安全管理

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介護職

介護におけるリスクマネジメント

人々が安心して暮らせるよう、危険を予測し、未然に防ぐための活動がリスクマネジメントです。これは、私たちの生活の様々な場面で重要ですが、特に介護現場では欠かせません。 介護を受ける人にとって、住み慣れた場所や施設は生活の基盤です。そこで安心して日々を過ごすためには、安全な環境が不可欠です。しかし、介護現場では、転倒による骨折や、食事の際の誤嚥、薬の飲み間違い、感染症の拡大など、様々な危険が潜んでいます。これらの危険を放置することは、命に関わる重大な事故に繋がる可能性があります。 リスクマネジメントは、これらの事故を未然に防ぐための一連の活動です。まず、現場をよく観察し、どんな危険が潜んでいるかを予測します。例えば、床に物が散乱している、手すりが設置されていない、照明が暗いといった点が危険につながる可能性があります。次に、予測された危険に対して、具体的な対策を考えます。例えば、床の整理整頓、手すりの設置、照明の明るさの調整などが挙げられます。そして、考えた対策を実行し、その効果を評価します。評価に基づいて、対策を改善していくことで、より効果的なリスクマネジメントを実現できます。 リスクマネジメントは、単に事故を防ぐだけでなく、介護を受ける人の生活の質を高めることにも繋がります。安全な環境が確保されれば、安心して日常生活を送ることができ、自立した生活を支援することに繋がります。また、介護を提供する側も、安心して仕事に取り組むことができます。つまり、リスクマネジメントは、介護を受ける人、提供する人、双方にとってより良い介護を実現するための重要な取り組みと言えるでしょう。
介護職

ヒヤリハットで事故を防ごう

「ヒヤリハット」とは、介護の現場で起こる「ひやりとした」「はっとした」出来事のことです。これは、実際に事故にはならなかったものの、一歩間違えれば大きな事故につながっていたかもしれないという事例を指します。高齢者の生活を支える介護の現場では、様々な危険が潜んでおり、常に注意が必要です。 高齢者の身体機能の低下は、ヒヤリハットの大きな要因の一つです。例えば、立ち上がろうとした際にふらついて転びそうになる、歩行中につまずく、などが挙げられます。これらの動作は、普段私たちにとっては簡単に行えるものですが、加齢に伴い筋力が衰えたり、バランス感覚が鈍ったりすることで、高齢者にとっては大きな危険となります。また、視力の低下や反応速度の遅れも、ヒヤリハットにつながる可能性があります。 認知症も、ヒヤリハットの発生に大きく関わる要素です。認知症の高齢者は、判断力や記憶力が低下しているため、危険な行動をとってしまうことがあります。例えば、火のついたコンロを触ってしまう、熱い湯を浴びてしまう、徘徊して行方不明になってしまう、といった事例が考えられます。このような状況は、本人だけでなく、周りの人々にも大きな不安や負担を与えます。 食事に関わるヒヤリハットも少なくありません。噛む力や飲み込む力が弱くなっている高齢者は、食事中にむせたり、食べ物を詰まらせてしまったりする危険があります。誤嚥性肺炎は、高齢者の命に関わる重大な病気の一つであり、食事介助の際には細心の注意が必要です。 ヒヤリハットを記録し、分析することは、介護の質の向上に不可欠です。なぜその出来事が起こったのか、どうすれば防げたのかを検討することで、再発防止策を立てることができます。また、ヒヤリハットの情報を共有することで、他の職員も同じミスを繰り返さないように注意することができます。ヒヤリハットを「ただの偶然」で済ませず、真摯に受け止め、改善につなげる姿勢が、安全な介護環境を実現するために重要です。
介護職

介護現場におけるハインリッヒの法則

アメリカのハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が提唱したハインリッヒの法則は、労働災害における経験則であり、介護現場においても重要な示唆を与えてくれます。この法則は、「一つの大きな災害の背後には、二十九の軽いけがを伴う災害が存在し、さらにその背景には三百のひやりとする出来事(事故にはならなかったものの、事故につながる可能性のある出来事)が隠れている」と説いています。 これは、海に浮かぶ氷山の一角に例えることができます。海面から出ている大きな氷山の一角は、重大な事故を象徴しています。しかし、その下に隠れている巨大な氷山の本体部分のように、目に見えない軽微な事故やひやりとする出来事が数多く存在するのです。これらの小さな兆候を軽視すると、いずれ大きな事故につながる危険性があることを、ハインリッヒの法則は教えています。 介護現場では、転倒や薬の飲み間違いなど、重大な事故につながる危険が常に潜んでいます。例えば、利用者の方が廊下を歩いている際に少しよろめいたとします。これは「ひやりとする出来事」に該当します。この時、すぐに対応しなければ、後日、実際に転倒し骨折するといった「軽いけがを伴う災害」につながるかもしれません。そして、骨折した箇所の処置が不適切であった場合、寝たきりになってしまうといった「重大な災害」に発展する可能性も考えられます。 このように、小さな兆候を見逃さず、適切な対策を講じることが、重大な事故を未然に防ぐために不可欠です。ハインリッヒの法則を理解し、日々の業務の中で危険の芽を摘み取るよう心掛けることで、安全な介護環境を築き、利用者の方々の安心を守ることができます。