差別

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介護とスティグマを考える

『烙印』を意味する言葉であるスティグマとは、ある特定の特徴を持った人たちに対して、社会が否定的なレッテルを貼り、差別や偏見の対象とすることを指します。これは、まるで熱した鉄で肌に焼印を押すように、その人の存在そのものを否定する行為です。遠い昔、古代ギリシャでは、奴隷や罪を犯した人に実際に焼印を押していました。現代社会では、目には見えない烙印として、様々な場面でスティグマが存在しています。 例えば、病気、障がい、貧困、民族、宗教、性的指向など、様々な属性がスティグマの対象となり得ます。心の病気を抱えている人に対して、「怠けているだけだ」「気持ちの問題だ」といった偏見の目が向けられることや、身体に障がいのある人に対して、健常者と同じように接しない、仕事を与えないといった差別もスティグマの一種です。また、生活が苦しい人に対して、「努力が足りないからだ」「自己責任だ」と決めつけることや、特定の民族や宗教、性的指向を持つ人々に対して、心無い言葉を浴びせたり、排除しようとすることもスティグマに該当します。 スティグマは、単なる偏見に留まらず、差別的な言動や社会からの排除、そして人権侵害に繋がる深刻な問題です。スティグマに晒された人たちは、自己肯定感を傷つけられ、「自分は価値のない人間だ」と思い込んでしまうかもしれません。社会参加への意欲を失い、誰にも相談できず、孤立してしまうこともあります。スティグマは、社会全体の健康と幸せを脅かす、私たちが真剣に向き合わなければならない社会問題と言えるでしょう。 スティグマを解消するためには、まずスティグマそのものについて正しく理解することが大切です。そして、偏見や差別をなくすための教育や啓発活動を進め、誰もが安心して暮らせる社会を作っていく必要があります。一人ひとりが、他者を尊重し、思いやりの心を持って接することで、スティグマのない社会の実現に近づくことができるはずです。
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社会的不利とは?:その意味と影響

社会的不利とは、障害を理由に、日常生活を送る上で様々な不自由が生じている状態を指します。多くの人々が当たり前に享受している暮らしの質、社会への参加、人々からの評価といった点で、不利益を被っている状態です。これは、お金がないといった経済的な困窮だけを意味するのではなく、教育を受ける機会、仕事を得る機会、医療を受ける機会、住まいを確保する機会、文化活動に親しむ機会、情報を得る機会など、暮らしに関わる様々な面で不自由な状態におかれていることを幅広く捉えた考え方です。 具体的に説明すると、教育の面では、学校に通うための合理的配慮が受けられなかったり、適切な支援を受けられないことで、学習に遅れが出てしまうことがあります。仕事の面では、障害を理由に雇用を断られたり、希望する仕事に就けないといったことが起こります。医療の面では、必要な医療サービスを受けにくかったり、十分な情報提供が得られない場合があります。住まいの面では、バリアフリーの住宅が不足していたり、入居を拒否されるなどの問題があります。文化活動への参加という面では、美術館や劇場などの施設にアクセスしづらかったり、イベント情報が得にくいことがあります。情報アクセスという面では、インターネットや公共サービスの情報が分かりにくい形式で提供され、必要な情報を得ることが困難な場合があります。 このように、社会的不利は、人としての尊厳を傷つけ、社会に参加する機会を奪う重大な問題です。社会的不利の実態を正しく理解し、一人ひとりの状況に合わせた適切な対応策を考え、実行していくことが社会全体の課題として重要です。