障がいを持つ人がそれぞれの能力を発揮できるような支援体制の構築も欠かせません。
ICFの理念は、全ての人が人権を尊重され、社会に平等に参画できる社会の実現を目指すものです。これは、障がいを持つ人だけでなく、全ての人にとってより良い社会を作ることに繋がります。私たち一人ひとりが障がいに対する理解を深め、共に生き、共に支え合う社会の実現に向けて行動していくことが大切です。ICFは、そのための道しるべとなるでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 従来の考え方 | 障害は個人の問題として捉えられていた。国際障害分類(ICIDH)は、障害を個人の欠損や機能不全として捉えていた。 |
| 新たな考え方(ICF) | 障害を個人と環境との相互作用の結果として捉える。社会環境が整っていないことも障害の原因の一つと考える。 |
| ICFの考え方による障害への対応 | 社会全体で考える必要がある。
|
| ICFの理念 | 全ての人が人権を尊重され、社会に平等に参画できる社会の実現を目指す。 |
