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認知症を理解する:寄り添う介護のために

認知症とは、一つの病気ではなく、脳の神経細胞が傷ついたり縮んだりすることで、様々な能力が低下し、日常生活に支障が出てくる状態を指します。よく見られる症状としては、物忘れがひどくなる、時間や場所が分からなくなる、人柄が変わる、などがあります。これらの症状は、脳の働きが弱まることによって起こります。 年齢を重ねるにつれて認知症になる危険性は高まりますが、単なる老化とは違います。老化は誰にでも起こる自然な変化ですが、認知症は病気であり、治療やケアが必要な状態です。多くの認知症は少しずつ悪くなっていくため、早く見つけて適切な対応をすることがとても大切です。病状の進み具合を遅らせる治療法がある場合もあります。 認知症の原因となる病気は様々です。例えば、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがよく知られています。病気の種類によって症状の出方や進行の速さが異なるため、医師による正しい診断と、それぞれの病気に合った治療が必要です。 また、認知症の症状は、ただ記憶力が悪くなるだけではなく、考える力、判断する力、理解する力など、日常生活を送る上で必要な様々な能力が低下します。そのため、家事や仕事、人間関係などに問題が生じることがあります。もしも日常生活に支障が出てきたら、ためらわずに早く医療機関を受診しましょう。早く診断を受けることで、適切な治療やケアを受けられ、病状の進行を遅らせたり、症状を軽くしたりすることができる可能性が高まります。認知症は本人だけでなく、家族や周囲の人々にも大きな影響を与えるため、正しい知識を持ち、温かく見守ることが重要です。
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嘔吐:原因と対処法

嘔吐とは、胃の中にあるものが口から勢いよく出てしまうことです。食べ物が消化される前に出てしまうこともあれば、胃液や胆汁などが混ざって出てくることもあります。嘔吐そのものは病気ではなく、様々な原因で起こる症状の一つです。 吐き出す前に感じる不快感や吐き気を催すことを嘔気、胃がむかむかする感覚を悪心と言い、実際に吐き出されたものを吐瀉物と呼びます。これらの言葉は、嘔吐にまつわる状況をより詳しく説明する際に使われます。 嘔吐は誰にでも起こりうることです。例えば、食べ過ぎや飲み過ぎ、乗り物酔い、つわり、精神的なストレス、激しい痛みなど、比較的よくある原因で起こることがあります。また、細菌やウイルスによる感染症、食中毒、脳の病気、消化器系の病気などが原因で起こることもあります。 嘔吐が一時的なものであれば、それほど心配する必要はありません。安静にして水分をこまめに摂ることで、自然と治まることが多いです。しかし、嘔吐が繰り返したり、長く続いたりする場合は注意が必要です。脱水症状になる危険性がありますし、隠れた病気の可能性もあります。 特に、吐瀉物に血が混ざっていたり、激しい頭痛や腹痛、意識障害などを伴う場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。また、乳幼児や高齢者の場合は、脱水症状になりやすいので、嘔吐が続く場合は早めに医師の診察を受けましょう。自己判断で市販薬などを安易に使うのではなく、適切な診断と治療を受けることが重要です。
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知っておきたい動脈硬化

動脈硬化とは、読んで字のごとく、動脈が硬くなってしまう病気です。私たちの体の中には、心臓から送り出された血液を全身に巡らせるための血管が網の目のように張り巡らされています。動脈は心臓から全身へ血液を運ぶ血管で、本来はゴムのようにしなやかで弾力性に富んでいます。しかし、様々な原因によって動脈の壁が厚く硬くなり、弾力性を失ってしまうことがあります。これが動脈硬化です。 動脈が硬くなると、血液の通り道が狭くなり、スムーズに流れにくくなります。まるで水道管に汚れが詰まって水の流れが悪くなるように、血液の流れが悪くなると、全身の臓器に必要な酸素や栄養が十分に届かなくなります。酸素や栄養が不足すると、臓器の働きが低下し、様々な体の不調が現れます。 動脈硬化は、様々な病気を引き起こす原因となります。例えば、心臓に栄養を送る冠動脈が硬くなると、狭心症や心筋梗塞といった心臓病のリスクが高まります。また、脳に血液を送る血管が硬くなると、脳梗塞を引き起こす可能性があります。さらに、足に血液を送る血管が硬くなると、閉塞性動脈硬化症になり、足の壊疽(えそ)に至ることもあります。このように、動脈硬化は放置すると命に関わる危険な状態になる可能性があります。 怖いのは、動脈硬化は初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。そのため、気づかないうちに病気が進行し、重症化してしまうケースも少なくありません。健康診断などで早期発見に努め、生活習慣の改善などを通して予防することが大切です。動脈硬化の主な原因には、食生活の乱れ、運動不足、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあげられます。これらの危険因子を少しでも減らすように、日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などを心がけ、健康的な生活を送りましょう。規則正しい生活を送り、定期的に健康診断を受けることで、動脈硬化の予防、早期発見に繋がり、健康寿命を延ばすことに繋がります。
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骨髄増殖性疾患:知っておきたい基礎知識

