神経難病

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多系統萎縮症:知っておきたい基礎知識

多系統萎縮症は、あまり知られていない病気かもしれません。この病気は、脳や脊髄といった中枢神経にある特定の神経細胞が少しずつ失われていく進行性の神経変性疾患です。神経細胞が減ってしまうことで、体の様々な働きがうまくいかなくなります。「多系統」という名前の通り、いくつもの症状が現れるのが特徴です。 具体的には、運動機能の障害では、手足の震え、動作が遅くなる、歩きにくくなるといった症状が見られます。また、姿勢を保つのが難しくなることもあります。さらに、自律神経の障害も起こり、血圧の変動、便秘、排尿障害などが現れることがあります。立ちくらみや失神を起こす場合もあります。加えて、小脳の機能にも影響が出ることがあり、ろれつが回らなくなったり、ふらついたり、眼球運動に異常が出たりするなどの症状が現れることもあります。 このように、多系統萎縮症は様々な症状が複雑に現れるため、診断が難しい場合もあります。現在のところ、この病気の原因は解明されておらず、根本的な治療法も確立されていません。そのため、症状を和らげるための治療が中心となります。多系統萎縮症は国の指定難病に指定されており、患者数も比較的少ないため、情報を得たり、適切な医療機関にかかったりするのが難しい場合もあります。早期に診断を受け、適切なケアを受けることが大切です。そのためにも、この病気について正しく理解を深めることが重要です。
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ALSと付き合うということ

筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)、通称エー・エル・エスは、体を動かす指令を出す神経が少しずつ侵されていく、進行性の難病です。手や足の筋肉が最初に衰え始め、次第に呼吸に必要な筋肉も弱っていきます。そのため、歩く、物を食べる、話す、呼吸するといった、普段の生活を送る上で基本となる動作が難しくなっていきます。病気の進行の速さや症状の出方には個人差があり、病状が進むと自力で体を動かすことや呼吸することが困難になり、人工呼吸器を装着する必要が生じることもあります。 エー・エル・エスは、今の医学では原因が解明されていない難病であり、根本的な治療法はまだ見つかっていません。しかし、病気の進行を遅らせたり、生活の質を少しでも良くするための様々な治療法や支援があります。エー・エル・エスと診断された直後は、病気に対する不安や将来への恐れを抱くのは当然のことです。正しい知識を身につけ、医師や看護師、その他の医療関係者、そして支援団体と協力していくことで、病気と前向きに向き合い、より良い生活を送ることは可能です。 エー・エル・エスは難病ではありますが、決して希望を捨てる必要はありません。周りの人々の支えや最新の医療、そして患者さん自身の生きる力によって、エー・エル・エスと共に生きる道は必ず開けます。病気について正しく理解し、受け入れることが、エー・エル・エスと付き合っていくための第一歩です。焦らず、ゆっくりと、ご自身のペースで病気と向き合っていきましょう。そして、困ったときや悩んだときは、一人で抱え込まずに、周りの人に相談したり、支援団体に連絡してみましょう。きっと力になってくれるはずです。
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進行性核上性麻痺:知っておくべきこと

進行性核上性麻痺という病気について、詳しくご説明します。この病気は、あまり知られていませんが、脳の中にある神経細胞が少しずつ変化し、失われていくことで、様々な運動の障害を引き起こす難しい病気です。 具体的には、脳の中の大脳基底核、脳幹、小脳といった、体の動きを調節する大切な部分が影響を受けます。そのため、歩くこと、目の動き、食べ物を飲み込むことなどに、深刻な症状が現れます。 初期の段階では、よく転ぶ、足がスムーズに出ない、食べ物が飲み込みにくいといった症状が見られます。これらの症状は、日常生活の中で少しずつ現れ始めます。 病気が進むと、次第に体のバランスを保つことが難しくなり、車椅子での生活が必要になることもあります。さらに、会話や食事にも困難が生じ、日常生活に大きな支障をきたします。話すことや食べることは、私たちが毎日行う大切な活動であり、これらのことができなくなると、生活の質が大きく低下します。 進行性核上性麻痺は、40歳を超えてから発症することが多く、男性に多く見られる傾向があります。今の医学では、この病気の進行を完全に止めることは残念ながらできません。 病気の進行は早く、発症から4~5年で寝たきりになってしまう方も少なくありません。平均寿命は発症から5~9年と言われており、肺炎や、誤って食べ物が気管に入り込んでしまうことで起こる肺炎といった合併症が、亡くなる原因となることが多いです。 早期の診断と、適切なケアが何よりも大切です。周りの方の理解と協力も、患者さんにとって大きな支えとなります。
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パーキンソニズムとは?パーキンソン病との違い

