遺伝性疾患

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ウェルナー症候群:老化の謎を解く鍵

ウェルナー症候群は、生まれつきの遺伝子の変化が原因で起こる、珍しい病気です。両親から受け継いだ、劣性と呼ばれる遺伝子の型によって発症します。両親ともにこの劣性遺伝子を持っている場合、子どもにウェルナー症候群が現れる可能性があります。ただし、両親が遺伝子を持っていたとしても、必ずしも子どもが発症するとは限りません。 この病気は、体の老化が通常よりもはるかに早く進むのが特徴で、「早老症」とも呼ばれています。一般的に高齢になってから見られるような症状が、若い頃から現れるのです。例えば、髪の毛が白くなったり、薄くなったり、皮膚がしわっぽくなったり、目が白く濁ったり(白内障)といった症状が現れます。また、骨がもろくなる骨粗鬆症や、血管が硬くなる動脈硬化といった、体に負担がかかる病気も若いうちから発症する可能性があります。 これらの症状は、多くの人が大人へと成長していく時期である思春期以降に現れ始め、徐々に進んでいきます。思春期は、心も体も大きく変化する大切な時期ですが、ウェルナー症候群の方は、この時期に老化の兆候が現れ始めるため、周りの人と比べて見た目や体の状態が異なってくることに気づき始めることが多いと考えられます。 ウェルナー症候群は非常にまれな病気で、世界中で100万人に数人から数十人しかいないと推定されています。日本では、およそ300人の患者さんがいると報告されており、専門的な医療機関での診断と治療、そして周りの理解と支援が必要です。 早期発見と適切なケアは、患者さんの生活の質を向上させる上で非常に重要です。周りの人々がこの病気について理解を深め、患者さんを支える環境を作ることも大切です。現在、様々な研究が進められており、新しい治療法の開発も期待されています。
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知っておきたいウィルソン病

ウィルソン病は、生まれつき体のなかの銅という金属の処理がうまくいかないために、さまざまな臓器に障害が出てしまう病気です。ふつう、私たちが食べ物からとった銅は、肝臓という臓器で処理され、いらない分は便と一緒に体の外に出されます。しかし、ウィルソン病の人の場合は、この銅を体の外に出すしくみがうまく働かず、銅が体にたまってしまいます。 銅は私たちの体にとって大切な栄養素のひとつですが、多すぎると体に毒になります。ウィルソン病では、余分な銅が肝臓だけでなく、脳や腎臓、目の角膜など、さまざまな場所にたまってしまい、それぞれの臓器の働きを悪くしてしまいます。 肝臓では、炎症を起こしたり、硬くなってしまったりします。これは肝硬変と呼ばれる状態で、そのままにしておくと命にかかわることもあります。脳に銅がたまると、手足がふるえたり、うまく歩けなくなったり、言葉がうまく話せなくなったりします。また、精神的な症状が出ることもあり、性格が変わったり、うつ状態になったりすることもあります。腎臓に銅がたまると、腎臓の働きが悪くなり、体に老廃物がたまってしまいます。目の角膜に銅がたまると、カイザー・フライシャー環と呼ばれる茶色い輪っかができ、視力に影響が出ることもあります。 ウィルソン病は、世界的に見ると約3万人に1人の割合で発症すると言われており、決して珍しい病気ではありません。しかし、症状が出始める時期や症状の種類は人によってさまざまなので、診断が難しい場合もあります。早期に発見してきちんと治療すれば、症状の進行を抑え、日常生活を送ることは十分に可能です。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することが大切です。