血液を作る場所である骨髄の働きに異常が起こる病気を、骨髄増殖性疾患といいます。通常、骨髄では、酸素を運ぶ赤血球、体を守る白血球、出血を止める血小板といった血液の細胞が、それぞれバランスよく作られています。しかし、この病気になると、血液細胞のもととなる造血幹細胞に異常が生じ、特定の血液細胞が過剰に作られるようになります。 例えば、赤血球が過剰に作られると、血液がドロドロの状態になり、血栓ができやすくなります。また、白血球が増えすぎると、体のあちこちで炎症が起きやすくなります。さらに、血小板が増加すると、血栓ができやすくなる一方で、逆に少なくなると出血しやすくなるといった問題も起こります。他にも、脾臓が腫れて大きくなることもあります。脾臓は、古くなった血液細胞を壊す役割を担っていますが、血液細胞が増えすぎることで、その処理が追いつかなくなり、脾臓が腫れてしまうのです。 骨髄増殖性疾患には、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症といった種類があります。これらの病気は、慢性骨髄性白血病とは異なる病気です。ただし、まれにですが、急性白血病に移行する可能性も懸念されます。 この病気は比較的まれな疾患で、高齢者に多くみられます。現在のところ、原因は完全には解明されていませんが、遺伝子の変化が関わっていると考えられています。 骨髄増殖性疾患は、早期発見と早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。
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骨髄異形成症候群:知っておくべき基礎知識

骨髄異形成症候群とは、血液を作る大切な場所である骨髄の働きが低下してしまう病気です。骨髄は、体にとって欠かせない血液の成分である赤血球、白血球、血小板を生み出す工場のような役割を果たしています。健康な骨髄では、これらの血液細胞がきちんと成熟した状態で作られますが、骨髄異形成症候群になると、未熟でうまく機能しない血液細胞が作られてしまいます。そのため、十分な数の正常な血液細胞が体に行き渡らなくなり、様々な症状が現れるのです。 赤血球が不足すると、酸素を体全体に運ぶ能力が低下し、貧血になります。息切れやだるさ、顔色が悪くなるといった症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。また、白血球が不足すると、体の免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。風邪や肺炎などの感染症が重症化しやすいため、注意が必要です。さらに、血小板が不足すると、出血が止まりにくくなります。ちょっとした傷でも出血が長引いたり、あざができやすくなったりします。鼻血や歯茎からの出血なども起こりやすくなります。 この病気は、子供から高齢者までどの年齢層でも発症する可能性がありますが、特に高齢者に多く見られます。近年、高齢化が進むにつれて、患者数も増加傾向にあります。骨髄異形成症候群は『エムディーエス』と略されることもあります。病気についてより深く理解するために、難病情報センターなど信頼できる情報源から詳しい情報を集めることが大切です。治療法や生活上の注意点など、様々な情報を得ることで、病気とより良く向き合っていくことができるでしょう。
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見えにくい?もしかして緑内障?

