発達障害

記事数:(4)

その他

知的な遅れへの理解を深める

知的な遅れとは、十八歳までに知的発達が遅れ、社会生活を送る上で周囲と同じように適応することが難しく、様々な場面で何らかの手助けが必要となる状態を指します。これは単に学校の勉強の成績が良くないというだけではなく、日々の暮らしを送る上で欠かせない能力を身につけるのが遅れていることを意味します。 具体的には、記憶したり、言葉を使ったり、文字の読み書きや計算、時間といった概念を理解する能力(概念的な領域)、周りの人と意思疎通をしたり、社会の決まり事を理解する能力(社会的な領域)、食事をしたり、服を着替えたり、トイレに行ったり、お金を管理したりといった日常生活における能力(実用的な領域)の三つの領域で評価を行います。これらの領域のうち、少なくとも一つの領域で周りの人と比べて明らかな困難を抱えている状態が知的な遅れと定義されます。 知的な遅れの程度は、どのくらい手助けが必要かによって、軽度、中等度、重度、最重度の四段階に分けられます。軽度であれば、学校での勉強や社会生活への適応も比較的容易ですが、重度になるほど、日々の暮らしの多くの場面で、いつも誰かの手助けが必要になります。 また、知的な遅れは、それだけで起こる場合だけでなく、他の発達障害や心の病気、脳の働きの障害などを併せて持っている場合もあります。そのため、一人一人の状態を丁寧に把握し、その人に合った適切な手助けを続けていくことが大切です。
その他

退行:介護における理解と対応

人は誰でも成長と共に様々な能力を獲得し、成熟していきます。しかし、時に既に身に付けたはずの能力や行動が、以前の未熟な状態に戻ってしまうことがあります。これを退行といいます。まるで時計の針が逆戻りするようなこの現象は、心身の働きや行動の仕方に見られ、その表れ方は実に様々です。 例えば、トイレの習慣がしっかり身についていた子供が、強い不安や生活環境の変化によって、再びおねしょをしてしまう場合があります。また、高齢者の方で、以前は普通に会話をできていた方が、認知症の進行によって言葉を発しにくくなる、といったこともあります。このような状態も退行の一種です。 退行は、一時的なものから長期間続くものまで、その期間は様々です。また、その程度も人によって大きく異なり、軽いものから深刻なものまで幅広く存在します。 ここで重要なのは、退行は必ずしも悪いことではないという点です。状況によっては、環境に適応するための反応として現れる場合もあります。例えば、小さな子供が弟や妹が生まれた時に、まるで赤ちゃんのようになってしまうことがあります。これは赤ちゃん返りと言われる現象ですが、親の愛情や関心を引こうとするための、一種の退行と捉えることができます。 介護の現場では、利用者一人ひとりの置かれている状況やこれまでの経験を理解し、退行のサインを見逃さないよう、常に注意深く観察することが大切です。退行は、利用者の心の状態を理解するための重要な手がかりとなる場合もあるからです。
医療

アスペルガー症候群:理解と支援

アスペルガー症候群は、広汎性発達障害と呼ばれる様々な発達の特性を持つ自閉スペクトラム症の一つです。発達障害とは、脳の働き方の偏りによって現れる様々な困難の総称で、アスペルガー症候群もこの中に含まれます。社会との関わりや気持ちを伝えること、受け取ることが難しいという特徴があります。例えば、周りの人が何を考えているのか分からなかったり、相手の表情や仕草から気持ちを汲み取ることが苦手だったりします。また、言葉で伝えられることと、実際に感じていることにズレが生じることもあり、それが誤解を生んでしまうこともあります。 特定の物事への強い興味や、周りの音や光、触感などに過敏に反応してしまうといった特徴も見られます。例えば、特定の分野にのめり込んだり、日課や手順が変わると混乱したり、特定の音に過剰に反応してしまったりするなど、周りの人から見ると少し変わった行動に映ることがあります。しかし、アスペルガー症候群の多くの人は、学ぶことや考えることに関しては困難がありません。むしろ、特定の分野に強い興味を持ち、深く探求することで、優れた能力を発揮する人もいます。 アスペルガー症候群は、病気ではなく、その人の個性の一部です。治療の必要はありませんが、周りの人の理解と適切な支えがあれば、社会生活を送る上での困難を軽減し、より充実した生活を送ることができます。例えば、職場や学校で、特性に合わせた配慮や工夫を行うことで、能力を発揮しやすく、生き生きと過ごせる環境を作ることが大切です。得意なことを活かせる場を見つけ、周りの人と協力しながら、それぞれの個性を尊重し合う社会の実現が重要です。
医療

知能指数(IQ)を正しく理解する

知能指数、よく知られている知能指数(IQ)とは、人の知的な働きを数字で表したものです。知的な働きには、学ぶ力、筋道を立てて考える力、問題を解く力、覚える力など、色々な要素が含まれます。これらの力を総合的に見て、数字にすることで、その人の知能の高さを他の人と比べて知ることができます。 知能指数は、たいてい知能検査を受けて測ります。結果は年齢を基準に評価されます。同じ年齢の人と比べて、どのくらいの知的な力を持っているかを表す数字となるのです。例えば、10歳の子供が10歳児向けの知能検査を受け、その結果が10歳児の平均と同じであれば、知能指数は100になります。 知能指数は、学校での勉強や仕事探し、その他いろいろな場面で、その人の能力を評価する時に使われることがあります。しかし、知能指数だけでその人の全てがわかるわけではないことを知っておくことが大切です。知能指数はあくまでも知的な働きの一面を表すだけで、その人の性格や得意なこと、努力などは含まれていません。また、知能検査の結果は、体の調子や周りの環境などによっても変わる可能性があるので、知能指数を絶対的なものとして考えてはいけません。知能は複雑なもので、知能指数だけで全てを説明することはできないのです。 知能指数が高いからといって、必ずしも人生で成功するとは限りません。反対に、知能指数が平均より低くても、優れた才能や努力によって大きな成果を上げる人もいます。大切なのは、自分の得意なことを伸ばし、不得意なことを補う努力をすることです。知能指数は、自分の強みや弱みを理解するためのひとつの材料として活用し、より良い人生を送るために役立てることが重要です。