睡眠障害

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医療

夢の中の行動にご用心:レム睡眠行動障害

夜、床に就いて眠りに落ちると、私たちは夢の世界へと旅立ちます。しかし、夢を見ている間、私たちの体は通常、深い眠りに落ちて動きません。これは、脳が体に休息を与え、夢の中でどんなに激しく動いても現実世界で体を動かすことがないようにするための安全装置のようなものです。ところが、「レム睡眠行動障害」という睡眠の病気を持つ人は、この安全装置がうまく働かず、夢で見ている行動を現実世界でも再現してしまうのです。 レム睡眠行動障害の人は、夢の内容に合わせて手足をバタバタと動かしたり、大声で寝言を言ったりします。場合によっては、ベッドから落ちて怪我をしてしまうこともあります。例えば、夢の中で誰かと口論をしていると、現実でも怒鳴ったり、相手を叩いたりするかもしれません。逃げる夢を見れば、ベッドから飛び降りてしまうこともあります。まるで、夢の世界を現実世界で演じているかのようです。 そして、最も厄介な点は、本人はこれらの行動を全く覚えていないということです。朝起きて、家族から「夜中に大声で叫んでいたよ」とか「ベッドから落ちそうになっていたよ」と指摘されて、初めて自分の奇妙な行動に気づくのです。ですから、周りの人がいつもと違う寝相や行動に気づいてくれることが、早期発見の大きな手がかりとなります。 単に寝相が悪いだけ、と軽く考えて見過ごしてしまうと、自分自身や一緒に寝ている人に怪我をさせてしまう危険性があります。もし、ご自身や家族が寝ている間の行動に覚えがなく、周囲から指摘されるようなことがあれば、レム睡眠行動障害の可能性も考えて、早めに病院で相談するようにしましょう。専門家の適切な診断と対応によって、安心して眠れる夜を取り戻すことができるかもしれません。
医療

傾眠:見過ごせない重要なサイン

傾眠とは、浅い眠りの状態を指します。まるでうとうとしているように、意識がぼんやりとしています。名前を呼ばれたり、軽く肩を叩かれたりといった刺激ですぐに目を覚ますのが特徴です。居眠りをしているように見えることもあります。しかし、傾眠は、単なる疲労や睡眠不足とは違います。様々な原因が隠れている場合があり、注意深い観察が必要です。 例えば、睡眠時無呼吸症候群といった睡眠の病気や、脳梗塞などの脳の病気、甲状腺機能低下症などの内分泌系の病気、うつ病などの心の病気など、傾眠を引き起こす病気は多岐にわたります。また、薬の副作用で傾眠が起こることもあります。服用している薬がある場合は、その影響も考慮する必要があります。 傾眠状態が続く場合は、背景に何らかの病気が隠れている可能性が高いと考えられます。普段と異なる様子が続くようであれば、早めに医療機関を受診し、専門家の診察を受けることが大切です。自己判断で放置せず、適切な診断と治療を受けることで、重症化を防ぐことに繋がります。 医療機関では、問診や身体診察、血液検査、脳波検査など、様々な検査を通して原因を特定します。原因が特定されれば、それぞれの病気に合わせた治療が行われます。例えば、睡眠時無呼吸症候群であれば、持続陽圧呼吸療法(CPAP)といった機器を使った治療を行います。また、薬が原因であれば、薬の種類や量を調整することもあります。 傾眠は、命に関わる病気のサインである可能性もあります。少しでも気になることがあれば、ためらわずに医療機関に相談しましょう。早期発見、早期治療が健康を守る上で重要です。日頃の体調管理、生活習慣の見直しも大切にし、健康な毎日を送りましょう。
健康の維持

睡眠障害と高齢者ケア

「睡眠障害」とは、夜間にしっかりと眠ることができず、日中の生活にまで影響を及ぼす状態のことを言います。ただ一晩眠れなかったという一時的なものではなく、ある程度の期間に渡って繰り返し眠れない、あるいは睡眠の質が低い状態が続くことを指します。 この睡眠障害は、加齢とともに起きやすくなると言われています。年を重ねると、身体の機能が低下し、ホルモンの分泌リズムも変化します。また、生活習慣の変化や、持病のために服用している薬の影響なども、睡眠に影響を与えることがあります。 睡眠障害には様々な種類があります。例えば、「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」「ぐっすり眠れない」といった症状が現れます。これらの症状が続くと、日中は強い眠気に襲われたり、集中力が低下したり、疲れが取れにくくなったりします。また、倦怠感やイライラ感が募り、意欲の低下にも繋がります。 高齢者の場合、睡眠障害が認知症のリスクを高めるという報告もあります。さらに、転倒や骨折のリスクを高めるなど、身体的な健康にも悪影響を及ぼします。 睡眠障害は、高齢者の生活の質(QOL)を著しく低下させる大きな要因です。規則正しい生活習慣を心がけたり、睡眠環境を整えたりすることで睡眠の質を改善できる場合もあります。睡眠に問題を抱えている場合は、早めに専門の医師に相談することが大切です。
医療

居眠り病:ナルコレプシーを知ろう

ナルコレプシーは、一般的に「居眠り病」と呼ばれる睡眠障害です。この病気は、日中に強い眠気に襲われることを主な特徴としています。突然、激しい眠気が生じ、場所や状況を問わず、授業中、仕事中、さらには運転中など、日常生活の様々な場面で起こり得ます。そのため、社会生活に大きな支障をきたす可能性があります。 この強い眠気は、数分程度から数十分続くこともあり、目が覚めた後も、しばらくの間はぼんやりとした状態が続くことがあります。単なる「眠い」という状態とは異なり、自分の意思ではコントロールできない強い眠気に襲われます。まるでスイッチが入ったかのように、突然眠ってしまうため、周囲からは怠けていると誤解される場合もあるかもしれません。 ナルコレプシーの原因は、脳内の神経伝達物質オレキシンの不足と考えられています。オレキシンは、覚醒を維持する上で重要な役割を果たしており、この物質が不足すると、睡眠と覚醒のリズムが乱れてしまいます。ナルコレプシーの詳しい仕組みはまだ全てが解明されたわけではありませんが、遺伝的な要因や免疫系の異常などが関わっていると考えられています。 ナルコレプシーは、思春期頃に発症することが多いですが、年齢や性別に関係なく発症する可能性があります。早期に適切な治療を開始することで、症状を和らげ、日常生活を送りやすくすることができます。ナルコレプシーの治療には、薬物療法や生活指導などが行われます。規則的な睡眠習慣を身につけ、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけることも重要です。もし、日中に強い眠気に悩まされている場合は、医療機関を受診し、専門医に相談することをお勧めします。早期の診断と治療によって、より良い生活を送ることができるようになります。