若年性認知症

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ピック病:知られざる認知症

ピック病は、脳の働きが徐々に衰えていく病気で、特に前頭葉と側頭葉という部分が縮んでしまうのが特徴です。この前頭葉は、額のあたりの脳で、思考や判断、感情のコントロールなどをつかさどっています。また、側頭葉は耳の上あたりに位置し、記憶や言語理解、聴覚情報処理といった役割を担っています。これらの部分が縮むことで、様々な症状が現れます。 この脳の縮みは、アルツハイマー病とも似た症状を示しますが、縮む場所が異なります。アルツハイマー病では脳全体が萎縮していくのに対し、ピック病では前頭葉と側頭葉という特定の部分が集中的に縮んでいくのです。また、ピック病では神経細胞の中に「ピック球」と呼ばれる異常な物質が溜まります。これがピック病特有の変化です。 ピック病は、40代から50代といった働き盛りの世代で発症することが多く、若年性認知症の一つに数えられます。アルツハイマー病と比べると患者数は少ないものの、働き盛りで発症するため、患者さん本人だけでなく、家族や職場など周囲への影響も大きくなります。仕事ができなくなることによる経済的な負担や、介護のための時間的な負担、精神的なストレスなど、様々な問題が生じる可能性があります。ピック病は進行性の病気であるため、現在の医学では完全に治すことはできません。しかし、早期に発見し、適切なケアを続けることで、症状の進行を遅らせ、患者さんの生活の質を維持、向上させることが期待できます。薬物療法による症状の緩和や、日常生活での困りごとをサポートするケアなど、様々な取り組みが重要です。
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若年性認知症:働き盛りの異変

若年性認知症とは、一般的に仕事や子育てといった社会活動の盛んな18歳から64歳までの間に発症する様々な種類の認知症の総称です。高齢者の認知症と同様に、もの忘れがひどくなる、状況を判断する力が弱まる、性格や行動に変化が見られるなど、様々な症状が現れます。 原因となる病気は、アルツハイマー型認知症や脳の血管が詰まったり破れたりする脳血管疾患、レビー小体型認知症など様々で、高齢者の認知症と同じ病気が原因となる場合も少なくありません。しかし、若年性認知症の場合、仕事や子育て、家族の世話など、様々な責任を担っている時期に発症することが多く、日常生活や社会生活への影響は非常に大きいという特徴があります。仕事を続けることが難しくなったり、家事や育児に支障が出たり、経済的な問題に直面したりするなど、生活が一変してしまうことも少なくありません。 また、若年性認知症は周囲の理解を得にくいという特有の難しさも抱えています。認知症は高齢者の病気というイメージが強く、働き盛りの人が認知症になることは想像しにくいからです。そのため、周囲から怠けている、やる気がないなどと誤解され、適切な支援を受けられない場合もあります。さらに、医療機関を受診しても、すぐに若年性認知症と診断されないケースも見られます。うつ病などの他の病気と間違われたり、症状が軽く見過ごされたりすることで、診断が遅れ、適切な治療の開始が遅れてしまう可能性もあるのです。厚生労働省の調査によると、国内には数万人の患者がいると推定されており、決して珍しい病気とは言えません。働き盛りの人々が突然病気に襲われ、人生が大きく変わってしまう現実があることを、私たちはもっと深く認識する必要があるでしょう。