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残存機能を活かした介護
人は病気や年を重ねること、事故などによって身体の機能の一部が思うようにいかなくなることがあります。しかし、そのような状態でも、まだできること、残っている力があります。これが残存機能です。残存機能は、ただ単に「失われていない機能」という意味ではありません。その人にとって「できること」「活かせる力」であり、生活の喜びや充実感につながる大切なものと考えられています。
例えば、手や足に麻痺が残ってしまった場合を考えてみましょう。たとえ自由に動かせなくても、指先を少しでも動かすことができれば、工夫次第でできることが広がります。食事をする、字を書く、絵を描くといった日常の動作も、専用の道具を使うことで自ら行うことができるようになります。また、足腰が弱くなったとしても、杖を使って歩いたり、車椅子を利用して外出したりすることで、行動範囲を広げ、人との繋がりを保つことができます。家に閉じこもりがちになるのではなく、社会との関わりを続けることで、心も豊かになり、生活の質の向上に繋がります。
このように、残存機能は一人ひとり異なります。その人を取り巻く環境や、どのような暮らしを送りたいかによっても、活かし方は様々です。大切なのは、残存機能を「できないこと」ではなく「できること」として前向きに捉えることです。そして、その力を最大限に活かせるように、周りの人が適切な支えをすることが重要です。周りの人の温かい気持ちと思いやりのある行動が、その人の人生をより豊かで幸せなものにする力となります。