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高齢者の粘液便:理解と対応
便に粘液が混ざることを粘液便と言います。粘液自体は、腸の内側を覆う粘膜から分泌される、透明もしくは白っぽい、とろみのある液体です。この粘液は、腸壁を保護し、刺激から守る役割を担っています。さらに、便をスムーズに移動させる潤滑油のような働きもしています。ですから、健康な人でも少量の粘液は常に腸内に存在し、便に混ざって排出されています。通常は量が少ないため、特に意識することはありません。
しかし、何らかの原因で粘液の分泌量が増えると、便の表面に透明、白、または黄色のゼリー状のものとして目に見えるようになります。これが粘液便として認識される状態です。加齢に伴い、腸の働きが衰えると粘液の分泌量が増える傾向があり、高齢者で粘液便が見られることは珍しくありません。また、水分摂取が少ない、食物繊維の不足なども粘液の増加につながる可能性があります。
粘液便は、必ずしも病気の兆候を示すものではありません。一時的な体調の変化や食生活の影響で起こることもあります。しかし、粘液便が続く、量が多い、血が混じる、腹痛や発熱を伴うといった場合は、病気が隠れている可能性があります。例えば、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、感染性腸炎、大腸ポリープ、大腸がんなどが挙げられます。
粘液便に気づいたら、その色や量、形状、回数、そして同時に起こっている他の症状(腹痛、下痢、便秘、発熱など)がないか、注意深く観察することが大切です。特に症状が続く場合や不安な場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けるようにしましょう。