
作話:記憶の謎を解き明かす
作話とは、実際には起こっていない出来事を、まるで本当にあったことのように話すことです。例えば、実際には家にいたにも関わらず、「昨日、デパートへ買い物に行った」と話したり、会ったことのない人と会ったと主張したりすることがあります。
作話で重要なのは、話している本人は嘘をついている認識がないということです。本人は話している内容を真実だと心から信じ込んでいます。そのため、たとえ周囲から「それは違う」と指摘されても、本人は納得せず、かえって混乱したり、不安になったりすることがあります。作話は、記憶の欠落を無意識のうちに埋め合わせようとする脳の働きによるものと考えられています。
作話は、認知症の症状としてよく見られます。認知症では、脳の機能が低下することで記憶障害が起こり、その空白を埋めるために作話が現れることがあります。また、うつ病や脳の損傷など、他の病気でも作話が見られることがあります。
しかし、病気ではない健康な人でも、強い疲れや精神的な負担を感じている時などに、一時的に作話をすることがあります。これは、心身への負担によって脳の働きが一時的に不安定になることが原因と考えられます。通常は、十分な休息をとったり、ストレスの原因を取り除いたりすることで改善します。
もし、身近な人が作話をした場合、決して叱ったり、嘘つき呼ばわりしたりしてはいけません。そのような対応は、本人をさらに混乱させ、不安を強めることにつながります。まずは、なぜ作話が出ているのかを理解しようと努め、落ち着いて、優しく接することが大切です。そして、必要に応じて、医師や専門家などに相談することも検討しましょう。作話は、人の記憶の仕組みの複雑さを示す現象の一つと言えるでしょう。