経皮内視鏡的胃瘻造設術（PEG）について

経皮内視鏡的胃瘻造設術（PEG）について

はじめに

近年、加齢や病気など様々な理由で、口から十分な食事を摂ることが難しくなる方が増えています。そのような方にとって、必要な栄養を確保するために、「経皮内視鏡的胃瘻造設術」、いわゆるＰＥＧという方法が用いられることがあります。ＰＥＧとは、お腹の皮膚に小さな穴を開け、内視鏡を使ってチューブを胃まで通し、そこから直接栄養を送り込む方法です。この方法は、口から食事を摂るのが難しい方にとって、低栄養状態の改善や脱水症状の予防に役立ち、健康状態の維持に大きく貢献します。

ＰＥＧは、口から食事を摂ることができない、あるいは摂るのが困難な方にとって、様々な利点があります。誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができることや、栄養状態を安定させることができることなどが挙げられます。また、経口摂取に比べて栄養管理が容易になるというメリットもあります。しかし、一方で、ＰＥＧにはデメリットも存在します。例えば、感染症のリスクや、チューブの詰まり、皮膚の炎症などが起こる可能性があります。さらに、手術が必要となるため、身体への負担も考慮しなければなりません。

ＰＥＧを行う際には、まず医師から手術の内容やリスクについて説明を受け、同意します。その後、内視鏡を使って胃にチューブを挿入します。手術自体は比較的短時間で済みますが、術後は定期的な検査やケアが必要となります。チューブの管理や清潔を保つこと、栄養剤の適切な注入などが重要です。また、皮膚の状態を観察し、異常があればすぐに医師に相談する必要があります。家族や介護者の協力も不可欠です。

ＰＥＧは、口から食事を摂ることが難しい方にとって、栄養を確保し、健康を維持するための大切な方法です。しかし、メリットとデメリットの両方を理解し、医師とよく相談した上で選択することが重要です。この記事を通して、ＰＥＧについてより深く理解し、適切な選択をするための一助となれば幸いです。

どのような場合に用いられるか

「経皮内視鏡的胃ろう造設術」、略して「胃ろう」と呼ばれる医療行為は、口から十分な栄養を摂ることが難しい方々にとって、生命を維持し、健康状態を向上させるための大切な手段です。この胃ろうは、様々な状況下で必要とされます。

まず、脳卒中などの脳血管疾患やパーキンソン病などの神経系の病気を患っている場合です。これらの病気は、食べ物を飲み込む機能、つまり嚥下機能に障害をもたらすことが少なくありません。食べ物が誤って気管に入り込んでしまう「誤嚥」は、肺炎などの深刻な合併症を引き起こす危険性があるため、胃ろうによって栄養を直接胃に送り込むことが重要になります。

また、がんの治療中や治療後の方々も、胃ろうが必要となるケースがあります。がんによって消化管が狭くなったり、手術によって消化管の一部が切除されたりすると、十分な量の食事を摂ることが困難になります。さらに、抗がん剤治療などの副作用によって食欲が低下し、必要な栄養を食事から摂取できなくなる場合もあります。このような状況下では、胃ろうが栄養補給の重要な役割を担います。

加齢に伴って嚥下機能が低下する場合にも、胃ろうは有効な手段となりますです。高齢になると、身体の機能が全体的に衰え、食べ物を噛んだり飲み込んだりする力が弱まることがあります。また、認知症の進行によって食事を摂ることが難しくなるケースも見られます。胃ろうを設置することで、誤嚥の危険性を減らし、適切な栄養補給を行うことができます。

胃ろうは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて行われる医療行為です。そのため、胃ろう造設の必要性については、医師とよく相談し、患者さん本人の意思や家族の意向も尊重しながら慎重に判断することが大切です。胃ろうのメリットだけでなく、合併症のリスクなども含めて十分に理解した上で、最適な選択をする必要があります。

手術の方法

経皮内視鏡的胃瘻造設術（ＰＥＧ）は、お腹に小さな穴をあけて、チューブを通して直接胃に栄養を送る方法です。

この手術は、内視鏡という細い管状のカメラを使って行われます。まず、患者さんの苦痛を和らげるために、鎮静剤や局所麻酔を使用します。こうすることで、手術中の痛みや不快感を軽減することができます。

次に、口から内視鏡を挿入し、食道を通って胃の中まで進めます。内視鏡の先端にはカメラがついており、医師はモニターを見ながら胃の状態を確認します。お腹の皮膚を消毒し、内視鏡の画像をガイドにして、お腹の皮膚と胃壁に小さな切開を加えます。

この切開部分を通して、専用のチューブを挿入します。チューブの先端は胃の中に留置され、外側の端は皮膚の外に出た状態になります。このチューブを通して、液体状の栄養剤や水分、薬などを直接胃に送ることが可能になります。

ＰＥＧの手術自体は、通常３０分から１時間程度で終了します。入院期間も比較的短く、多くの場合１週間程度で退院できます。しかし、術後は感染症やチューブの詰まりなどの合併症が起こる可能性があります。そのため、退院後のチューブの管理方法や栄養剤の注入方法などについて、医師や看護師から適切な指導を受けることが重要です。定期的な通院も必要となります。

