パーキンソニズムとは?パーキンソン病との違い
介護を学びたい
先生、「パーキンソニズム」って、パーキンソン病とどう違うんですか? 似た言葉で混乱しちゃいます。
介護の研究家
良い質問ですね。パーキンソン病は特定の病気ですが、パーキンソニズムはパーキンソン病に似た症状が出る様々な病気の総称です。色々な原因で起こる、いわば症状の『状態』を指す言葉なんですよ。
介護を学びたい
なるほど。じゃあ、症状は似ているけど、原因となる病気が違うんですね。治療法も違うんですか?
介護の研究家
その通りです。パーキンソン病は、脳の中で不足している『ドーパミン』という物質を薬で補うことで症状を和らげられます。しかし、パーキンソニズムは様々な病気が原因なので、パーキンソン病と同じ薬があまり効かない場合が多く、それぞれの原因となる病気に合わせた治療が必要になります。
パーキンソニズムとは。
『パーキンソニズム』という言葉について説明します。これは、パーキンソン病に似た症状のことです。パーキンソン病は、脳の中で特定の情報伝達物質が足りなくなることで起こりますが、パーキンソニズムは、別の病気によって同じような症状が現れることを指します。例えば、脳の血管が詰まったり破れたりすること、脳に水が溜まること、脳の神経細胞が縮んでしまうこと、などが原因で起こります。症状としては、動きが遅くなったり、手足が震えたりすることがあります。パーキンソン病の場合は、足りなくなった情報伝達物質を薬で補うことで症状を良くすることができますが、パーキンソニズムの場合は、原因となっている病気がそれぞれ異なるため、同じ薬が効くとは限りません。治療法も、原因となる病気によって異なります。
パーキンソニズムの症状
パーキンソニズムは、パーキンソン病と同じような様々な運動症状を示す一群の症候群です。パーキンソニズムの原因となる病気は様々ですが、いずれも脳の機能に何らかの異常が生じることで、パーキンソン病に似た症状が現れます。
代表的な症状として、動作が遅くなること(動作緩慢)が挙げられます。これは、体を動かす指令を出す脳の働きが低下するためです。例えば、歩行の開始が遅くなったり、歩幅が狭くなったり、歩いている途中で足が止まってしまうこともあります。また、着替えや食事、入浴など、日常生活の動作にも時間がかかるようになります。
手足の震え(振戦)もよく見られる症状です。安静時に手足が震えることが多く、特に指先が細かく震えるのが特徴です。この震えは、意識的に動かそうとすると一時的に止まることもありますが、精神的な緊張や疲労によって強まることがあります。字を書く、箸を使う、ボタンをかけるといった細かい作業が難しくなるため、日常生活に支障をきたすこともあります。
筋肉が硬くなること(筋固縮)も、パーキンソニズムの特徴的な症状です。筋肉がこわばるため、関節の動きが悪くなり、体の動きがぎこちなくなります。腕を曲げ伸ばししたり、首を回したりする際に抵抗感があり、スムーズに動かせません。この筋固縮は、体の痛みや姿勢の悪さにもつながることがあります。また、体のバランスが保ちにくくなる(姿勢反射障害)ことで、転倒しやすくなることもあります。
これらの症状は、人によって現れ方や程度が大きく異なります。また、症状の進行速度も人それぞれです。パーキンソニズムの中には、薬物によって引き起こされるものや、他の神経疾患に伴って現れるものもあります。そのため、症状に気づいたら早めに医療機関を受診し、正確な診断を受けることが大切です。早期に適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、日常生活の質を維持することが期待できます。
症状 | 説明 |
---|---|
動作緩慢 | 動作が遅くなる。歩行開始の遅延、歩幅の狭小化、歩行中の足の停止など。着替え、食事、入浴など日常生活動作に時間がかかる。 |
振戦 | 安静時に手足の震え、特に指先の細かい震え。意識的に動かすと一時的に止まることもある。精神的緊張や疲労で増強。細かい作業が困難に。 |
筋固縮 | 筋肉が硬くなり関節の動きが悪化、体の動きがぎこちなくなる。腕の曲げ伸ばし、首の回転などに抵抗感。体の痛みや姿勢の悪化につながることも。 |
