ゆっくりと進行する硬膜下血腫
介護を学びたい
先生、「硬膜下血腫」って、頭をぶつけたときすぐに症状が出るものじゃないんですか? 何ヶ月も後になってから症状が出るのがよくわかりません。
介護の研究家
いい質問だね。確かに、頭を強く打った場合はすぐに症状が現れることが多いけど、「硬膜下血腫」の場合は、じわじわと脳の表面と硬膜の間に血が溜まっていくから、すぐには症状が出ないことが多いんだ。たとえるなら、蛇口から少しずつ水が漏れて、バケツがいっぱいになるまで時間がかかるようなものだね。
介護を学びたい
なるほど。でも、少し頭をぶつけただけでもなるんですか?
介護の研究家
そうなんだ。軽い打ち身でもなる可能性はある。特に、高齢の方や血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、少量の出血でも「硬膜下血腫」になるリスクが高くなるので注意が必要だよ。些細なことで頭をぶつけた場合でも、しばらく様子を見て、おかしいなと思ったらすぐに病院で診てもらうことが大切なんだ。
硬膜下血腫とは。
「介護」と「介助」について説明する前に、「硬膜下血腫」という症状についてお話します。これは、頭を軽くぶつけた後、一か月から三か月ほどかけて、ゆっくりと硬膜と脳の間に血が溜まっていく症状です。軽く頭をぶつける原因としては、転んだり、高いところから落ちたり、交通事故に遭ったり、殴られたりなどが多く、この症状が出ると、意識がぼんやりしたり、頭が痛くなったり、目が回ったり、吐き気を催したり、吐いたり、もの忘れなどの症状が出ます。血の塊が少量であれば、飲み薬で治療できますが、血の塊が多い場合は手術が必要です。再発する割合は一割程度と言われていますが、血の巡りを良くする薬を飲んでいる人や、脳が縮んでいる人、肝臓や腎臓の働きが悪い人、転倒を繰り返す人は、再発する割合が高くなります。
硬膜下血腫とは
硬膜下血腫とは、脳を包む硬膜とそのすぐ内側にあるくも膜の下の空間に血液がたまる病気です。この病気には大きく分けて急性と慢性があります。急性硬膜下血腫は、交通事故などの強い衝撃によって脳が損傷し、頭蓋骨の内側にある血管が破れることで発症します。出血が急激で症状も重篤なことが多く、緊急手術が必要になる場合もあります。
一方、慢性硬膜下血腫は、比較的軽い頭部への衝撃がきっかけで発症します。例えば、少し頭をぶつけた、転んで頭を打ったなど、日常生活で起こりうる程度の軽い外傷でも発症する可能性があります。特に高齢者の方や血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、わずかな衝撃でも出血しやすく、慢性硬膜下血腫になりやすいため注意が必要です。
慢性硬膜下血腫の場合、出血はゆっくりと時間をかけて進むため、初期には自覚症状がないことがほとんどです。そのため、気づかないうちに少しずつ症状が進行し、数週間から数か月後に頭痛やめまい、吐き気、物忘れ、手足のしびれや麻痺などの症状が現れることがあります。また、症状が徐々に進行するため、加齢による変化と勘違いしてしまう場合もあります。
慢性硬膜下血腫は、頭部CT検査やMRI検査で診断されます。治療は、血腫の大きさや症状の程度によって異なりますが、小さな血腫で症状が軽い場合は、経過観察となることもあります。血腫が大きく、症状が重い場合は、手術によって血腫を取り除く処置を行います。
日常生活で頭をぶつけるなどの軽い外傷後、しばらく経ってから上記の症状が現れた場合は、慢性硬膜下血腫の可能性があります。早期発見、早期治療が大切ですので、医療機関を受診しましょう。
分類 | 原因 | 症状 | 診断 | 治療 | その他 |
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急性硬膜下血腫 | 交通事故などの強い衝撃による脳損傷、頭蓋骨内側血管の破裂 | 重篤な症状、緊急手術が必要な場合も | 緊急手術 | ||
慢性硬膜下血腫 | 比較的軽い頭部への衝撃
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頭部CT検査、MRI検査 |
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高齢者や血液サラサラ薬服用者は発症しやすい。加齢変化と症状を間違えやすい。 |
症状の特徴
慢性硬膜下血腫は、頭部に軽い衝撃を受けた後に、脳を覆う硬膜の下にじわじわと血液が溜まる病気です。この病気の特徴は、症状が非常に多様で、しかもゆっくりと時間をかけて現れることです。そのため、他の病気と間違えやすく、診断が難しい場合があります。
代表的な症状としては、まず頭痛があります。これは、血腫が脳を圧迫することで起こります。また、めまいや吐き気もよく見られる症状です。これらの症状は、脳への圧迫が原因で起こると考えられています。さらに、物忘れや認知機能の低下といった症状も現れることがあります。これは、血腫が脳の働きに影響を与えるためです。具体的には、新しいことを覚えにくくなったり、判断力が鈍ったり、性格が変わったように見えることもあります。また、手足のしびれや麻痺といった症状が現れる場合もあります。これは、血腫が運動をつかさどる脳の領域を圧迫するために起こります。