緑内障は、目の奥にある視神経が傷つくことで、見える範囲が狭くなったり、物が見えにくくなる病気です。視神経は、目で見た情報を脳に伝える大切な役割を担っています。この視神経が傷つく原因の一つとして、眼圧(目の内側の圧力)の上昇が挙げられます。眼圧が高い状態が続くと、視神経が圧迫され、徐々にダメージを受けていきます。 緑内障の怖いところは、初期段階では自覚症状がほとんどないことです。見える範囲が狭くなっていても、日常生活では気づきにくく、かなり進行してから異常に気づく場合が多いです。残念ながら、一度傷ついた視神経は元に戻すことができません。そのため、緑内障は根本的に治すことは難しい病気とされています。 しかし、早期に発見し、適切な治療を行うことで、病気の進行を遅らせ、見える範囲や視力を保つことは可能です。治療としては、主に点眼薬を使って眼圧を下げる方法がとられます。点眼薬の種類は様々で、患者さんの状態に合わせて医師が適切な薬を選びます。また、点眼薬以外にも、レーザー治療や手術を行う場合もあります。 緑内障は、自覚症状が現れにくいことから、気づかないうちに病気が進行し、失明に至るケースも少なくありません。実際、緑内障は日本で失明原因の第一位となっています。だからこそ、定期的な眼科検診が非常に重要です。40歳を過ぎたら、年に一度は眼科で検査を受けるようにしましょう。早期発見・早期治療こそが、緑内障から大切な視力を守る一番の方法です。
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蓄膿症をよく知ろう

蓄膿症とは、鼻の奥にある副鼻腔という空間に膿がたまる病気です。医学用語では慢性副鼻腔炎と言い、鼻の粘膜に炎症が起き、鼻水がうまく流れ出ずにたまることで起こります。この膿は、多くの場合、細菌やウイルスの感染によって生じます。蓄膿症になると、鼻が詰まったり、鼻水が出たり、頭や顔が痛んだり、においを感じにくくなったりといった症状が現れます。 蓄膿症には、急性蓄膿症と慢性蓄膿症の二つの種類があります。急性蓄膿症は、かぜなどをきっかけに急に発症しますが、適切な治療を受ければ比較的早く治ります。一方、慢性蓄膿症は、症状が長期間続き、治るまでに時間のかかることがあります。慢性蓄膿症は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔の構造に問題があることが原因で発症することもあります。 蓄膿症の主な症状は、鼻づまり、鼻水、頭痛、顔面痛、そして嗅覚障害です。鼻づまりは、膿が副鼻腔にたまることで鼻の通り道を狭くするために起こります。鼻水は、炎症によって過剰に分泌された粘液が膿と混ざり、黄色や緑色になることもあります。頭痛や顔面痛は、副鼻腔内の圧力が高まることで生じ、特に前かがみになった時や頭を振った時に強くなることがあります。嗅覚障害は、鼻の粘膜の炎症がひどくなり、においを感じる神経がうまく働かなくなるために起こります。 蓄膿症はどの年代でも発症する可能性があり、適切な手当てと治療が必要です。放っておくと病気が重くなり、他の病気を引き起こすこともあります。例えば、中耳炎や気管支炎などを併発する可能性があります。また、まれにですが、脳にまで炎症が広がることもあり、大変危険です。そのため、少しでも蓄膿症の疑いがある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
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のどちんこの腫れ:口蓋垂炎

口蓋垂炎とは、普段はのどちんこと呼ばれる口蓋垂が炎症を起こし、腫れてしまう病気です。この口蓋垂は、軟口蓋と呼ばれる口の中の奥の上の部分からぶら下がっている小さな突起物です。 口蓋垂炎になると、この口蓋垂が赤く腫れ上がり、痛みや異物感を引き起こします。 口蓋垂炎の主な原因は、細菌やウイルスによる感染です。風邪やインフルエンザなどに罹患した際に、これらの病原体が口蓋垂にも感染し、炎症を引き起こすことがあります。また、アレルギー反応も口蓋垂炎の原因となることがあります。特定の花粉や食べ物、ハウスダストなどにアレルギーを持つ人が、それらのアレルゲンに曝露されると、口蓋垂が腫れ上がる場合があります。さらに、タバコの煙や排気ガスなどの刺激物、熱い食べ物や飲み物なども、口蓋垂を刺激し、炎症を起こすことがあります。まれに、口蓋垂を誤って噛んでしまったり、熱いものを飲み込んで火傷を負ったりすることで、口蓋垂炎になることもあります。 口蓋垂炎になると、のどの痛みや異物感が最もよく見られる症状です。特に、唾を飲み込む時や食事をする時に痛みが増すことがあります。また、腫れた口蓋垂が気道に近づき、呼吸がしづらくなることもあります。さらに、口蓋垂が腫れることで声がかすれたり、こもったように聞こえたりすることもあります。発熱や咳、鼻水などの症状を伴う場合もあり、これらの症状は原因となった感染症によるものです。多くの場合、口蓋垂炎は数日から1週間程度で自然に治癒します。うがい薬でうがいをしたり、のど飴を舐めたりすることで、症状を和らげることができます。しかし、症状が重い場合や長引く場合、呼吸困難などの症状が現れた場合は、医療機関を受診する必要があります。医師は症状に合わせて、抗生物質や消炎鎮痛剤などを処方することがあります。また、アレルギーが原因の場合は、抗ヒスタミン薬などが処方されることもあります。
医療

