残存能力

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介護保険

自立支援:その人らしさを尊重したケア

自立支援とは、加齢や病気、事故などによって体が不自由になったり、心身に障害のある方々が、持てる能力を最大限に発揮し、自分らしい生活を送れるように支える取り組みのことです。その人らしい生き方、暮らし方を尊重し、その人が望む生活の実現を目標とします。 自立支援の目的は、ただ単に身の回りの世話をすることではありません。できない部分を補うだけでなく、残された機能を活かし、できることを増やし、生活の質を高めることを目指します。例えば、食事や入浴、着替えといった日常生活動作において、一人で行うことが難しい場合でも、道具を使ったり、周囲の人の手助けを借りながら、できる範囲で自分で行うよう促します。 自立支援は、身体的な援助だけでなく、精神的な支援も重要です。日常生活を送る中で、喜びや生きがいを感じられるよう、趣味や社会参加の機会を提供することも大切です。また、本人の意思決定を尊重し、自分で選択し、行動できるよう支援することで、自信と尊厳を育み、より豊かな生活を送れるようにします。 介護や介助を行う際には、その人の性格や生活習慣、価値観などを理解し、個々の状況に合わせた支援を提供する必要があります。また、家族や地域社会との連携も重要です。周りの人々と協力しながら、その人が住み慣れた地域で、安心して自分らしい生活を続けられるように支えていくことが、自立支援の大切な役割です。
介護保険

残存能力を活かした介護

人は誰でも年を重ねるにつれて、身体機能の衰えや病気などを経験するものです。事故によって後遺症が残る場合もあります。こうした様々な要因によって、以前のようにスムーズに動けなくなったり、覚えたりすることが難しくなるなど、生活に不自由が生じるケースも少なくありません。しかし、たとえ何らかの障害があっても、その人の内側には必ず、まだ活かせる力や可能性が残されています。これこそが「残存能力」と呼ばれるものです。 残存能力は人それぞれ異なり、十人十色です。ある人は、手足の細かい動きは難しくても、腕全体を使った力仕事は得意かもしれません。また、記憶力は低下していても、昔の出来事を鮮明に覚えている人もいるでしょう。計算は苦手でも、周りの人の気持ちを察する能力に長けている人もいます。このように、残存能力は身体的なものだけでなく、思考力や判断力、コミュニケーション能力、芸術的な才能など、多岐にわたります。大切なのは、その人がどのような能力をどれくらい持っているのかを丁寧に見て、理解することです。 残存能力に目を向けることは、その人自身の尊厳を守ることに繋がります。「何もできない」と決めつけるのではなく、「何ができて、何が難しいのか」を正しく把握することで、その人に合った適切な支援をすることができます。そして、残存能力を活かすことで、その人は「できる喜び」や「役に立つ喜び」を感じ、自信を取り戻し、より意欲的に生活を送ることができるようになります。周囲の人も、その人の活躍を見ることで喜びや励ましを得て、より良い関係を築くことができるでしょう。残存能力を最大限に引き出し、活かしていくことは、その人にとってだけでなく、周りの人にとっても、社会全体にとっても大きな意味を持つのです。
食事の介助

全介助とは?その必要性と注意点

全介助とは、日常生活における基本的な動作をご自身で行うことが難しい方に対して、介助者がすべてを代行することを指します。具体的には、食事、排泄、入浴、更衣といった行為が挙げられます。これらの行為は、健康な状態であれば誰しもが自然に行えるものですが、加齢や病気、怪我などによって身体機能が低下すると、一人で行うことが困難になる場合があります。このような場合に、介助者がこれらの行為をすべて代行することで、その方の日常生活を支えるのです。つまり、ご本人の力ではなく、介助者の力によって日常生活が成り立っている状態と言えるでしょう。 全介助を必要とする方の状態は様々です。例えば、寝たきりの方や、重度の認知症の方、重い障害のある方などが挙げられます。寝たきりの方の場合、身体を動かすことが困難なため、食事や排泄、入浴、更衣といったすべての行為において介助が必要です。重度の認知症の方は、認知機能の低下により、これらの行為をどのように行うのかを忘れてしまったり、自分で行うことができなくなったりする場合があります。また、重い障害のある方も、身体機能の制限により、日常生活の多くの場面で介助を必要とします。 全介助は、身体的な介助だけでなく、精神的な支えとしての役割も担っています。常に介助が必要な状態は、ご本人にとって大きな不安やストレスを抱える状況です。介助者は、ご本人の気持ちに寄り添い、安心感を与えることで、精神的な支えとなることが重要です。しかし、全介助には注意すべき点もあります。過剰な介助は、ご本人の残存機能の低下を招く可能性があります。できることはご自身で行ってもらうように促し、自立を支援することも介助者の大切な役割です。また、常に介助される状況は、ご本人のプライバシーや尊厳を損なうリスクも伴います。介助者は、ご本人の尊厳を尊重し、丁寧で思いやりのある介助を心がける必要があります。