BPSD

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食事の介助

異食への理解と対応

異食とは、食べ物ではないものを口に入れてしまう行動のことを指します。栄養価のないものだけでなく、体に害を及ぼす可能性のあるものまで口にしてしまうことがあります。具体的には、ボタンや紙くず、髪の毛といった身近にあるものから、土やチョーク、洗剤といった危険なものまで、様々なものが対象となります。乳幼児期には、何でも口に入れて確かめるという行動が見られるため、一過性のものとして捉えられることもあります。しかし、ある程度の年齢になってもこの行動が続く場合、または大人になってから始まる場合には、何らかの原因が隠されている可能性があります。異食の原因は一つではなく、複雑に絡み合っていることがほとんどです。鉄分や亜鉛などの栄養不足によって異食が起こるという研究結果もあれば、発達障害や自閉スペクトラム症、知的障害といった発達上の特性に伴って見られる場合もあります。また、強いストレスや不安を感じている時、寂しさや退屈を紛らわすために無意識に異食行動に及んでしまうケースも少なくありません。さらに、強迫性障害や統合失調症といった精神疾患の一つの症状として異食が現れることもあります。 picaと呼ばれることもあります。異食は、口にしたものによる感染症や中毒、消化器系の問題を引き起こす危険性があります。誤って大きなものを飲み込んでしまうと、窒息や消化管の閉塞といった生命に関わる事態に陥る可能性も否定できません。小さなお子さんであれば、保護者が周囲の環境に配慮することで異食行動を予防することができます。口に入れてしまいそうなものは手の届かない場所に置き、常に注意深く見守るようにしましょう。また、食事の内容を見直し栄養バランスを整えることも大切です。大人になってからの異食については、医療機関を受診し、原因を特定した上で適切な治療や支援を受けることが重要になります。自己判断で対処せずに、専門家の助言を仰ぎましょう。
その他

認知症の遊離型:自信と意欲の喪失

初期認知症において、『遊離型』と呼ばれる特徴を持つ方々が見られます。これは、認知症の進行に伴い現れる様々な心理症状、いわゆる行動心理症状(BPSD)の一つです。遊離型の特徴は、現実から逃避しようとする心の動きにあり、これまでは見られなかった変化として現れます。 以前は活動的で、趣味や人付き合いを楽しんでいた方が、急に何事にも興味を失い、無気力な状態になることがあります。好きなことや得意だったことでさえ、取り組もうとせず、誘いを断るようになることもあります。このような変化は、周囲の人々にとって、病気の症状として理解することが難しく、対応に困ってしまうことも少なくありません。家族や友人は、「なぜ急に変わってしまったのか」「どう接すればいいのか」と戸惑い、いらだちや不安を感じてしまうかもしれません。 遊離型の特徴が現れる背景には、認知機能の低下が大きく関わっています。記憶力や判断力が少しずつ衰えていく中で、自分自身への自信を失い、物事への意欲が低下していくと考えられています。また、住み慣れた場所からの転居や、親しい人との別れといった環境の変化や、精神的な負担、ストレスなども、遊離型の症状を引き起こす要因となりえます。 初期認知症における遊離型への早期発見と適切なケアは非常に重要です。本人が置かれている状況を理解し、穏やかな気持ちで過ごせるように支えることが大切です。焦らせたり、無理強いしたりするのではなく、以前好きだったことや得意だったことを、負担にならない範囲で一緒に楽しむなど、穏やかに心に寄り添うことが重要です。周囲の理解と支えが、患者さんの生活の質を維持する上で大きな役割を果たします。
介護職