姿勢反射障害 | 体のバランスが保ちにくくなり、転倒しやすくなる。 |
パーキンソニズムの原因となる病気
ふるえ、動作が遅くなる、体が硬くなるといった運動の障害をまとめてパーキンソニズムと呼びます。パーキンソニズムの原因となる病気は様々です。よく知られているパーキンソン病もその一つですが、パーキンソン病以外にもパーキンソニズムを引き起こす病気がいくつかあります。
代表的なものとして、核上性麻痺があります。この病気は、眼球運動の障害や歩行障害、姿勢の維持が難しくなるといった症状が現れます。進行性の病気で、徐々に症状が悪化していくのが特徴です。
次に、多系統萎縮症もパーキンソニズムの原因となります。自律神経の障害や小脳の障害に加えて、パーキンソン病のような運動の障害も現れます。自律神経の障害としては、立ちくらみや便秘、排尿障害などが挙げられます。小脳の障害としては、ふらつきやろれつが回らないなどの症状が現れます。
脳血管障害もパーキンソニズムの原因となることがあります。脳梗塞や脳出血などで脳の神経細胞が損傷を受けると、運動の障害が現れることがあります。損傷を受けた脳の部位によって症状は様々です。
正常圧水頭症もパーキンソニズムの原因の一つです。脳脊髄液の循環が悪くなることで、歩行障害、認知機能の低下、尿失禁といった症状が現れます。
認知症の一つであるレビー小体型認知症でも、パーキンソニズムの症状が現れます。認知機能の低下に加え、幻視や睡眠障害といった症状も特徴的です。
パーキンソン病は脳内の神経伝達物質であるドーパミンが不足することで起こりますが、パーキンソニズムの原因となる他の病気は、それぞれ異なる仕組みで神経細胞に損傷を与えます。そのため、それぞれの病気に合わせた治療を行うことが大切です。
また、薬の副作用としてパーキンソニズムの症状が現れることもあります。このような場合は、原因となっている薬を中止するか、他の薬に変更することで症状の改善が期待できます。
パーキンソニズムの症状が現れた場合は、自己判断せずに、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
病気名 | 主な症状 |
---|---|
パーキンソン病 | ふるえ、動作が遅くなる、体が硬くなる(ドーパミン不足) |
核上性麻痺 | 眼球運動の障害、歩行障害、姿勢の維持困難 |
多系統萎縮症 | 自律神経障害(立ちくらみ、便秘、排尿障害など)、小脳障害(ふらつき、ろれつ困難)、パーキンソン病のような運動障害 |
脳血管障害(脳梗塞、脳出血など) | 損傷部位による様々な運動障害 |
正常圧水頭症 | 歩行障害、認知機能低下、尿失禁 |
レビー小体型認知症 | 認知機能低下、幻視、睡眠障害、パーキンソン病のような運動障害 |
薬剤性パーキンソニズム | 薬の副作用によるパーキンソン病のような症状 |
パーキンソン病との違い
「パーキンソニズム」と「パーキンソン病」は、似たような症状を示すため、しばしば混同されますが、別の病気です。どちらも、手足の震え、動作の緩慢さ、体の硬さといった運動機能の障害が現れます。しかし、その原因や治療法には大きな違いがあります。
パーキンソン病は、脳の奥深くにある「黒質」と呼ばれる部分で、運動をスムーズにするために必要な神経伝達物質であるドーパミンを作る神経細胞が減ってしまうことが原因で起こります。ドーパミンが不足することで、運動の制御がうまくいかなくなり、様々な運動症状が現れます。パーキンソン病は、原因が特定されている「一つの病気」と考えることができます。
一方、パーキンソニズムは、パーキンソン病と同じような運動症状を示す様々な状態の総称です。パーキンソニズム自体は一つの病気ではなく、様々な原因によって引き起こされる症候群と言えます。その原因としては、脳梗塞などの脳血管障害、薬の副作用、特定の感染症、他の神経変性疾患などが挙げられます。つまり、パーキンソニズムは、パーキンソン病を含めた様々な病気が原因で起こる「症状のまとまり」なのです。
