肝臓

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黄疸の基礎知識

黄疸とは、皮膚や白目が黄色く染まる症状のことです。まるで熟したみかんのような色合いに変化することで、容易に認識できます。これは、血液中にビリルビンと呼ばれる黄色い色素が過剰に蓄積することが原因です。 では、このビリルビンはどこから来るのでしょうか。私たちの血液中には、酸素を運ぶ役割を果たす赤血球があります。これらの赤血球は古くなると壊されますが、この時に赤血球に含まれるヘモグロビンという物質からビリルビンが作られます。通常、ビリルビンは肝臓で処理され、胆汁とともに腸へ排泄されます。胆汁は消化を助ける働きをしますが、ビリルビンはこの胆汁に含まれることで体外へ排出されるのです。 しかし、何らかの原因で肝臓の処理能力が低下したり、胆汁の流れが滞ったりすると、ビリルビンが血液中に増加し、黄疸を引き起こします。生まれたばかりの赤ちゃんにみられる新生児黄疸のように、一時的なものもあります。これは、生まれたばかりの赤ちゃんの肝臓の働きが未熟なため、ビリルビンをうまく処理できないことが原因で起こります。多くの場合、自然に治まりますが、注意深く経過観察する必要があります。 一方で、肝炎、胆石、胆道がん、膵臓がんといった深刻な病気が原因で黄疸が現れることもあります。これらの病気は、肝臓の機能を低下させたり、胆汁の流れを阻害したりすることで、ビリルビンの排泄を妨げ、黄疸を引き起こします。また、溶血性貧血のように赤血球が異常に速く壊れる病気でも、ビリルビンが過剰に生成され、黄疸が現れることがあります。 黄疸は、それ自体が病気なのではなく、あくまで何らかの異常を知らせるサイン、つまり症状の一つです。そのため、黄疸が見られた場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、原因を特定することが非常に重要です。原因によっては緊急の処置が必要となる場合もありますので、皮膚や白目が黄色く染まった場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。
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亜急性肝炎:知っておきたい肝臓の病気

亜急性肝炎は、肝臓で起こる炎症性の病気で、急性肝炎と慢性肝炎の中間に位置すると考えられています。急性肝炎は比較的短期間で治癒する傾向がありますが、亜急性肝炎は数週間から数ヶ月にわたって症状が続き、慢性肝炎へと進行する可能性も持っています。 初期症状は急性肝炎と似ており、発熱や全身の倦怠感、食欲不振などが現れます。しかし、これらの症状が数週間以上続く場合、亜急性肝炎を疑う必要があります。急性肝炎では見られないような、より深刻な症状が現れることもあります。具体的には、意識がもうろうとする、手の震え、出血しやすいといった精神神経症状や、お腹に水が溜まる腹水、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が高度に現れる、吐血や下血などの消化管出血などです。これらの症状は、肝臓の働きが著しく低下していることを示すサインであり、放置すると命に関わる危険性があります。 亜急性肝炎は、ウイルス感染や薬剤、アルコールの過剰摂取、自己免疫疾患などが原因で発症すると考えられていますが、はっきりとした原因が特定できない場合もあります。急性肝炎と比べて、一般的にはあまり知られていない病気であるため、症状が長引く場合は医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。早期に発見し、適切な治療を開始することで、慢性肝炎への移行や重症化を防ぐことができます。日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、肝臓への負担を軽減することも大切です。
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知っておきたいウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、肝臓に炎症を起こすウイルス感染症です。肝炎ウイルスには様々な種類があり、大きく分けてA型、B型、C型、D型、E型の五つの型があります。それぞれのウイルスは感染経路や症状、経過も異なり、適切な対策が必要です。 まず、A型肝炎とE型肝炎は経口感染で、汚染された飲食物を口にすることで感染します。例えば、十分に火が通っていない貝類や、衛生管理が不十分な環境で調理された食品などを食べることで感染する可能性があります。また、感染者の便に汚染された水や食べ物を介して感染することもあります。これらの肝炎は一過性の急性肝炎を起こすことが多く、慢性化することはほとんどありません。予防には、食品の適切な加熱や、手洗いの徹底などの衛生管理が重要です。 一方、B型、C型、D型肝炎は、血液や体液を介して感染します。輸血や注射針の使い回し、性交渉、母子感染などが主な感染経路です。B型肝炎ウイルスに感染した母親から赤ちゃんに感染する母子感染は、慢性肝炎に移行する可能性が高いため特に注意が必要です。B型肝炎は、急性肝炎だけでなく、慢性肝炎に移行する可能性があり、放置すると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあります。C型肝炎も同様に慢性化しやすく、肝硬変や肝がんの原因となります。D型肝炎は、B型肝炎ウイルスが存在する場合にのみ感染・増殖する特殊なウイルスです。B型肝炎ウイルスに対するワクチン接種はD型肝炎の予防にも繋がります。これらの肝炎の予防には、血液や体液との接触を避けることが重要です。医療行為を受ける際は、医療機関の衛生管理体制を確認することも大切です。また、B型肝炎には有効なワクチンがあるので、感染予防に役立ちます。 肝炎ウイルスへの感染は、決して他人事ではありません。正しい知識を身につけ、予防を心掛けることで、感染リスクを減らし、健康を守ることができます。少しでも気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、検査を受けるようにしましょう。
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ライ症候群:知っておきたい子どもの病気