予後について理解を深めよう

病気やけがをしたとき、これからどうなるのか、どのくらい良くなるのか、とても気になりますよね。これを「予後」と言います。「予後」とは、病気やけがの今後の経過や、治療をした後の見込みのことです。つまり、将来、病状がどのように変化していくのか、回復する見込みはどれくらいあるのかという予測を表す言葉です。 この予測は、どのように立てられるのでしょうか。医師は、これまでの経験や医学の知識、様々な検査結果、そして患者さんの年齢や体力、普段の生活習慣といった、たくさんの要因を元に総合的に判断します。例えば、よくあるかぜのような軽い病気であれば、たいてい数日で良くなると予測されます。熱やせきなどの症状が軽ければ、医師は「すぐに良くなりますよ」と伝えるでしょう。 一方、がんのような重い病気の場合、予後は病期(病気の進み具合)や治療の効果、そして患者さん一人ひとりの状態によって大きく変わってきます。初期のがんであれば、手術などで完全に治る可能性も高くなりますが、進行したがんの場合は、治療を続けても病状を抑えることしかできない場合もあります。また、同じ病期のがんでも、年齢や体力、持病の有無などによって、予後は異なってきます。 予後を知ることは、患者さん本人や家族にとって、今後の治療方針や生活設計を考える上でとても大切な判断材料となります。例えば、仕事や学業を続けるか、どのような治療を受けるか、介護が必要になるかといったことを考える際に、予後の見通しは大きな影響を与えます。医師から予後について説明を受けた際には、よく理解し、疑問があれば質問することが大切です。そして、自分にとって最良の選択をするために、家族や医療者とよく話し合うことが重要です。
健康の維持

有訴者率を知る

有訴者率とは、調査の対象となった集団の中で、病気や怪我など、自覚症状を訴える人の割合のことです。これは、ある時点における集団の健康状態を把握するための大切な指標となります。 例えば、ある地域で特定の病気がどの程度広がっているか、あるいはある職場の労働環境がそこで働く人たちの健康にどのような影響を与えているかなどを評価する際に役立ちます。具体的には、健康診断やアンケート調査などを通して、対象者に自覚症状の有無を尋ね、その結果を集計することで算出されます。 有訴者率は割合ですので、百分率(パーセント)で表されます。この数値が高いほど、自覚症状を持つ人が多い、つまり健康状態に問題を抱えている人が多い可能性が高いことを意味します。逆に、数値が低い場合は、自覚症状を持つ人が少ない、つまり健康状態が比較的良好な人が多いことを示唆します。 しかし、注意しなければならないのは、自覚症状がないからといって必ずしも健康であるとは限らないということです。自覚症状のない病気も存在します。初期の段階のがんや生活習慣病などは、自覚症状が現れないまま進行することがあります。そのため、有訴者率だけで健康状態を完全に判断することはできません。 有訴者率はあくまでも健康状態を評価する上での一つの指標に過ぎません。他の健康指標、例えば健康診断の結果や生活習慣に関する情報などと合わせて総合的に判断することが重要です。定期的な健康診断の受診や、バランスの良い食事、適度な運動など、健康的な生活習慣を心がけることで、病気の予防や早期発見につながります。
医療

