心的外傷後ストレス障害:PTSDを知る
介護を学びたい
先生、「心的外傷後ストレス障害」って、介護や介助の現場で関係ありますか?
介護の研究家
もちろん関係あります。例えば、認知症の利用者さんから暴言や暴力を受けたり、事故や急変に遭遇したりすることで、介護職員自身が心的外傷後ストレス障害になる可能性があります。また、利用者さん自身も、過去のつらい経験から心的外傷後ストレス障害を抱えている場合があります。
介護を学びたい
そうなんですね。介護職員も利用者さんもなりうるんですね。具体的な症状はどんなものがありますか?
介護の研究家
心的外傷後ストレス障害には、強い不安や恐怖、めまい、吐き気、不眠、集中力の低下など、様々な症状があります。過去のできごとが繰り返し思い出されたり、悪夢を見たりすることもあります。重要なのは、これらの症状が長く続く場合、専門家のサポートが必要になるということです。
PTSDとは。
『心的外傷後ストレス障害』(略してPTSD)とは、災害や犯罪など、命に関わるような出来事を経験したり、見たりすることで起こる心の病気です。強い衝撃によって脳の一部が縮んだりすることで、様々な症状が現れます。突然、その時の出来事がまるで今起こっているかのように感じて、現実が分からなくなり、パニックを起こしたり、怖い思いをしたことに関係する物事を避けようとするあまり、行動や人間関係が狭まり、社会生活に問題が出たり、いつもびくびくした状態が続くといった症状が出ます。また、疲れやすくなったり、体に色々な不調が出たりもします。これは「介護」や「介助」に関する用語です。
心的外傷後ストレス障害とは
心的な外傷の後ストレス障害、略してPTSDと呼ばれるものは、命に関わるような出来事や、心に強い衝撃を受けた後に発症する心の病気です。自然災害で家や大切な人を失ったり、交通事故に遭ったり、犯罪に巻き込まれたり、戦争を経験したり、虐待を受けたりなど、様々な出来事がきっかけとなり、誰にでも起こる可能性があります。これらの出来事を実際に体験したり、あるいは目の前で見てしまったり、親しい人が経験したことを知ったりすることで、強いショックを受け、脳の働きに影響が出て、様々な症状が現れます。
PTSDは特別な人がかかる病気ではなく、誰もがなりうる可能性のある心の病気です。症状は大きく分けて四つあります。一つ目は、トラウマ体験を思い出してしまうことです。実際に体験した出来事が、まるで今起きているかのように感じてしまう「再体験」や、悪夢にうなされる、などがあります。二つ目は、トラウマと関連するものを避けようとすることです。トラウマを思い出させる場所や人、会話などを避けようとします。三つ目は、常に緊張した状態が続くことです。ちょっとした物音にも驚きやすくなったり、怒りっぽくなったり、眠れなくなったりします。四つ目は、気分や考え方が否定的になることです。自分が悪いと思い込んでしまったり、喜びや楽しみを感じにくくなったりします。
これらの症状は、出来事を経験してから数週間後、あるいは数か月後、数年後に現れる場合もあります。症状の現れ方や程度は人それぞれで、同じ出来事を経験してもPTSDを発症する人、しない人がいるように、反応は様々です。症状が長引いたり、日常生活に支障が出る場合は、医療機関への受診が必要です。一人で抱え込まずに、周りの人に相談したり、専門家の助けを求めることが大切です。周りの人は、温かく見守り、焦らずに寄り添うことが重要です。
PTSDとは | 原因 | 症状 | 発症時期 | 対応 |
---|---|---|---|---|
命に関わる出来事や強い衝撃を受けた後に発症する心の病気 | 自然災害、交通事故、犯罪被害、戦争、虐待など (実際に体験、目撃、親しい人が経験) |
1. トラウマ体験を思い出してしまう(再体験、悪夢) 2. トラウマと関連するものを避けようとする 3. 常に緊張した状態(過剰な警戒、怒り、不眠) 4. 気分や考え方が否定的になる(自責感、喜びを感じにくい) |
数週間後、数か月後、数年後 |
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主な症状について
心の傷を負った出来事の後、様々な症状に悩まされることがあります。心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、大きく分けて四つの症状の集まりが見られます。
まず、『再体験』と呼ばれる症状です。これは、過去のつらい出来事がまるで今まさに起こっているかのように、ありありと思い出されることです。突然、記憶がフラッシュバックのように蘇ったり、その時の恐怖や苦痛を伴う悪夢にうなされることもあります。日中であっても、突然過去の出来事が脳裏に浮かび、強い不安や恐怖に襲われることもあります。
