行動障害

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介護職

徘徊とその対策について

徘徊とは、目的もなく歩き回る行動のことで、特に認知症の方に多く見られます。一見すると、散歩をしているように見えることもありますが、徘徊と散歩は大きく異なります。徘徊の場合、本人は自分がどこに向かっているのか、何をしているのかを理解していないことが多いのです。まるで何かに突き動かされるように、ただひたすら歩き続けてしまいます。 この行動は、自宅や施設の中だけでなく、外に出てしまうことも少なくありません。そして、道に迷ったり、事故に遭ったり、転倒したりするなど、様々な危険が伴います。徘徊は、ご本人だけでなく、家族や介護をする人にとっても大きな心配事であり、肉体的にも精神的にも大きな負担となる深刻な問題です。 徘徊の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。最も大きな要因は、認知機能の低下です。記憶障害や判断力の低下により、自分がどこにいるのか、これからどうすればいいのかが分からなくなり、不安や混乱が生じます。この不安や混乱が、徘徊を引き起こす一つの要因となります。 また、心理的な要因も関係しています。環境の変化によるストレスや、寂しさ、不安感などが徘徊の引き金となることもあります。さらに、過去の習慣や生活リズムも影響します。例えば、以前仕事に行っていた人が、無意識のうちに以前の職場に向かうといったケースも少なくありません。 徘徊には様々な種類があり、場所や時間帯、行動パターンも人それぞれです。そのため、ご本人の状態をよく観察し、原因を探り、一人ひとりに合った対応をすることが重要です。徘徊の予防や対策としては、安全な環境づくりや、規則正しい生活リズムの維持、適度な運動、コミュニケーションなどが有効です。そして、徘徊が始まってしまった場合には、焦らず落ち着いて声かけをし、無理に止めようとせず、安全を確保しながら見守り、必要に応じて専門機関に相談することも大切です。
排泄の介助

弄便:理解と対応

弄便とは、自分の排泄物である便を触ったり、それを他の人や物に塗りつけたりする行為を指します。乳幼児期においては、便は自分から出たものとはいえ、興味深い対象の一つであり、この時期の弄便は発達の一過程として捉えられます。この時期に便を触ったり、それで遊んだりする行動は、成長とともに自然と消失していくことが一般的であり、過度に心配する必要はありません。しかし、幼児期を過ぎても弄便が続く、あるいは新たに始まる場合には、何らかの原因が潜んでいる可能性があります。 その背景として考えられる要因の一つに、発達障害があります。知的障害や自閉スペクトラム症などの発達障害では、感覚の過敏性や鈍感性が見られることがあり、これが弄便につながる可能性があります。また、決まった行動を繰り返す常同行動として弄便が現れることもあります。 発達障害以外にも、精神的なストレスや不安、過去のつらい経験なども弄便の引き金となることがあります。強いストレスを感じている、あるいは心に大きな負担を抱えていると、弄便という形で現れることがあるのです。特に、認知症の高齢者においては、認知機能の低下に伴い、弄便が見られるケースがあります。物事を理解したり判断する能力が低下することで、排泄に関する社会的なルールを忘れてしまったり、便意をうまく伝えられず、結果として弄便につながることがあります。 弄便は、単なる行動の問題として片付けるのではなく、その背後にある複雑な要因を理解することが重要です。何が原因で弄便が起こっているのかを丁寧に探る必要があり、その背景には発達上の特性や精神的な問題、身体的な要因など、様々な可能性が考えられます。そのため、弄便への適切な対応のためには、医療の専門家や介護の専門家への相談が欠かせません。専門家は、その人の状況に合わせて、適切な支援やアドバイスを提供してくれます。
医療

ピック病:知られざる認知症

ピック病は、脳の働きが徐々に衰えていく病気で、特に前頭葉と側頭葉という部分が縮んでしまうのが特徴です。この前頭葉は、額のあたりの脳で、思考や判断、感情のコントロールなどをつかさどっています。また、側頭葉は耳の上あたりに位置し、記憶や言語理解、聴覚情報処理といった役割を担っています。これらの部分が縮むことで、様々な症状が現れます。 この脳の縮みは、アルツハイマー病とも似た症状を示しますが、縮む場所が異なります。アルツハイマー病では脳全体が萎縮していくのに対し、ピック病では前頭葉と側頭葉という特定の部分が集中的に縮んでいくのです。また、ピック病では神経細胞の中に「ピック球」と呼ばれる異常な物質が溜まります。これがピック病特有の変化です。 ピック病は、40代から50代といった働き盛りの世代で発症することが多く、若年性認知症の一つに数えられます。アルツハイマー病と比べると患者数は少ないものの、働き盛りで発症するため、患者さん本人だけでなく、家族や職場など周囲への影響も大きくなります。仕事ができなくなることによる経済的な負担や、介護のための時間的な負担、精神的なストレスなど、様々な問題が生じる可能性があります。ピック病は進行性の病気であるため、現在の医学では完全に治すことはできません。しかし、早期に発見し、適切なケアを続けることで、症状の進行を遅らせ、患者さんの生活の質を維持、向上させることが期待できます。薬物療法による症状の緩和や、日常生活での困りごとをサポートするケアなど、様々な取り組みが重要です。