くも膜下出血と介護

くも膜下出血は、脳を覆う膜の一つであるくも膜と軟膜の間の空間(くも膜下腔)で起こる出血です。この出血は、突然の激しい痛みを引き起こします。痛みは、頭を強く殴られたような、あるいはこれまでの人生で経験したことがないほどの激痛と表現されることが多く、「ハンマーで殴られたようだ」「今までに感じたことのない最悪の頭痛」といった表現がよく使われます。 この激しい頭痛に加えて、吐き気や嘔吐といった症状が現れる場合もあります。出血によって脳が圧迫されたり、刺激されたりすることで、意識がぼんやりしたり、痙攣を起こしたり、手足がしびれたり動かなくなったりすることもあります。また、意識を失ってしまう、呼びかけに応じないといった意識障害が現れることもあります。出血の量や場所によっては、命に関わる危険な状態となることもあります。そのため、迅速な診断と適切な治療が非常に重要です。 くも膜下出血の主な原因は、脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂することです。その他にも、脳動静脈奇形や頭部外傷などが原因となる場合もあります。くも膜下出血は、突然発症し、前兆がない場合が多い病気です。そのため、日頃からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、血圧を正常な範囲に保つなど、生活習慣に気を配ることが大切です。また、定期的な健康診断を受けることで、脳動脈瘤などの早期発見につながる可能性があります。もしも、家族が突然の激しい頭痛を訴えた場合は、すぐに救急車を呼ぶなど、一刻も早い対応が必要です。ためらわずに医療機関に連絡しましょう。
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慢性期における介護と介助の理解

慢性期とは、病気の経過において、症状が安定し比較的長い期間続く時期を指します。急性期に見られるような急激な病状の変化はなく、すぐに命に関わるような危険性はありません。しかし、病状が安定しているとはいえ、継続的な医療や日常生活における様々なケアが必要となります。 慢性期の期間は、病気の種類や個人の状態によって大きく異なります。数ヶ月で終わる場合もあれば、数年、あるいは生涯にわたって続く場合もあります。慢性期においては、病気そのものの治療に加えて、生活の質を維持・向上させるためのケアが非常に重要になります。具体的には、身体的な機能の維持・改善はもちろんのこと、精神的なケアや社会的なつながりを維持することも大切です。 そのため、医療の専門家だけでなく、介護福祉士や家族など、様々な人が関わって包括的なケアを提供することが求められます。医師は病状の管理や治療方針の決定を行い、看護師は医療的な処置や日常生活の支援を行います。介護福祉士は、食事や入浴、排泄などの日常生活の介助に加え、身体機能の維持・向上のためのリハビリテーションを支援します。家族は、精神的な支えとなるだけでなく、日常生活の介助や医療機関との連絡調整など、様々な役割を担います。 慢性期は長期にわたるため、患者さん本人だけでなく、家族の身体的・精神的、そして経済的な負担も大きくなる可能性があります。介護のために仕事を辞めざるを得ない、介護費用がかさんでしまうなど、様々な問題が生じる可能性があります。そのため、適切な支援体制を構築し、介護休暇制度の利用や介護サービスの活用などを通して、家族の負担軽減を図ることも重要です。患者さん本人、家族、そして医療・介護の関係者が互いに協力し合い、より良い生活を送れるように努めることが、慢性期におけるケアで最も大切な要素となります。
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看護の真髄:健康を支える献身

看護とは、人々が健やかに毎日を暮らせるように、心と体の両面から支える、大切な仕事です。病気や怪我で苦しんでいる人だけでなく、健康な人に対しても、健康を保ち、より良くしていくための手助けを行います。 病気や怪我をした人に対しては、医師の指示に基づいた治療の手助けはもちろんのこと、痛みや不安をやわらげるよう努めます。栄養状態の確認や清潔保持、快適な環境づくりなど、心身の負担を軽減するための様々な活動を行います。また、病気や怪我による体の動かしにくさや日常生活での支障を少なくするためのリハビリテーションの支援も行います。 健康な人に対しては、病気の予防や健康増進のための助言を行います。定期的な健康診断の受診を促したり、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠の大切さを伝え、健康的な生活を送るための知識を提供します。地域によっては、健康教室や相談会などを開催し、地域住民の健康管理を支える活動も行います。 看護は、単に病気を治すことだけではありません。その人らしい生活を送れるように、常に寄り添い、勇気づけることが看護の大切なところです。病気や怪我、加齢などによって、日常生活に不自由を感じている人に対しては、その人が持っている力を最大限に活かせるように支援し、自立した生活を送れるよう手助けを行います。 このように、看護とは、人々の生活の質を高め、人生を豊かにするお手伝いをすることです。人々の様々な状況に耳を傾け、思いやりを持って接することで、心からの安心感を提供できる、尊い役割を担っています。
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風土病:その土地ならではの病気

