病識欠如

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医療

ピック病:知られざる認知症

ピック病は、脳の働きが徐々に衰えていく病気で、特に前頭葉と側頭葉という部分が縮んでしまうのが特徴です。この前頭葉は、額のあたりの脳で、思考や判断、感情のコントロールなどをつかさどっています。また、側頭葉は耳の上あたりに位置し、記憶や言語理解、聴覚情報処理といった役割を担っています。これらの部分が縮むことで、様々な症状が現れます。 この脳の縮みは、アルツハイマー病とも似た症状を示しますが、縮む場所が異なります。アルツハイマー病では脳全体が萎縮していくのに対し、ピック病では前頭葉と側頭葉という特定の部分が集中的に縮んでいくのです。また、ピック病では神経細胞の中に「ピック球」と呼ばれる異常な物質が溜まります。これがピック病特有の変化です。 ピック病は、40代から50代といった働き盛りの世代で発症することが多く、若年性認知症の一つに数えられます。アルツハイマー病と比べると患者数は少ないものの、働き盛りで発症するため、患者さん本人だけでなく、家族や職場など周囲への影響も大きくなります。仕事ができなくなることによる経済的な負担や、介護のための時間的な負担、精神的なストレスなど、様々な問題が生じる可能性があります。ピック病は進行性の病気であるため、現在の医学では完全に治すことはできません。しかし、早期に発見し、適切なケアを続けることで、症状の進行を遅らせ、患者さんの生活の質を維持、向上させることが期待できます。薬物療法による症状の緩和や、日常生活での困りごとをサポートするケアなど、様々な取り組みが重要です。