パーキンソニズムは、パーキンソン病と同じような様々な運動症状を示す一群の症候群です。パーキンソニズムの原因となる病気は様々ですが、いずれも脳の機能に何らかの異常が生じることで、パーキンソン病に似た症状が現れます。 代表的な症状として、動作が遅くなること(動作緩慢)が挙げられます。これは、体を動かす指令を出す脳の働きが低下するためです。例えば、歩行の開始が遅くなったり、歩幅が狭くなったり、歩いている途中で足が止まってしまうこともあります。また、着替えや食事、入浴など、日常生活の動作にも時間がかかるようになります。 手足の震え(振戦)もよく見られる症状です。安静時に手足が震えることが多く、特に指先が細かく震えるのが特徴です。この震えは、意識的に動かそうとすると一時的に止まることもありますが、精神的な緊張や疲労によって強まることがあります。字を書く、箸を使う、ボタンをかけるといった細かい作業が難しくなるため、日常生活に支障をきたすこともあります。 筋肉が硬くなること(筋固縮)も、パーキンソニズムの特徴的な症状です。筋肉がこわばるため、関節の動きが悪くなり、体の動きがぎこちなくなります。腕を曲げ伸ばししたり、首を回したりする際に抵抗感があり、スムーズに動かせません。この筋固縮は、体の痛みや姿勢の悪さにもつながることがあります。また、体のバランスが保ちにくくなる(姿勢反射障害)ことで、転倒しやすくなることもあります。 これらの症状は、人によって現れ方や程度が大きく異なります。また、症状の進行速度も人それぞれです。パーキンソニズムの中には、薬物によって引き起こされるものや、他の神経疾患に伴って現れるものもあります。そのため、症状に気づいたら早めに医療機関を受診し、正確な診断を受けることが大切です。早期に適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、日常生活の質を維持することが期待できます。
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ALSと共に生きる

筋萎縮性側索硬化症。この病名は、あまり聞きなれないかもしれません。しかし、ALSと聞けば、思い浮かぶ方もいるでしょう。ALSは、体を動かす指令を出す神経、すなわち運動神経が徐々に働かなくなる病気です。難病に指定されており、今のところ、根本的な治療法は見つかっていません。 この病気の特徴は、運動神経だけが侵される点にあります。体を動かす筋肉は、神経からの指令を受けて初めて動くことができます。ALSでは、この指令を出す神経がうまく働かなくなるため、筋肉は次第に痩せて力が入らなくなっていきます。勘違いされやすい点ですが、これは筋肉そのものが悪くなっているのではなく、神経からの命令が届かなくなることが原因です。 意識や視覚、聴覚、内臓の働きなどは、多くの場合、保たれたままです。つまり、病気で体が不自由になっていくなかでも、頭ははっきりとした状態が続きます。自分の置かれた状況を理解しながら、体が思うように動かなくなっていく。これは、患者さんにとって大きな苦痛であり、不安やもどかしさにつながります。ALSは進行性の病気で、徐々に悪化していきますが、その進行の速さには個人差が大きいです。発症してから人工呼吸器が必要となるまでの期間も、人によって様々です。 現在、ALSの進行を遅らせる薬はありますが、完治させる薬はありません。患者さんとそのご家族は、長期にわたる闘病生活を強いられます。ALSは、現代医学においても未だ多くの謎が残る病気です。研究者たちは、この病気を解明し、効果的な治療法を見つけるために、日夜研究を続けています。