葛藤型

記事数:(1)

その他

認知症の遊離型:自信と意欲の喪失

初期認知症において、『遊離型』と呼ばれる特徴を持つ方々が見られます。これは、認知症の進行に伴い現れる様々な心理症状、いわゆる行動心理症状(BPSD)の一つです。遊離型の特徴は、現実から逃避しようとする心の動きにあり、これまでは見られなかった変化として現れます。 以前は活動的で、趣味や人付き合いを楽しんでいた方が、急に何事にも興味を失い、無気力な状態になることがあります。好きなことや得意だったことでさえ、取り組もうとせず、誘いを断るようになることもあります。このような変化は、周囲の人々にとって、病気の症状として理解することが難しく、対応に困ってしまうことも少なくありません。家族や友人は、「なぜ急に変わってしまったのか」「どう接すればいいのか」と戸惑い、いらだちや不安を感じてしまうかもしれません。 遊離型の特徴が現れる背景には、認知機能の低下が大きく関わっています。記憶力や判断力が少しずつ衰えていく中で、自分自身への自信を失い、物事への意欲が低下していくと考えられています。また、住み慣れた場所からの転居や、親しい人との別れといった環境の変化や、精神的な負担、ストレスなども、遊離型の症状を引き起こす要因となりえます。 初期認知症における遊離型への早期発見と適切なケアは非常に重要です。本人が置かれている状況を理解し、穏やかな気持ちで過ごせるように支えることが大切です。焦らせたり、無理強いしたりするのではなく、以前好きだったことや得意だったことを、負担にならない範囲で一緒に楽しむなど、穏やかに心に寄り添うことが重要です。周囲の理解と支えが、患者さんの生活の質を維持する上で大きな役割を果たします。