尊厳

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その他

大切にしたい、自分で決める力

人は誰でも、生まれたときから、自分の人生をどう生きるか、どんな風に日々を過ごすか、自分で決める権利を持っています。この権利は「自己決定権」と呼ばれ、私たちが人間らしく生きるための大切な土台となっています。毎朝、何を食べるか、どんな服を着るかといった日常のささいなことから、結婚するかどうか、どんな仕事に就くか、どこに住むかといった人生の大きな転換期まで、私たちは常に様々な選択を迫られています。そして、その一つ一つを自分の意思で決めていくことができます。 朝、温かい味噌汁を飲むか、それともパンを食べるか。白いシャツを着るか、色鮮やかな服を選ぶか。こうした日常の小さな選択も、積み重なれば私たちの人生を形作っていく大切な要素です。さらに、人生のパートナーを選ぶ、自分の能力を生かせる仕事を見つける、落ち着いた場所で暮らす、あるいは刺激的な都会で生活するなど、人生における大きな選択は、その後の人生を大きく左右します。これらの選択は、時に周囲の人々からの助言や影響を受けることもありますが、最終的に決めるのは自分自身です。そして、その選択によって得られる結果についても、自分自身が責任を負うことになります。 周囲の人々が望むような生き方ではなく、自分自身が心から納得できる選択をすることで、私たちはより大きな満足感や幸福感を得ることができるでしょう。たとえその選択が、家族や友人にとって理解しがたいものであったとしても、自分自身の人生なのですから、自分の意思を尊重することが大切です。周りの意見に流されて自分の望まない選択をしてしまうと、後で後悔することになりかねません。自分の選択に責任を持ち、自分らしい人生を築いていくことこそが、私たちにとって真の幸せにつながる道なのです。
その他

自分で決める喜び:介護における自己決定

人は誰でも、生まれながらにして、自分の人生をどのように歩むか、どのような日々を送るかを自分で決める権利を持っています。これは、法律で守られた基本的な人権の一つであり、「自己決定権」と呼ばれています。毎日の食事の内容や着る服といった小さなことから、住む場所、仕事、結婚といった人生における大きな転換期における選択まで、どのような場面でも、自分の意思に基づいて決める自由が保障されているのです。 誰かに無理強いされたり、一方的に決めつけられたりすることなく、自分の考えや気持ちを尊重してもらい、自分らしい選択をすることができる。これが自己決定権の大切な意味です。 介護が必要な状態になったとしても、この自己決定権は変わることはありません。むしろ、日常生活の様々な場面で他者の助けが必要になるからこそ、その人らしく生きるためにも、自己決定の重要性はより一層高まります。たとえば、どのような介助を受けたいか、どのようなサービスを利用したいか、自宅で生活を続けたいか、施設に入りたいかなど、介護に関わる様々な選択においても、本人の意思が尊重されなければなりません。 介護をする家族や支援者は、本人の思いや希望を丁寧に聞き取り、その人が自分らしい生活を送ることができるよう、寄り添うことが大切です。たとえ言葉で意思表示をすることが難しくなったとしても、表情や仕草、普段の生活の様子などから、その人の気持ちを理解しようと努め、可能な限り本人の意思を尊重した支援を行うことが求められます。高齢になり、あるいは病気や障害によって体が不自由になっても、その人らしく尊厳をもって生きることができるよう、私たち一人ひとりが、自己決定権の大切さを理解し、尊重していくことが重要です。
その他

介護における尊厳の保持

人は皆、他者から大切にされ、敬意を払われたいと願っています。これは年齢や置かれた状況に関わらず、誰もが持つ普遍的な思いです。特に、病気や怪我、老いなどによって、日常生活に支えが必要になった方々は、様々な場面で自らの尊厳が傷つけられる危険にさらされています。例えば、衣服の着脱やトイレの介助といった場面では、どうしても他者の助けが必要となり、身体を露出したり、プライベートな部分に触れられたりする場面も出てきます。このような状況下では、羞恥心や不安感を感じやすく、自尊心が傷つけられる可能性も高くなります。 だからこそ、介護を提供する私たちは、常に相手の尊厳を守ることを念頭に置いて行動しなければなりません。相手の気持ちを理解し、プライバシーを尊重しながら、丁寧で思いやりのある対応を心がけることが重要です。具体的には、身体に触れる際は必ず声をかけ、同意を得てから行う、介助中は必要以上に身体を露出させない、本人のペースに合わせてゆっくりと丁寧に介助を行う、といった配慮が大切です。また、利用者の方のこれまでの生活や価値観、人格を尊重し、一人の人間として対等な立場で接することも欠かせません。たとえ言葉での意思疎通が難しい場合でも、表情や仕草をよく観察し、その方の気持ちを読み取る努力を続けましょう。 尊厳を大切にした介護は、利用者の方の心の安らぎと生活の質の向上に大きく貢献します。安心して日常生活を送れるようになり、笑顔が増えたり、意欲的に生活に取り組むようになったりする方もいらっしゃいます。さらに、介護を提供する側にとっても、仕事へのやりがいや充実感につながるでしょう。利用者の方から信頼され、感謝の言葉を伝えられることで、仕事へのモチベーションを高めることができます。尊厳を守る介護は、利用者の方と介護を提供する側、双方にとって良い結果をもたらす、なくてはならないものです。私たちはこれからも、一人ひとりの尊厳を尊重した温かい介護を提供していく必要があります。
介護保険