風土病とは、ある特定の地域や集団において、いつも見られる病気のことです。まるで、その土地の気候や風土に根付いている植物のように、特定の地域にのみ発生し続ける病気のことを指します。 風土病が発生する原因は様々ですが、多くの場合、その地域特有の環境や人々の暮らし方が深く関わっています。例えば、土壌に含まれる特定の物質が原因となることがあります。特定の地域では、地質の影響で土壌に特殊な物質が含まれている場合があり、その物質を長年摂取することで健康に影響を及ぼし、病気を引き起こすことがあります。また、その地域特有の食文化も原因の一つとして考えられます。特定の地域だけで食べられている食品や、調理方法に原因がある場合もあります。さらに、風土病の中には、感染症が原因となっているものもあります。衛生環境や医療体制が十分に整っていない地域では、感染症が蔓延しやすく、風土病として定着してしまうことがあります。 風土病は、その地域に住む人々にとっては、昔からあるありふれた病気であることが多く、特別な病気という認識は薄いかもしれません。しかし、他の地域から来た人にとっては、初めて遭遇する病気であるため、注意が必要です。旅行や移住などで初めてその地域を訪れる人は、事前にその地域の風土病について調べておくと良いでしょう。風土病の症状や予防方法を知っておくことで、健康を守ることができます。また、風土病の発生状況を把握することは、公衆衛生の向上にもつながります。風土病の原因を特定し、対策を講じることで、地域住民の健康を守り、より良い生活環境を築くことができるのです。
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脳血管障害:知っておきたい基礎知識

脳血管障害は、脳の血管に問題が生じ、脳の働きに支障をきたす病気の総称です。私たちの脳は、体全体の司令塔として、運動や感覚、言葉、思考など、あらゆる機能をコントロールしています。脳血管障害になると、手足の麻痺や言葉の障害、意識障害など、日常生活に大きな影響を与える様々な症状が現れます。 脳血管障害は、大きく分けて三つの種類に分けられます。まず一つ目は、脳梗塞です。脳梗塞は、脳の血管が詰まることで、血液の流れが止まり、脳細胞に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなることで起こります。血管が詰まる原因としては、動脈硬化や高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などが挙げられます。二つ目は、脳出血です。脳出血は、脳の血管が破れて出血し、周りの脳組織を圧迫することで起こります。高血圧が主な原因と考えられており、冬場や激しい運動時など血圧が急激に上昇する際に起こりやすいと言われています。三つ目は、くも膜下出血です。くも膜下出血は、脳の表面にある血管が破れて出血し、くも膜と軟膜と呼ばれる脳を覆う膜の間に血液が溜まる病気です。突然の激しい頭痛とともに発症することが多く、意識を失う場合もあります。 脳血管障害は、命に関わる危険性が高いだけでなく、後遺症が残る可能性も高い病気です。そのため、早期発見と早期治療が何よりも重要です。また、日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、禁煙など、生活習慣の改善を心がけることで、予防に繋げることができます。少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
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脳血管発作(脳卒中)について

脳血管発作、いわゆる脳卒中は、脳の血管に何らかの問題が生じ、脳の働きが損なわれてしまう病気です。突然症状が現れることが多く、後遺症が残る可能性も高い、深刻な病気です。大きく分けて三つの種類があります。一つ目は、脳の血管が詰まってしまう脳梗塞です。二つ目は、脳の血管が破れてしまう脳出血です。そして三つ目は、一時的に脳の血管が詰まる一過性脳虚血発作です。 脳梗塞は、血栓と呼ばれる血の塊によって脳の血管が詰まることで起こります。動脈硬化などが原因で血管が狭くなったり、心臓などから血の塊が流れてきて血管を塞いだりすることで発症します。脳出血は、高血圧などが原因で脳の血管が破れ、出血することで起こります。出血した血液が周囲の脳組織を圧迫し、損傷を与えます。一過性脳虚血発作は、脳梗塞と似た症状が現れますが、通常は24時間以内に症状が消失します。しかし、脳梗塞の前兆である可能性も高く、注意が必要です。 これらの種類によって症状や治療法、後遺症が異なってきます。例えば、脳梗塞では、詰まった血管の場所によって、手足の麻痺やしびれ、言葉の障害、意識障害など、様々な症状が現れます。脳出血では、激しい頭痛とともに、意識障害や手足の麻痺、嘔吐などの症状が現れることが多いです。一過性脳虚血発作も、手足の麻痺やしびれ、言葉の障害などが一時的に現れます。 脳卒中は、以前は高齢者に多い病気と考えられていましたが、近頃は食生活の変化や仕事の重圧の増加などによって、若い世代にも発症する例が増えています。年齢に関わらず、脳卒中の正しい知識を身につけ、予防に努めることが重要です。また、早期発見、早期治療によって、その後の経過を大きく変えることができます。少しでも異変を感じたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
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脳梗塞のリハビリテーション:介護と介助