この違いは治療法にも影響を及ぼします。パーキンソン病では、不足しているドーパミンを補う薬が有効です。しかし、パーキンソニズムでは、原因となっている病気がそれぞれ異なるため、パーキンソン病と同じ薬が常に有効とは限りません。例えば、薬の副作用が原因の場合は、その薬を中止することで症状が改善します。脳血管障害が原因の場合は、脳卒中の再発予防のための治療が中心となります。
このように、パーキンソニズムとパーキンソン病は、似た症状を示すものの、その原因や治療法は大きく異なります。適切な治療を行うためには、まずどちらの状態であるかを正しく診断することが非常に重要です。そのため、少しでも気になる症状がある場合は、ためらわずに専門の医師に相談することが大切です。
項目 | パーキンソン病 | パーキンソニズム |
---|---|---|
症状 | 手足の震え、動作の緩慢さ、体の硬さ | パーキンソン病と同様の運動症状 |
原因 | 脳の黒質でドーパミンを作る神経細胞の減少 | 脳梗塞、薬の副作用、感染症、他の神経変性疾患など |
病気の種類 | 一つの病気 | 症候群(様々な原因による症状のまとまり) |
治療法 | ドーパミンを補う薬 | 原因疾患に応じた治療 |
診断と治療
パーキンソニズムと診断するためには、神経内科の先生による診察が欠かせません。問診では、いつからどのような症状が現れたのか、これまでにどのような病気にかかったことがあるのか、家族に同じような症状を持つ人がいるのかなどを詳しく聞かれます。
問診に加えて、神経学的検査が行われます。これは、体の動きや姿勢、バランス、反射などを確認する検査です。例えば、腕や足を動かしたり、歩いたりする様子を観察したり、筋肉の緊張の程度や反射の強さを調べたりします。これらの検査を通して、パーキンソニズムの特徴的な症状である、動作の緩慢さ、筋肉のこわばり、安静時のふるえ、姿勢の不安定さなどが見られるかを判断します。
さらに、脳の画像検査が必要となる場合もあります。頭部の断層写真や磁気共鳴画像といった検査を行い、脳の構造に異常がないか、脳の血管に異常がないかなどを調べます。これらの検査によって、パーキンソニズムの原因となる他の病気を除外することができます。血液検査を行うこともあります。
パーキンソニズムの治療は、原因となっている病気によって大きく異なってきます。薬を使う治療、体を動かす訓練を行うリハビリテーション、手術を行う外科的治療など、様々な方法があります。それぞれの患者さんの状態に合わせて、どの治療法が最も適しているのかを慎重に検討し、医師とよく相談しながら治療を進めていくことが大切です。症状を和らげ、患者さんが日常生活を送りやすくするために、医師や他の医療関係者と協力して、最適な治療計画を立てていきましょう。
診断 | 内容 |
---|---|
神経内科の診察 | 問診:症状の onset、既往歴、家族歴など 神経学的検査:体の動き、姿勢、バランス、反射などを確認(動作の緩慢さ、筋肉のこわばり、安静時振戦、姿勢の不安定さなどを評価) |
画像検査 | 脳の画像検査(CT、MRI):脳の構造異常、脳血管異常などを確認 血液検査 |
治療 | 原因疾患により異なる 薬物療法、リハビリテーション、外科的治療など 医師と相談の上、最適な治療計画を決定 |
日常生活の工夫
パーキンソニズムの症状は、日常生活に様々な支障をきたすことがあります。しかし、住環境や用具、生活習慣を工夫することで、これらの支障を少なくし、より快適に過ごすことが可能です。工夫の第一歩は、自宅内の安全性を高めることです。床の段差をなくしたり、スロープを設置することで、つまづきや転倒のリスクを減らすことができます。廊下や階段、トイレ、浴室などには手すりを設置し、移動を支えましょう。滑りやすい場所には滑り止めマットを敷くことも有効です。
衣服の着脱も、工夫次第で楽になります。ボタンやファスナーの代わりに、マジックテープやゴム紐を使った服を選ぶと、着脱にかかる時間と労力を大幅に減らすことができます。前開きの服やゆったりとしたデザインの服もおすすめです。靴は、着脱が簡単なスリッポンタイプや、面ファスナーで留めるタイプを選びましょう。靴ひもを結ぶのが難しい場合は、伸縮性のある靴ひもに交換するのも一つの方法です。