これらの症状は、高齢者によく見られる加齢による変化や、他の病気の症状と似ていることが多く、見過ごされてしまうケースも少なくありません。例えば、物忘れは老化現象と片付けられてしまったり、頭痛はよくあることとして放置されてしまうことがあります。また、症状が一時的に改善することもあり、そのため「治った」と勘違いして、発見が遅れる可能性もあります。
慢性硬膜下血腫は、早期に発見し、適切な治療を行えば、多くの場合、良好な経過をたどることができます。ですから、たとえ軽い頭部外傷であったとしても、その後に少しでも異変を感じたら、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。特に、高齢者の方の場合は、注意深く観察し、少しでも気になることがあれば、早めに医師に相談するようにしましょう。
症状 | 説明 |
---|---|
頭痛 | 血腫による脳の圧迫 |
めまい、吐き気 | 脳への圧迫 |
物忘れ、認知機能の低下 | 血腫による脳への影響(新しい記憶の困難、判断力低下、性格変化など) |
手足のしびれ、麻痺 | 血腫による運動をつかさどる脳領域の圧迫 |
特徴
- 症状が多様で、ゆっくりと現れる
- 高齢者の加齢変化や他の病気の症状と似ているため見過ごされやすい
- 症状が一時的に改善することがあり、発見が遅れる可能性がある
早期発見・治療で良好な経過をたどることが可能
軽い頭部外傷後でも異変を感じたら医療機関を受診することが重要(特に高齢者)
原因と危険因子
慢性硬膜下血腫は、頭を軽くぶつけるなどの比較的小さなケガがきっかけで発症することがほとんどです。特にご高齢の方では、加齢に伴う脳の萎縮によって、脳を包む硬膜と脳本体との間に隙間が生じやすくなります。この隙間は、脳が収縮して頭蓋骨との間に空間ができることで生じるものです。この空間が広がると、わずかな衝撃でも頭蓋骨と脳の間を走る血管が引っ張られたり、ねじれたりして損傷しやすくなります。そして、この血管の損傷が出血を引き起こし、ゆっくりと時間をかけて硬膜下血腫が形成されていきます。
血液をサラサラにする薬を服用している方も、慢性硬膜下血腫のリスクが高いと言えます。このような薬は、血栓ができるのを防ぐ効果があり、脳梗塞や心筋梗塞などの予防に役立ちます。しかし、一方で出血が止まりにくくなる作用があるため、一度出血すると血腫が大きくなりやすい傾向があります。
肝臓や腎臓の機能が低下している方も、慢性硬膜下血腫のリスクに注意が必要です。肝臓は血液を固めるために必要な物質を作る役割を担い、腎臓は不要な物質を体外に排出する役割を担います。これらの臓器の機能が低下すると、血液の凝固機能が弱まり、出血が長引いたり、血腫が大きくなりやすい状態になります。
日常生活において転倒しやすい方も、慢性硬膜下血腫のリスクを高める要因の一つです。転倒によって頭をぶつけることで、硬膜下に出血が生じやすくなります。特に高齢の方は骨がもろくなっていることが多く、転倒による衝撃で骨折などを併発する危険性も高いため、十分に注意する必要があります。
リスク要因 | 詳細 |
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軽微な頭部外傷 | 高齢者の脳萎縮により硬膜と脳の間に隙間が生じやすく、わずかな衝撃でも血管損傷、出血しやすく慢性硬膜下血腫になりやすい。 |
血液をサラサラにする薬 | 血栓予防に有効だが、出血しやすく血腫が大きくなりやすい。 |
肝臓・腎臓機能の低下 | 血液凝固機能の低下で出血が長引き、血腫が大きくなりやすい。 |
転倒しやすい | 転倒による頭部外傷で硬膜下に出血しやすく、高齢者は骨折なども併発しやすい。 |
診断と治療
慢性硬膜下血腫と診断するには、頭部のコンピュータ断層撮影検査、いわゆるCT検査、もしくは磁気共鳴画像検査、いわゆるMRI検査を行います。これらは脳の状態を詳しく画像で確認できる検査です。CT検査では、X線を使って脳の断面図を作成し、出血の有無や場所、大きさなどを調べます。MRI検査では、強力な磁場と電波を使って、脳のより詳細な構造や組織の状態を把握します。これらの検査によって、血腫の大きさや位置だけでなく、脳への圧迫の程度まで正確に診断することができます。
治療方法は、診断結果に基づき、血腫の大きさや症状の程度に応じて決定されます。血腫が小さく、頭痛やめまいなどの症状が軽い場合は、自然に吸収される可能性もあるため、定期的な検査で経過観察を行うか、脳の腫れを抑える薬物療法を行います。具体的には、消炎鎮痛剤などを使用し、症状の緩和を図ります。
一方、血腫が大きく、意識障害や麻痺などの症状が出ている場合、もしくは脳への圧迫が強い場合は、手術が必要になります。手術には主に二つの方法があります。一つは穿頭血腫除去術です。これは、頭に小さな穴を開け、そこから細い管を入れて血腫を吸引する方法です。もう一つは開頭血腫除去術です。これは、頭蓋骨の一部を切開し、直接血腫を取り除く方法です。どちらの手術方法を選択するかは、患者の状態や血腫の位置、大きさなどを考慮して決定されます。手術後は、再出血を防ぐための安静や、感染症予防のための抗生物質の投与などを行います。また、リハビリテーションによって、日常生活への復帰を目指します。
