聴覚障害

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医療

聞こえにくさへの理解を深める

「聞こえにくさ」とは、音が十分に聞き取れない状態のことです。これは単に音が小さくなるだけでなく、特定の音の高さが聞き取りにくい、音が割れて聞こえる、言葉がはっきり聞き取れないなど、様々な状態を含みます。まったく音が聞こえない「聴覚消失」とは区別されますが、聞こえにくさを放置すると聴覚消失に進行する可能性もあります。 聞こえにくさは、日常生活に様々な影響を及ぼします。例えば、家族や友人との会話が聞き取れず、コミュニケーションが難しくなることで孤立感を感じやすくなります。また、テレビやラジオの音量が大きくないと聞こえず、周囲に迷惑をかけてしまうこともあります。さらに、車の接近や警報音など、身の回りの危険を察知しにくくなるため、事故のリスクも高まります。このような状態が続くと、生活の質が低下し、精神的な負担も大きくなります。 聞こえにくさの原因は様々です。年齢を重ねるにつれて耳の機能が衰える「加齢性難聴」は、多くの人が経験する一般的な原因です。また、中耳炎などの病気や、事故による外傷、大きな音に長時間さらされることによる騒音性難聴なども、聞こえにくさを引き起こす要因となります。中には、遺伝的な要因や、特定の薬の副作用によって聞こえにくさが生じる場合もあります。 もし、ご自身や周りの方が聞こえにくいと感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。医師による適切な検査と診断を受けることで、原因に応じた治療や対策を行うことができます。例えば、補聴器の使用や、手術が必要な場合もあります。早期に適切な対応をすることで、聞こえの悪化を防ぎ、より良い聞こえを取り戻せる可能性が高まります。聞こえに関する正しい知識を持ち、適切な行動をとることは、自分自身だけでなく、周りの人との円滑なコミュニケーション、そしてより豊かな生活を送る上で非常に大切です。
医療

聴能訓練士の役割と重要性

聴能訓練士は、聴こえに困難を感じる人々にとって、日常生活を送る上で欠かせない大切な存在です。耳の聞こえに関する様々な問題を抱える人々に対し、医師の指示の下、親身になって寄り添いながら、聴こえの改善、維持、そしてより良い生活を送るためのサポートを行います。 まず、聴能訓練士の仕事は、聴こえの状態を正しく把握することから始まります。様々な聴覚検査や聴力評価を通じて、現在の聴こえの状態を詳細に調べます。どれくらいの大きさの音まで聞き取れるのか、どの音域が聞き取りづらいのかなど、一人ひとりの状態を丁寧に把握することで、その人に最適な訓練計画を立てることができます。 次に、聴こえの機能改善を目的とした訓練を行います。これは、音を聞き取る練習であったり、言葉を聞き分ける練習であったり、様々な方法を用いて行われます。聴こえの程度や年齢、そして生活環境なども考慮しながら、個々の状況に合わせた訓練プログラムを提供することで、より効果的な改善を目指します。 さらに、聴能訓練士は補聴器の選定や使い方の指導も行います。単に聞こえを大きくするだけでなく、生活の中で快適に使えるように、一人ひとりの耳の状態や生活環境に合った補聴器選びをサポートします。そして、正しく使いこなせるように丁寧な指導を行うことで、補聴器の効果を最大限に引き出すことができます。 このように、聴能訓練士は医学や音響学といった専門知識を駆使し、聴こえの回復、維持、そして向上のため、様々な角度から支援を提供する、いわば聴こえの専門家と言えるでしょう。耳の聞こえの問題を抱える人々にとって、聴能訓練士は良き相談相手であり、心強い支えとなる存在です。
介護職

聞こえや言葉の専門家 言語聴覚士

言語聴覚士、略してSTと呼ばれる専門家は、話す、聞く、食べる、飲み込むといった行為に困難を抱える人々を支援します。これらは、私たちが社会生活を送る上で欠かせない大切な機能です。生まれたばかりの赤ちゃんから、人生の先輩である高齢者まで、幅広い年齢層の方々がSTの支援対象となります。 支援が必要となる原因は様々です。例えば、病気や事故による後遺症、生まれつきの発達上の特性、加齢に伴う機能の衰えなどが挙げられます。具体的には、ことばの意味を理解したり、自分の気持ちをことばで伝えたりすることが難しい、うまく発音できない、声がかすれてしまう、周囲の音が聞こえにくい、食べ物がうまく飲み込めないといった症状が見られます。STは、これらの症状に対して専門的な検査や評価を行い、一人ひとりに合わせた訓練プログラムを作成します。 訓練では、発音の練習や、ことばの理解を深めるためのゲーム、呼吸法の改善、滑舌をよくするための練習、安全に飲み込むための姿勢や食事の工夫などを指導します。また、ご家族や介護に携わる方々への指導も大切な仕事です。家庭での練習方法や、日常生活での注意点などを伝え、ご家族と協力しながら支援を進めていきます。さらに、住環境や学校、職場などの環境調整についても助言を行います。例えば、周囲の音を聞き取りやすくするための工夫や、食事がしやすくなるような道具の提案などです。 人と人とのつながり、社会の中で生きていくために、コミュニケーションは欠かせません。言語聴覚士は、人々が円滑なコミュニケーションを回復し、自分らしい豊かな生活を送れるよう、寄り添いながら支えていく専門家です。
その他

盲ろうという生き方:理解と支援の道筋

盲ろうとは、視覚と聴覚の両方に障害がある状態を指します。目が見えにくい、あるいは全く見えない状態と、耳が聞こえにくい、あるいは全く聞こえない状態が重なっているということです。一見すると、周りの世界を知ることや人と関わりを持つことが難しいように思われますが、実際には残っている視覚や聴覚、あるいは触覚や嗅覚などを活用して、周りの世界を認識し、コミュニケーションをとっています。 例えば、わずかに光を感じる視力があれば、物の形や明るさの違いを認識することができますし、かすかな音を聞き取れる聴力があれば、周囲の音から周りの状況を把握することができます。また、触覚は、物の形や材質、温度などを知るために重要な役割を果たします。点字を読む、物に触れて形を認識する、相手の手に触れて意思疎通を図るなど、触覚は様々な場面で活用されます。さらに、嗅覚は、食事を楽しむ、危険を察知するなど、生活を豊かにする上で役立ちます。このように、盲ろうの方は、使える感覚を最大限に活用して生活しています。 盲ろうには、生まれたときから視覚と聴覚に障害がある先天性の盲ろうと、成長してから視覚と聴覚に障害が生じる後天性の盲ろうがあります。先天性の盲ろうの方は、言葉を覚える過程で視覚や聴覚からの情報を得ることができないため、独自のコミュニケーション方法を身につける必要があります。一方、後天性の盲ろうの方は、それまで目や耳で得ていた情報が得られなくなるため、大きな喪失感や精神的な負担を抱えることがあります。また、以前とは異なるコミュニケーション方法を習得する必要も出てきます。 このように、盲ろうは、単に視覚と聴覚の障害というだけでなく、生活のあらゆる場面に影響を及ぼす多様な側面を持つ状態です。そのため、盲ろうの方一人ひとりの状況を理解し、適切な支援を行うことが重要です。