食事の場面でも、様々な工夫ができます。滑り止め加工が施された食器や、持ちやすく安定感のある太めの箸やスプーン、フォークなどを使用することで、食べこぼしを防ぎ、食事をスムーズにします。また、食事内容にも配慮し、食べやすい大きさや柔らかさに調整することも大切です。飲み物が飲み込みにくい場合は、ストロー付きのコップを使用したり、とろみをつけるなどの工夫も有効です。
適度な運動も、症状の進行を遅らせるために重要です。無理のない範囲で、散歩やストレッチ、体操などを行い、筋力やバランス能力の維持に努めましょう。ただし、激しい運動はかえって体に負担をかける場合があるので、医師や理学療法士に相談しながら、自分に合った運動の種類や強度を決めることが大切です。周囲の理解と協力も、安心して生活を送る上で欠かせません。家族や友人、職場の同僚などに、パーキンソニズムの症状や、日常生活でどのような困難が生じるかを説明し、理解と協力を得られるように努めましょう。周囲のサポートがあれば、より穏やかに、そして積極的に生活を送ることができます。
場面 | 工夫 |
---|---|
自宅環境 | – 床の段差をなくす、スロープを設置 – 手すりの設置 – 滑り止めマットの設置 |
衣服 | – マジックテープやゴム紐を使った服 – 前開きの服 – ゆったりとしたデザインの服 – スリッポンタイプの靴 – 面ファスナーで留めるタイプの靴 – 伸縮性のある靴ひも |
食事 | – 滑り止め加工の食器 – 太めの箸、スプーン、フォーク – 食べやすい大きさ、柔らかさに調整 – ストロー付きのコップ – とろみをつける |
運動 | – 散歩、ストレッチ、体操 – 無理のない範囲 – 医師や理学療法士に相談 |
周囲の協力 | – パーキンソニズムの症状を説明 – 日常生活の困難を説明 – 理解と協力を得る |
相談できる窓口
パーキンソン病などのパーキンソニズムで何か気になることや、不安なことがある時は、一人で抱え込まずに相談することが大切です。頼れる相談先はいくつかありますので、ご自身の状況に合わせて選んでみてください。
まず、普段からお世話になっているかかりつけのお医者さんに相談してみましょう。日ごろの健康状態をよく知っているお医者さんだからこそ、適切な助言をもらえるはずです。症状が気になる場合は、パーキンソニズムの専門家である神経内科の専門医を紹介してもらうこともできます。神経内科の専門医は、パーキンソニズムの診断や治療について、深い知識と豊富な経験を持っています。
高齢の方であれば、住んでいる地域の包括支援センターに相談するのも良いでしょう。包括支援センターは、高齢者の生活全般に関する相談を受け付けており、介護や福祉のサービス、健康や医療に関することなど、様々な相談に対応しています。介護が必要な場合は、介護保険サービスの利用手続きについても相談に乗ってくれます。
障害のある方やそのご家族は、相談支援事業所が力強い味方です。相談支援事業所は、障害のある方が地域で安心して暮らせるよう、様々な相談を受け付けており、必要な支援につなげてくれます。
これらの相談窓口では、パーキンソニズムに関する詳しい情報の提供だけでなく、適切な医療機関の紹介や介護サービスの利用支援など、様々なサポートを受けることができます。
また、同じ病気を持つ人やその家族が集まる患者会や家族会に参加するのも良い方法です。同じ悩みを持つ仲間と交流することで、情報交換をしたり、精神的な支えを得たりすることができます。一人で悩まず、周りの人に相談し、必要な支援を受けて、より良い生活を送れるようにしましょう。
相談相手 | 対象者 | 相談内容 |
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かかりつけ医 | パーキンソニズムの症状が気になる方 | 健康状態、症状に関する相談、神経内科専門医の紹介 |
神経内科専門医 | パーキンソニズムの診断や治療が必要な方 | パーキンソニズムの診断、治療 |
包括支援センター | 高齢者 | 生活全般、介護・福祉サービス、健康・医療、介護保険サービス利用手続き |
相談支援事業所 | 障害のある方やそのご家族 | 地域での生活支援、必要な支援の紹介 |
患者会・家族会 | 同じ病気を持つ人やその家族 | 情報交換、精神的な支え |