老人保健法

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介護保険

改正された老人保健法:高齢者医療確保法

昭和五十八年に施行された老人保健法は、高齢者の健康を保ち、適切な医療を受けられるようにすることを目的としていました。人々が年を重ねても健康に暮らし、必要な医療を適切に受けられるようにするために、病気の予防や治療、体の機能を回復するための訓練などの保健事業を総合的に行うことで、国民全体の健康を良くし、高齢者の福祉をより良くすることを目指していました。当時、高齢化社会の到来が予測され、高齢者が健康で安心して暮らせる社会の仕組みを整えることが急務となっていた時代背景の中で、この法律は作られました。 具体的には、健康診断や健康に関する相談、健康についての指導、体の機能を回復するための訓練といった様々なサービスを提供することで、高齢者が自分の力で生活できるよう支援し、生活の質を高めることを目指しました。また、医療費の負担を軽くする仕組みも取り入れ、高齢者がお金の心配をせずに必要な医療を受けられるようにと考えられました。 老人保健法の制定によって、高齢者への保健医療サービスを提供する仕組みが強化されました。例えば、市町村などが地域の実情に合わせて高齢者の健康増進のための計画を作り、実施することが定められました。また、高齢者の健康状態を定期的に確認するための仕組みや、必要な医療や介護サービスにつなげるための仕組みも作られました。これらの取り組みは、高齢者の健康をより良くし、福祉の向上に大きく役立ちました。しかし、介護保険制度の導入に伴い、平成十四年に廃止され、その役割は介護保険法へと引き継がれました。
費用について

高齢者の医療費負担の変遷

かつて、昭和四十八年には高齢者の医療費が無料となりました。これは、お年寄りの暮らしを支え、安心して病院にかかれるようにするための、当時としては画期的な政策でした。医療費の心配なく、必要な時に医療を受けられることは、多くのお年寄りにとって大きな安心感をもたらしたに違いありません。 しかし、この制度は、その後の社会の変化によって大きな問題に直面することになります。人々が長生きするようになり高齢者が増える一方で、子どもを産む人が減り、若い世代が少なくなってきたのです。これは、医療費を負担する現役世代の数が減り、一人あたりの負担が大きくなることを意味します。結果として国の財政を圧迫し、制度の維持が難しくなってきたのです。 こうした状況を受けて、昭和五十八年には老人保健法が作られ、高齢者の医療費の一部負担が始まりました。無料だった医療に費用がかかるようになるという、無料化から有料化への転換は、社会保障制度を持続させるための、とても難しい決断でした。お年寄りの負担が増えることへの心配の声もありましたが、将来にわたって社会保障制度を安定させるためには、避けることのできない選択だったと言えるでしょう。 この有料化への転換は、社会保障制度の在り方について、私たちに大切な問いを投げかけています。高齢化が進む中で、どのように支え合いの仕組みを作っていくのか、限られた資源をどのように分配していくのか、そして、将来世代にどのような社会を残していくのか。これらの問いに対する答えを見つけることは、私たち皆の責任です。この制度改正は、将来への課題を浮き彫りにした、重要な転換点だったと言えるでしょう。