機能的アプローチで尊厳を保つ介護

人の持つ力を最大限に活かし、生活のしやすさを高めるための支えとなる考え方、それが機能的アプローチです。これは、年を重ねたり病気になったりすることで弱くなった部分を良くするだけでなく、残っている力をうまく使いながら、その人らしい暮らしを送れるように手助けすることを目指します。 例えば、足腰が弱くなった方がいたとします。従来の考え方では、車椅子での生活を勧めるかもしれません。しかし、機能的アプローチでは、「少しでも自分の足で歩きたい」という本人の思いを尊重します。残っている筋力やバランス感覚を評価し、杖や歩行器を使う、自宅に手すりを取り付けるなどの工夫を凝らしながら、可能な限り自分の足で歩けるように支援します。 また、機能的アプローチは身体の世話をするだけにとどまりません。その人の気持ちを汲み取り、自分で決めて行動できるように支えることも大切です。例えば、食事の内容や着る服、日中の活動など、本人が自分で選べるように選択肢を提供し、決定を尊重します。 人は誰でも、自分の力で暮らし、自分らしくありたいと願っています。機能的アプローチは、まさにこの願いを叶えるための支え方です。「自立支援」という考え方に基づき、その人が持っている力を引き出し、暮らしの喜びや生きがいを感じられるように支えていくことが重要です。そのためには、その人の思いや生活の背景を丁寧に理解し、その人に合った支援を考えていく必要があります。そして、周囲の人々が協力し合い、温かい目で見守りながら、共に歩んでいくことが大切です。
介護施設

身体拘束を考える:尊厳と安全のバランス

身体拘束とは、高齢者や障がいのある方の自由な行動を制限することを指します。具体的には、ベッドに体を縛り付けたり、車いすに固定したり、部屋に閉じ込めたりするといった行為が挙げられます。これらの行為は、本人の意思に反して行われるものであり、たとえ一時的なものであっても身体拘束に該当します。 身体拘束は、認知症の方が徘徊したり転倒したりするのを防ぐため、あるいは医療行為の妨げにならないようにするために実施されることが多いです。例えば、点滴のチューブを抜かないように手足をベッドに縛ったり、検査中に急に立ち上がって転倒しないように体を固定したりする場合が考えられます。また、他者への危害を防ぐという目的で行われることもあります。例えば、興奮状態にある方が他の人に危害を加えないように、一時的に身体を抑制する場合などです。 しかし、身体拘束は身体的、精神的な負担を伴います。長時間の拘束は、床ずれや筋肉の萎縮、関節の拘縮などを引き起こす可能性があります。また、閉じ込められたり、自由に動けなかったりすることで、精神的な苦痛や不安感、抑うつ状態に陥ることもあります。さらに、拘束によって自尊心が傷つけられ、生活の質が低下する恐れもあります。 そのため、身体拘束は最終手段として考えられるべきです。身体拘束を行う前に、まずは拘束以外の方法を検討することが重要です。例えば、徘徊する方の不安を取り除く声かけや、転倒を予防するための環境整備、一人ひとりの状態に合わせたケアの提供などが挙げられます。どうしても身体拘束が必要な場合は、その必要性や方法、期間について本人や家族に丁寧に説明し、同意を得る必要があります。また、拘束による身体への影響や精神的な変化を注意深く観察し、定期的に拘束の必要性を再評価することも大切です。常に利用者の尊厳を念頭に置き、より良いケアを目指していく必要があります。
終活について

穏やかな最期を迎えるために:看取りケアの理解

看取りとは、人生の最終段階にある方が、穏やかに最期を迎えることができるように支えることです。住み慣れた家や病院、施設などで、その人らしく過ごせるように、身体の痛みや心の不安を和らげることを目指します。 延命のための治療は行わず、自然な経過に寄り添い、残された時間を大切に過ごせるように支援します。 近年、医療の進歩によって寿命が延び、長く生きられるようになりました。しかし同時に、人生の最期をどのように迎えたいのかを考える機会も増えました。望まない延命治療ではなく、自分らしい最期を迎えたいと願う人が増えているのです。 そのため、本人の意思を尊重し、安らかな最期を迎えられるよう支援する看取りの考え方が注目されています。 看取りは、ただ単に医療行為を行うことではありません。身体のケアだけでなく、心のケアも大切です。 不安や苦痛を抱える本人だけでなく、家族の気持ちにも寄り添い、支えていくことが重要です。看取りは、人生の最終段階におけるその人らしい生き方を支える、温かい心遣いとも言えます。 具体的には、痛みや苦しさを取り除く医療の提供、精神的な支え、日常生活の援助などを行います。 食事や排泄、清潔の保持といった日常生活の様々な場面で、本人の状態に合わせてきめ細やかな支援が必要です。また、家族への精神的な支えや、看取りに関する知識の提供、手続きのサポートなども重要な役割となります。 看取りは、医療関係者だけでなく、家族や地域社会全体で支えるものです。 最期までその人らしく生きられるように、周りの人が協力し、温かい気持ちで見守ることが大切です。看取りを通して、命の尊厳や人生の価値について改めて考える機会となるでしょう。