次に、『回避』という症状です。これは、トラウマを思い出させるような場所、人、状況などを無意識に、あるいは意図的に避けようとすることです。例えば、事故にあった場所を避けて遠回りしたり、事故を連想させるようなニュースや話題を避けたりするといった行動が見られます。
三つ目の症状は、『認知や気分の良くない変化』です。自分を責める気持ちや、周囲の人への不信感、将来への希望を失った絶望感などが挙げられます。また、感情が麻痺し、喜びや悲しみといった感情を感じにくくなることもあります。以前は楽しめていた趣味や活動にも興味を失ってしまう場合もあります。
四つ目の症状は、『過覚醒』です。これは、常に緊張状態にあるため、些細な刺激にも過剰に反応したり、びっくりしやすくなったりすることを指します。また、集中力の低下や不眠といった症状が現れることもあります。いつも神経が張り詰めた状態になり、常に危険を察知しようとしているため、心身ともに疲弊してしまいます。
これらの症状が日常生活に支障をきたす場合、PTSDの可能性が考えられます。もし心当たりがあれば、早めに専門家に相談することが大切です。一人で抱え込まず、周りの人に助けを求めることも忘れないでください。
PTSDの症状 | 説明 | 例 |
---|---|---|
再体験 | 過去のつらい出来事が、まるで今まさに起こっているかのように、ありありと思い出される。 | フラッシュバック、悪夢、突然の不安や恐怖 |
回避 | トラウマを思い出させるような場所、人、状況などを無意識に、あるいは意図的に避けようとする。 | 事故にあった場所を避ける、事故を連想させるニュースや話題を避ける |
認知や気分の良くない変化 | 自分を責める、周囲への不信感、将来への絶望感、感情の麻痺、喜びや悲しみを感じにくくなる、趣味や活動への興味喪失 | – |
過覚醒 | 常に緊張状態にあり、些細な刺激にも過剰に反応する、びっくりしやすい、集中力の低下、不眠 | – |
回復への道のり
心の傷を負った状態からの立ち直りは、決して平坦な道のりではありません。しかし、適切な治療と支えがあれば、必ず回復へと続く道筋が見えてきます。「心的外傷後ストレス障害」と呼ばれるこの心の傷は、思いがけない出来事や事故、災害などを経験した後に、様々な症状が現れることがあります。
回復の中心となるのは、心の専門家による治療です。精神科の医師や臨床心理士といった専門家が、じっくりと話を聞き、心の整理を助けてくれます。つらい経験を言葉にするのは大変なことですが、心の内を語ることで、症状を和らげ、心の負担を軽くしていくことができます。場合によっては、薬による治療を組み合わせることもあります。
周りの人の理解と支えも、回復への大きな力となります。家族や友人は、温かく見守り、安心して過ごせる居場所を作ることが大切です。焦らず、ゆっくりと時間をかけて回復していくことを見守りましょう。回復の過程では、一時的に症状が悪化することもあります。しかし、諦めずに治療を続けることが重要です。
専門家の助言を聞きながら、自分自身でできることを見つけることも大切です。規則正しい生活習慣を心がけ、バランスの取れた食事や十分な睡眠をとるようにしましょう。適度な運動も、心身の健康を保つ上で効果的です。また、趣味や好きなことに時間を費やすことで、心身のバランスを整え、前向きな気持ちを取り戻すことができます。
回復への道のりは、人それぞれです。焦らず、自分のペースで一歩ずつ進んでいきましょう。周りの人の支えと、自分自身の回復力を信じて、必ず乗り越えることができると信じてください。
早期発見と早期治療の重要性
心の傷を負った出来事の後、出来るだけ早く異変に気付き、専門家の力を借りることが大切です。これが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)とよばれる心の病気への対策で最も重要な点です。PTSDは、強い衝撃を受けた後、その出来事が忘れられず、何度も思い出したり、悪夢を見たりするなど、様々な心の不調が現れる病気です。
この病気をそのままにしておくと、症状が長引き、慢性化してしまうことがあります。そうなると、気分が落ち込んで何もやる気が起きなくなる病気(うつ病)や、強い不安や心配に悩まされる病気(不安障害)といった、他の心の病気を併せて発症する危険性が高まります。
早期に適切な治療を始めれば、症状が悪化することを防ぎ、日常生活や仕事、人付き合いへの影響を小さく抑えることができます。PTSDには、トラウマに焦点を当てた認知行動療法や、目の動きによって記憶を処理する眼球運動による脱感作と再処理法といった様々な治療法があります。専門家は、一人ひとりの症状の重さや生活の状況に合わせて、最適な治療法を提案してくれます。
もしも、ご自身や周りの人がPTSDではないかと少しでも疑うことがあれば、ためらわずに医療機関に相談しましょう。早く見つけて、早く治療を始めることが、PTSDから回復するための最初の大切な一歩です。専門家は、あなたの話をじっくりと聞き、適切な助言や支援を提供してくれます。心の健康を守るためには、早期発見と早期治療の重要性を心に刻み、必要な時はためらわずに専門家のドアをノックすることが大切です。