認知症と不穏:理解と対応

『不穏』とは、心が落ち着かず、そわそわしたり、不安な気持ちになったりする状態を指します。具体的な行動としては、落ち着きなく手足を動かしたり、椅子から立ち上がっては座るといった動作を繰り返したり、理由もなく歩き回ったりする様子が見られます。また、同じ言葉を何度も繰り返したり、大声で叫んだり、意味の通らないことを口にしたりすることもあります。このような行動は、本人は意識的に行っているのではなく、何らかの原因によって引き起こされていると考えられます。 不穏な状態は、特に高齢者、とりわけ認知症の方に多く見られる症状です。認知症の方は、脳の機能が低下することで、周りの状況を正しく理解することが難しくなり、不安や恐怖を感じやすくなります。例えば、見慣れない場所にいたり、周りの人が誰だか分からなかったりすると、強い不安を感じ、不穏な行動につながることがあります。また、身体的な不調も不穏の原因となります。痛みや発熱、便秘など、言葉でうまく伝えられない不快感が、不穏な行動として表れることがあります。さらに、環境の変化も影響します。引っ越しや入院など、生活環境の急激な変化は、高齢者にとって大きなストレスとなり、不穏を引き起こす要因となります。 周囲の人にとって、不穏な行動の原因を理解することは難しいかもしれません。なぜこのような行動をとるのか分からず、対応に困ってしまうこともあるでしょう。しかし、不穏な行動には必ず理由があります。その理由を探り、理解することが、適切な対応への第一歩です。焦らず、まずは落ち着いて、何に不安を感じているのか、何か伝えようとしていることはないか、注意深く観察することが大切です。
介護職

認知症の周辺症状を知る

認知症の中核症状は、脳の機能が衰えることで直接的に現れる症状です。物事を覚えられない記憶障害や、考えをまとめたり判断したりする力の衰えである思考力の低下などが、中核症状の代表的な例です。 これらは、脳の神経細胞がダメージを受けることで起こります。 一方、周辺症状は、中核症状とは異なり、脳の機能低下に加えて、周りの環境や人間関係、日々の暮らし方などが複雑に関係して現れる二次的な症状です。 中核症状が直接的な原因であるのに対し、周辺症状は間接的な原因によって引き起こされます。 例えば、いつもと違う場所に引っ越したとします。すると、認知症の方は慣れない環境に戸惑い、不安な気持ちになることがあります。この不安な気持ちが、家から出て行ってしまう、いわゆる徘徊につながるケースがあります。 また、毎日決まった時間に食事をしていた人が、急に食事の時間が変わると、混乱して怒りっぽくなることもあります。これは、生活のリズムが崩れることで、精神的なバランスが不安定になることが原因と考えられます。 このように、周辺症状は、中核症状のように脳の機能低下だけが原因ではなく、様々な要因が重なって現れます。そのため、症状だけを見るのではなく、なぜそのような行動や感情が生まれたのか、その背景にある理由を丁寧に探ることが大切です。 周りの人とのかかわり方や、生活環境を見直すことで、症状が落ち着き、穏やかに過ごせるようになることも少なくありません。周辺症状への適切な対応は、認知症の方の生活の質を向上させる上で、非常に重要な要素と言えるでしょう。
介護職

認知症のBPSDについて

認知症によって起こる行動や心理面の変化は、専門用語で「BPSD」と呼ばれています。これは、「行動及び心理症状」のそれぞれの単語の頭文字をとったものです。BPSDは、認知症の中核症状である記憶の障害や、自分がどこにいるのか、今がいつなのかが分からなくなる見当識の障害とは異なり、周囲の環境や接し方によって大きく変化します。 BPSDには、様々な症状があります。例えば、落ち着きがなくなり、興奮したり、不安や焦燥感を訴えたりすることがあります。また、目的もなく歩き回る徘徊や、必要のないものを集めたり、食べられないものを口に入れたりするといった行動も見られることがあります。さらに、身だしなみに気を遣わなくなったり、 hallucinations といった症状が現れることもあります。 これらの症状は、認知症の方が置かれている環境や、周囲の人との関わり方に大きく影響を受けます。例えば、慣れ親しんだ環境から急に新しい場所に移ると、不安や混乱が生じやすくなります。また、周囲の人が忙しそうにしていると、認知症の方は寂しさや不安を感じ、落ち着かなくなることがあります。 BPSDへの適切な対応として、まずは認知症の方が安心して過ごせる環境を作ることが大切です。静かで落ち着いた雰囲気の中で、規則正しい生活リズムを維持することが症状の軽減に繋がります。また、認知症の方の気持ちに寄り添い、優しく声を掛けることも重要です。否定的な言葉遣いは避け、安心感を与えるように努めましょう。 BPSDは、介護する家族にとって大きな負担となることがあります。症状への理解を深め、適切な対応を学ぶことで、負担を軽減し、認知症の方とのより良い関係を築くことができるでしょう。地域包括支援センターや認知症疾患医療センターなどに相談することで、専門的な助言や支援を受けることもできます。