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見慣れた顔もわからない?相貌失認とは
相貌失認とは、見知った人の顔が分からなくなる神経疾患です。家族や長年連れ添った配偶者、毎日顔を合わせる親友であっても、その顔を認識することが困難になります。これは、視力が低下しているわけでも、記憶を失っているわけでもない、顔の情報処理に特化した問題です。
この症状は、脳の特定の部位、特に顔の認識を担う領域が損傷を受けることで起こると考えられています。交通事故などの外傷や脳卒中などが原因となる場合もあれば、生まれつき、あるいは発達段階でこの機能に支障が生じる場合もあります。そのため、後天的な要因で発症する人もいれば、先天的な発達障害として抱える人もいます。
相貌失認になると、日常生活で様々な困難が生じます。例えば、誰かと会話をしている際に、相手が誰なのか分からず、会話がうまく続けられないことがあります。また、相手の表情を読み取ることが難しいため、場の雰囲気や状況を理解するのも難しくなります。これは、社会生活を送る上で大きな支障となるでしょう。さらに、テレビや映画を見ても、登場人物の顔を区別できないため、物語を楽しむことが難しくなることもあります。
相貌失認の症状の程度は人によって大きく異なります。軽度の人は、特定の状況下、例えば照明が暗かったり、人が大勢いる場所で顔を認識できないといったことがありますが、そうでない場合は問題なく顔を認識できます。一方、重度の人は、どんな状況でも全く顔を認識できない場合もあります。
相貌失認は、まだ広く知られていない疾患であり、この困難を抱えている人は周囲に理解されにくく、辛い思いをしているかもしれません。周囲の人は、相貌失認について正しく理解し、温かく接することが重要です。具体的な支援としては、名前で呼びかける、服装の特徴を伝える、今いる場所や状況を詳しく説明するなど、視覚情報以外で相手を識別する工夫をすることが大切です。また、本人が相貌失認であることを周囲に伝えることで、誤解やトラブルを減らすことができます。