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成年後見制度と旧準禁治産制度

かつて日本では、判断能力が十分でない方を守るための仕組みとして、禁治産制度と準禁治産制度がありました。これらの制度は、家庭裁判所が、心や体の不調やお金の使い方が荒いことなどを理由に、禁治産者または準禁治産者と判断するものでした。 禁治産者と判断された方は、財産を管理したり、契約を結んだりといった、日常生活における様々な行動について、法律上の資格が制限されていました。例えば、自分で預金を引き出したり、家や土地を売買したりすることができませんでした。常に、親族や弁護士などが代理人として代わりに手続きを行う必要がありました。これは、判断能力が不十分な方を保護するためでしたが、同時に、本人の権利や自由を大きく制限してしまうという問題もありました。 一方、準禁治産者と判断された方は、禁治産者ほどではありませんが、一部の行動について資格が制限されていました。例えば、高額な商品の購入や不動産の売買など、重要な法律行為を行う際には、代理人の同意が必要でした。日常生活を送る上では、ある程度の自由は認められていましたが、大きな金額の取引など、判断を誤ると重大な不利益を被る可能性のある行為については、代理人のサポートが必要とされていました。 しかし、これらの制度は、時代の変化とともに、様々な問題点が指摘されるようになりました。例えば、本人の権利を必要以上に制限しているという批判や、現代社会の複雑な状況に対応できていないという指摘がありました。また、禁治産者や準禁治産者という名称は、差別的であるという意見もありました。そこで、平成12年、これらの制度は廃止され、成年後見制度へと移行しました。成年後見制度は、本人の意思や人格を尊重し、必要な範囲で支援を提供することを目的とした、より柔軟で、本人中心の制度です。判断能力が低下した方々も、社会の一員として尊重され、可能な限り自立した生活を送れるよう、様々な支援が提供されています。