PTSDの重要ポイント | 詳細 |
---|---|
早期発見と専門家への相談 | 心の傷を負った出来事の後、出来るだけ早く異変に気付き、専門家の力を借りることが重要。 |
放置の危険性 | 放置すると症状が慢性化し、うつ病や不安障害などの併発リスクが高まる。 |
早期治療のメリット | 症状の悪化を防ぎ、日常生活や仕事、人付き合いへの影響を最小限に抑える。 |
治療法の種類 | トラウマに焦点を当てた認知行動療法、眼球運動による脱感作と再処理法など。 |
相談の勧め | 少しでもPTSDの疑いがあれば、ためらわずに医療機関に相談。 |
日常生活での工夫
心身に深い傷を負った心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える方にとって、穏やかな日々を送るためには、日々の暮らし方を見直すことが大切です。規則正しい生活リズムを保つことは、心と体の調子を整え、症状を和らげるために非常に有効です。 まずは、毎晩同じ時刻に寝床に入り、朝は決まった時間に起きるように心がけましょう。睡眠時間は個人差がありますが、七時間から八時間程度の睡眠を確保することで、心身ともに休息できます。
食事も大切です。栄養バランスの良い食事を三食きちんと摂ることで、体の調子を整え、心の健康にも良い影響を与えます。インスタント食品やお菓子ばかりに頼らず、野菜や果物、肉や魚など、様々な食材をバランス良く取り入れるようにしましょう。
体を動かすことも、心の健康には欠かせません。激しい運動でなくても構いません。散歩や軽い体操など、自分に合った運動を無理なく続けることで、気分転換になり、ストレスを軽減する効果も期待できます。
そして、何よりも大切なのは、心身を休ませる時間を持つことです。好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、趣味に没頭したりすることで、心穏やかな時間を過ごせます。自然の中で過ごすことも、心を癒す効果があります。近くの公園で散歩したり、木々や花々に囲まれた場所でゆっくりと深呼吸をするだけでも、心身のリフレッシュに繋がります。
PTSDの症状が強く出ている時は、決して無理をせず、十分な休息を取りましょう。 動きたくなくても、自分を責める必要はありません。まずは心と体が休まるまで、ゆっくりと過ごしましょう。そして、少しずつ、できることから始めていきましょう。焦らず、自分のペースで、日常生活を取り戻していきましょう。周りの人に助けを求めることも大切です。一人で抱え込まずに、家族や友人、専門機関などに相談することで、心強い支えとなるでしょう。
項目 | 詳細 |
---|---|
生活リズム | 毎晩同じ時刻に就寝し、朝は決まった時間に起床する。7~8時間の睡眠時間を確保する。 |
食事 | 栄養バランスの良い食事を三食きちんと摂る。インスタント食品やお菓子に偏らず、野菜、果物、肉、魚など様々な食材をバランス良く取り入れる。 |
運動 | 激しい運動でなくても良い。散歩や軽い体操など、自分に合った運動を無理なく続ける。 |
休息 | 好きな音楽、読書、趣味など、心穏やかに過ごせる時間を持つ。自然の中で過ごすのも良い。 |
PTSD症状が強い時 | 無理せず十分な休息を取る。自分を責めない。焦らず自分のペースで日常生活を取り戻す。周りの人に助けを求める。 |
支援体制の活用
心的外傷後ストレス障害(ピーティーエスディー)からの回復には、周囲の理解と支援が欠かせません。まず、家族や友人など、身近な人たちの支えは、回復への大きな力となります。つらい経験をした人の気持ちを理解しようと努め、じっくりと話を聞くことが大切です。そして、共感する姿勢を示すことで、安心感を与え、心の負担を軽くすることができます。また、日常生活で困っていることがあれば、料理や掃除、買い物などを手伝うなど、具体的なサポートも有効です。
さらに、自助グループや相談機関といった支援体制の活用も、回復を促す上で重要な役割を果たします。自助グループは、同じような経験をした人たちと繋がり、共有しあえる場です。一人で抱え込まずに気持ちを分かち合うことで、孤独感を解消し、新たな視点を得ることができます。また、専門家によるカウンセリングや相談を受けることで、適切なアドバイスや対処法を学ぶことができます。心の専門家は、客観的な立場から状況を整理し、具体的な解決策を提示してくれます。
回復への道のりは、決して平坦ではありません。つらい時、苦しい時は、一人で抱え込まずに、家族や友人、自助グループ、専門家など、様々な人に相談してみましょう。周囲の支援や専門家の力を借りながら、焦らず、一歩ずつ回復への道を歩んでいくことが大切です。きっと、あなたらしい人生を取り戻せるはずです。