脳機能障害

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医療

運動性失語症:言葉を発しにくい障害

運動性失語症とは、脳の特定の部分が傷つくことで起こる言葉の障害です。この病気になると、他人の言うことは理解できるのに、自分の言いたいことをうまく言葉に出せなくなります。 頭の中では伝えたいことをきちんと考えているのに、口や舌、喉などの筋肉を動かすための命令が脳からうまく伝達されないことが原因です。そのため、話そうとしても、言葉が途切れてしまったり、「おはようございます」を「おあようございます」のように音の順番が入れ替わってしまったり、全く違う言葉が出てしまったりします。 例えば、朝、挨拶をしたいのに「おは…よ…う…ございます」と途切れ途切れになったり、「こんにちは」と全く違う言葉が出てしまったりするなど、様々な症状が現れます。 この病気は、脳卒中や事故による脳の損傷、脳の腫瘍などが原因で起こることが多いです。脳の中で言葉を話す機能をつかさどる部分が傷ついてしまうことが主な原因です。 運動性失語症の方は、話せないことに大きなもどかしさを感じており、周囲の理解と支援が必要です。周りの人は、患者が言葉を理解していることを認識し、辛抱強く接することが大切です。ゆっくりと話しかけたり、身振り手振りを使ったり、絵や文字で伝えるなどの工夫をすることで、コミュニケーションを円滑にすることができます。また、患者が伝えようとしていることを遮ったり、急かしたりせずに、じっくりと耳を傾けることも重要です。焦らず、穏やかに接することで、患者との信頼関係を築き、より良いコミュニケーションを実現できるでしょう。
医療

ウェルニッケ失語:理解と発話の困難

「ことばの理解の壁」というタイトルの通り、ウェルニッケ失語は、耳で聞いた言葉を理解する能力に深刻な影響を与える病気です。この病気は、失語症という、ことばに関わる能力に障害が生じる病気の一種です。 ウェルニッケ失語では、耳から入った音の情報自体は脳に届いているのですが、その音が持つ意味を正しく理解することができなくなります。 たとえば、誰かに「お茶をいれてください」と頼まれても、その言葉の意味が理解できないため、お茶をいれることができません。まるで外国の言葉を聞いているように感じたり、言葉が断片的にしか頭に入ってこないため、混乱してしまうことも珍しくありません。周囲の人から見ると、本人はきちんと聞いているように見えるのに、全く反応がないため、聞こえていないと勘違いされることもあります。しかし、実際は聞こえていないのではなく、聞こえた言葉の意味が理解できていないのです。 この、言葉を理解することが難しいという状況は、日常生活を送る上で大きな壁となります。たとえば、家族との会話や、お店での買い物、テレビやラジオのニュースなど、あらゆる場面でことばの理解が必要になります。しかし、ウェルニッケ失語になると、これらのことが非常に困難になります。簡単な指示を理解することも難しくなり、日常生活での様々な活動に支障をきたします。そのため、周りの人の理解と支援が不可欠となります。周囲の人は、ゆっくりと話しかけたり、絵や図を使って説明するなど、本人が理解しやすいように工夫することが重要です。また、焦らず、根気強く接することも大切です。
その他

知的な遅れへの理解を深める

知的な遅れとは、十八歳までに知的発達が遅れ、社会生活を送る上で周囲と同じように適応することが難しく、様々な場面で何らかの手助けが必要となる状態を指します。これは単に学校の勉強の成績が良くないというだけではなく、日々の暮らしを送る上で欠かせない能力を身につけるのが遅れていることを意味します。 具体的には、記憶したり、言葉を使ったり、文字の読み書きや計算、時間といった概念を理解する能力(概念的な領域)、周りの人と意思疎通をしたり、社会の決まり事を理解する能力(社会的な領域)、食事をしたり、服を着替えたり、トイレに行ったり、お金を管理したりといった日常生活における能力(実用的な領域)の三つの領域で評価を行います。これらの領域のうち、少なくとも一つの領域で周りの人と比べて明らかな困難を抱えている状態が知的な遅れと定義されます。 知的な遅れの程度は、どのくらい手助けが必要かによって、軽度、中等度、重度、最重度の四段階に分けられます。軽度であれば、学校での勉強や社会生活への適応も比較的容易ですが、重度になるほど、日々の暮らしの多くの場面で、いつも誰かの手助けが必要になります。 また、知的な遅れは、それだけで起こる場合だけでなく、他の発達障害や心の病気、脳の働きの障害などを併せて持っている場合もあります。そのため、一人一人の状態を丁寧に把握し、その人に合った適切な手助けを続けていくことが大切です。
医療

見慣れた顔もわからない?相貌失認とは

相貌失認とは、見知った人の顔が分からなくなる神経疾患です。家族や長年連れ添った配偶者、毎日顔を合わせる親友であっても、その顔を認識することが困難になります。これは、視力が低下しているわけでも、記憶を失っているわけでもない、顔の情報処理に特化した問題です。 この症状は、脳の特定の部位、特に顔の認識を担う領域が損傷を受けることで起こると考えられています。交通事故などの外傷や脳卒中などが原因となる場合もあれば、生まれつき、あるいは発達段階でこの機能に支障が生じる場合もあります。そのため、後天的な要因で発症する人もいれば、先天的な発達障害として抱える人もいます。 相貌失認になると、日常生活で様々な困難が生じます。例えば、誰かと会話をしている際に、相手が誰なのか分からず、会話がうまく続けられないことがあります。また、相手の表情を読み取ることが難しいため、場の雰囲気や状況を理解するのも難しくなります。これは、社会生活を送る上で大きな支障となるでしょう。さらに、テレビや映画を見ても、登場人物の顔を区別できないため、物語を楽しむことが難しくなることもあります。 相貌失認の症状の程度は人によって大きく異なります。軽度の人は、特定の状況下、例えば照明が暗かったり、人が大勢いる場所で顔を認識できないといったことがありますが、そうでない場合は問題なく顔を認識できます。一方、重度の人は、どんな状況でも全く顔を認識できない場合もあります。 相貌失認は、まだ広く知られていない疾患であり、この困難を抱えている人は周囲に理解されにくく、辛い思いをしているかもしれません。周囲の人は、相貌失認について正しく理解し、温かく接することが重要です。具体的な支援としては、名前で呼びかける、服装の特徴を伝える、今いる場所や状況を詳しく説明するなど、視覚情報以外で相手を識別する工夫をすることが大切です。また、本人が相貌失認であることを周囲に伝えることで、誤解やトラブルを減らすことができます。