検査 | 治療 |
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再発の予防
慢性硬膜下血腫は、一度治癒しても再び発症する可能性がある病気です。この再発を防ぐためには、日常生活において頭部をぶつけるなどの怪我をしないようにすることが何よりも大切です。特にご年配の方は、転倒による頭部外傷のリスクが高いため、転倒予防に重点的に取り組む必要があります。
家庭内では、転倒のきっかけとなる段差をなくしたり、階段や廊下、トイレ、浴室などに手すりを設置するなどの工夫をしましょう。また、床に滑り止めマットを敷いたり、滑りにくい靴を履いたりすることも効果的です。家具の配置を見直し、移動しやすいように十分な空間を確保することも重要です。照明を明るくして、足元がよく見えるようにすることも心がけましょう。
外出時には、杖や歩行器を活用して転倒のリスクを減らすようにしましょう。人混みでは周囲に気を配り、段差や障害物につまづかないように注意深く歩きましょう。また、急な方向転換や立ち上がりは避け、ゆっくりとした動作を心がけることも大切です。
さらに、定期的な健康診断を受けたり、かかりつけの医療機関で診察を受けることも重要です。早期に発見できれば、適切な処置を受けることで症状の悪化を防ぐことができます。日常生活での注意点をしっかり守り、慢性硬膜下血腫の再発を防ぎ、健康な生活を送りましょう。
場所 | 対策 |
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家庭内 |
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外出時 |
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その他 |
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日常生活の注意点
慢性硬膜下血腫は、頭部に軽い衝撃が加わることで脳を包む硬膜と脳の間に血腫ができる病気です。高齢者や血液をサラサラにする薬を飲んでいる方に多くみられます。この病気は、日常生活でのちょっとした注意で発症のリスクを減らすことができます。最も大切なのは、頭をぶつけないようにすることです。
自転車に乗るときは、必ずヘルメットをかぶりましょう。また、段差のある場所や滑りやすい場所など、転びやすい場所にはなるべく近づかないようにしましょう。家の中でも、足元を明るくしたり、カーペットの端をきちんと止めたりするなど、転倒予防に努めましょう。
お酒を飲むと、ふらつきやすくなり転倒のリスクが高まります。また、アルコールは血液をサラサラにする作用があるため、血腫ができやすくなるともいわれています。そのため、お酒は控えめに、できれば飲まないようにしましょう。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、医師の指示通りに服用することが大切です。自己判断で薬の量を変えたり、飲むのを止めたりすることは大変危険です。もし、薬について気になることがあれば、必ず医師に相談しましょう。
規則正しい生活習慣を送り、健康管理に気を配ることも重要です。バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を行い、十分な睡眠をとりましょう。ストレスをためないようにすることも大切です。
慢性硬膜下血腫は、初期には症状が現れにくい病気です。そのため、家族や周りの方の協力が不可欠です。患者さんの様子をよく観察し、頭痛やめまい、ふらつき、物忘れなどの症状に気づいたら、すぐに医療機関に連絡しましょう。早期発見、早期治療が大切です。
カテゴリー | 具体的な対策 | 詳細・理由 |
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転倒予防 | 自転車乗車時はヘルメット着用、転倒しやすい場所を避ける、家の中の転倒対策 | 頭をぶつけないようにすることが最重要 |
飲酒 | 控えめにする、できれば飲まない | アルコールはふらつきやすくし、血液をサラサラにするため、血腫ができやすくなる |
服薬管理 | 医師の指示通りの服用、自己判断での変更はしない、疑問点は医師に相談 | 血液をサラサラにする薬は、自己判断で変更すると危険 |
生活習慣 | バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスをためない | 健康管理も重要 |
早期発見 | 家族や周囲の人による観察、頭痛やめまい、ふらつき、物忘れなどの症状に注意 | 初期症状が現れにくいため、周囲の協力が不可欠。早期発見・早期治療が重要 |