ライ症候群は、主に乳幼児や小児にみられるまれで重い病気です。かぜや水ぼうそうなどのウイルス感染症が治りかけてきた頃に、急に発症することが多いです。特に、アスピリンなどのサリチル酸系解熱剤を服用した後に発症する危険性が高まることが知られています。 この病気の詳しい原因はまだすべてが明らかになっているわけではありませんが、ウイルス感染とアスピリンの相互作用が深く関わっていると考えられています。ライ症候群になると、脳が急に腫れる(急性脳症)とともに、肝臓に脂肪がたまる(肝臓の脂肪浸潤)という特徴的な症状が現れます。 初期症状としては、繰り返し吐く、意識がもうろうとする、けいれんなどが見られます。さらに病気が進むと、意識障害がひどくなり、呼吸がおかしくなったり、手足が硬直したりすることもあります。重症化すると命に関わるため、早期発見と適切な処置が何よりも重要です。 保護者は、お子さんがウイルス性の感染症にかかった際に、安易にアスピリンなどのサリチル酸系解熱剤を使用しないように注意しなければなりません。医師の指示がない限り、これらの薬を子どもに与えることは避け、アセトアミノフェンなどのサリチル酸系以外の解熱鎮痛剤を選ぶようにしましょう。 ライ症候群は、迅速な診断と集中的な治療が必要となる病気です。お子さんに少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。早期発見と適切な治療によって、後遺症を残さず回復できる可能性が高まります。
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肝硬変:知っておきたい基礎知識

肝硬変は、慢性的な肝臓の炎症が続くことで、肝臓の細胞が壊され、線維と呼ばれる組織が固くなる病気です。この線維化によって、肝臓は次第に硬く小さくなり、本来の働きができなくなっていきます。肝臓は再生能力が高い臓器として知られていますが、長引く炎症や繰り返される損傷により、その再生能力が追いつかなくなってしまうことが原因です。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、初期の肝硬変では自覚症状がほとんどありません。そのため、病気が進行するまで気づかない場合が多く、定期的な健康診断や検査による早期発見が非常に重要です。肝硬変が進行すると、皮膚や目が黄色くなる黄疸、お腹に水が溜まる腹水、意識障害や精神錯乱などを引き起こす肝性脳症といった様々な症状が現れます。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたし、生活の質を著しく低下させる可能性があります。 肝硬変の原因は様々です。ウイルスによる慢性肝炎や、過度の飲酒によるアルコール性肝障害、脂肪肝から進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD)、自己免疫による攻撃で肝臓が炎症を起こす自己免疫性肝炎などがあげられます。一部の薬や遺伝性の病気によって引き起こされるケースもあるため、原因を特定し、適切な治療を行うことが大切です。肝硬変は放置すると、命に関わる深刻な状態になる可能性があります。早期発見・早期治療によって、病気の進行を遅らせ、合併症を防ぐことが重要です。日頃からバランスの良い食事、適度な運動、禁酒などを心がけ、肝臓への負担を軽減することが肝硬変の予防につながります。