手術のメリット・デメリット

口から食べ物を飲み込むことが難しい方にとって、胃ろう造設術（ＰＥＧ）は、直接胃に栄養を送ることができるため、必要な栄養を確実に摂ることができるという大きな利点があります。
誤って食べ物や飲み物が気管に入ってしまう誤嚥を防ぎ、誤嚥性肺炎などの深刻な合併症を予防できることも大きなメリットです。口から食事をとることができないことで、体力が落ちてしまったり、気持ちが落ち込んでしまったりする方もいらっしゃいますが、ＰＥＧによって栄養状態が改善されると、日常生活の活動性や意欲の向上につながり、生活の質の向上に大きく貢献することが期待できます。

一方で、ＰＥＧは、体に小さな穴をあけてチューブを設置する手術が必要となるため、合併症のリスクも考慮しなければなりません。たとえば、手術部位の感染症や、チューブが詰まってしまうこと、また、チューブの挿入部位の皮膚が炎症を起こすこともあります。これらの合併症は適切な処置を行えば、多くの場合改善されますが、日頃から清潔を保ち、異常に気付いたらすぐに医療機関に相談することが重要です。また、ＰＥＧを行う際は、患者さんの年齢や体力、持病などを総合的に判断する必要があります。そのため、医師との十分な話し合いを通して、ＰＥＧのメリットとデメリットを理解し、納得した上で手術を受けるかどうかを決めることが大切です。ＰＥＧは、患者さんにとって最良の方法となる場合もありますが、一方で、リスクも伴う医療行為であることを理解しておく必要があります。

手術後のケア

{手術後のお世話は、手術の方法によって大きく変わりますが、ここではお腹に小さな穴をあけて栄養を送る管を入れる手術（経皮内視鏡的胃ろう造設術）の後のお世話についてお話します。この手術の後は、管の管理がとても大切です。管が詰まったり、管の周りの皮膚が赤くなったり、傷が出来たりしないように気をつけなければなりません。

まず、管を清潔に保つことが重要です。毎日、管の周りを石鹸と水で優しく洗い、清潔なガーゼで水分を拭き取ります。医師や看護師から教わった消毒液を使う場合もあります。また、管が固定されていることを確認し、必要に応じて固定し直すことも大切です。管がずれたり、抜けてしまったりすると、大変危険です。

次に、栄養剤の送り方にも注意が必要です。栄養剤の種類や量、送る速さは、その人の体の状態に合わせて決めます。決まった時間に決まった量を、決められた速さで送らなければなりません。栄養剤を送り終わった後は、管の中に水がたまらないように、少量の水で管を流します。栄養剤の種類によっては、管が詰まりやすくなる場合があるので、医師や看護師の指示をよく守りましょう。

さらに、皮膚の状態をよく観察することも大切です。管の周りの皮膚が赤くなったり、腫れたり、痛みやかゆみが出たりしていないか、毎日確認します。もし異変があれば、すぐに医師や看護師に相談しましょう。早期に適切な処置を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。

これらのお世話は、医師や看護師、栄養士など、専門家からきちんと指導を受けて、正しく行うことが大切です。正しいお世話をすることで、この管を長く安全に使うことができます。家族だけで抱え込まず、周りの人に相談したり、支援を受けたりすることも考えてみましょう。

まとめ

口から食事をとることが難しい方にとって、栄養を補給するための大切な方法の一つに、胃ろう造設術（PEG）があります。PEGは、お腹に小さな穴をあけ、チューブを通して直接胃に栄養を送る方法です。この方法を用いることで、必要な栄養を確実に体内に取り込むことができ、健康状態の改善や維持につながります。また、口から食事をとることに伴う苦労や負担を軽減し、生活の質を高めることにも繋がります。

PEGは多くの患者さんにとって有益な方法ですが、メリットだけではありません。お腹に穴をあける手術が必要となるため、手術に伴うリスクや合併症が起こる可能性があります。例えば、感染症や出血、チューブの詰まりなどが挙げられます。また、PEGを使用していると、誤嚥性肺炎のリスクが低下する一方、瘻孔周囲の皮膚トラブルといった別の問題が生じる可能性もあります。さらに、PEGを行うことで口から食べる機能が低下し、将来的に口から食事をとることが難しくなる可能性も考慮しなければなりません。

PEGを検討する際には、これらのメリットとデメリット、そして起こりうる合併症について医師から十分な説明を受け、理解することが重要です。患者さん本人の状態や希望、家族の考えなどを総合的に考慮し、医師とよく相談した上で最終的な判断を下す必要があります。

PEG手術後には、適切な管理とケアが不可欠です。チューブの清潔を保ち、定期的に交換することで感染症などの合併症を予防することができます。また、栄養剤の種類や量、投与方法なども、患者さんの状態に合わせて調整していく必要があります。PEGは、正しく管理・ケアすることで、長期にわたって安全に使用できる有効な栄養補給法です。この記事がPEGについて理解を深め、適切な選択をするための一助となれば幸いです。