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで起こる病気です。血管が詰まると、血液が脳に届かなくなり、脳の細胞が傷ついてしまいます。このため、様々な症状が現れます。詰まり方には大きく分けて三つの種類があります。 一つ目は、ラクナ梗塞と呼ばれるものです。これは、脳の奥深くにある細い血管が、動脈硬化によって徐々に狭くなり、最終的に完全に詰まってしまうことで起こります。動脈硬化は、血管の壁が厚く硬くなることで、加齢とともに誰にでも起こりうる変化です。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病があると、動脈硬化が進行しやすくなります。 二つ目は、アテローム血栓性脳梗塞です。これは、コレステロールなどが血管の壁にたまり、血管の内側が狭くなっていくことで起こります。狭くなった部分で血液の流れが滞り、血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が血管を完全に塞いでしまうと、脳梗塞を発症します。こちらも、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が危険因子となります。 三つ目は、心原性脳塞栓症です。心臓の中にできた血栓が血液の流れに乗って脳の血管まで運ばれ、血管を詰まらせることで起こります。心臓に病気があると、心臓の中に血栓ができやすくなります。特に、心房細動という不整脈は、心原性脳塞栓症の大きな原因となります。 脳梗塞の症状は、詰まった血管の位置や大きさによって様々です。片側の腕や足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、言葉が出てこない、視野が狭くなる、ものが二重に見える、激しいめまいやふらつきなどがよく見られる症状です。これらの症状が突然現れたら、すぐに病院を受診することが大切です。早期に発見し、適切な治療を行うことで、後遺症を残さずに回復できる可能性が高まります。日頃からバランスの良い食事、適度な運動、禁煙などを心がけ、生活習慣病の予防に努めることも重要です。
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高齢者の虫垂炎に注意!

虫垂炎とは、大腸の始まりにあたる盲腸から出ている、虫垂という細い管に炎症が起きる病気です。この虫垂は、長さ数センチメートルほどの指のような形をしており、免疫に関わっているのではないかと言われています。しかし、もし虫垂がなくても、健康上は特に問題はありません。 虫垂炎は、虫垂の入り口に便のかたまりや細菌などが詰まることで起こります。虫垂の中に詰まったものが炎症を起こし、腫れて膿が溜まります。細菌の感染によって炎症がさらに進むと、虫垂が破裂してしまう危険性もあります。 虫垂炎になると、一般的にはお腹が痛くなり、吐き気や熱が出ることが多いです。痛みは、はじめはおへそのあたりなど、ぼんやりとした場所に感じますが、徐々に右下腹部に移り、痛みが強くなります。熱はそれほど高くなく、微熱程度の場合もあります。また、食欲がなくなるなどの症状も見られます。 しかし、お年寄りの場合は、これらの典型的な症状が現れにくいため、注意が必要です。お腹の痛みや吐き気、熱などの症状がはっきりと出ない場合があり、軽いお腹の違和感や食欲不振といった症状ですませてしまうこともあります。そのため、お年寄りご本人やご家族の方は、いつもと違うお腹の不調を感じたら、すぐに病院で診てもらうことが大切です。 自己判断で様子を見ていると、虫垂が破裂し、腹膜炎といった重い合併症を引き起こす可能性があります。腹膜炎になると、命に関わることもあります。虫垂炎は、早期発見と早期治療が非常に大切です。少しでもおかしいと感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。