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飲み込みづらさへの理解を深める
食べものや飲みものを口から胃に送ることを、飲み込みといいます。飲み込みは、口から食道、そして胃へと食べものや飲みものを運ぶ一連の複雑な過程です。この過程がうまくいかないと、飲み込みが難しくなる、つまり嚥下(えんげ)困難という状態になります。
私たちは普段、意識せずに飲み込んでいますが、実は舌、口蓋、咽頭、喉頭など、様々な器官が協調して働いています。食べものや飲みものを口に入れた後、舌を使って奥に送り込み、食塊と呼ばれるまとまった形にします。その後、食塊は咽頭を通って食道へと送られます。この時、喉頭蓋という部分が気管の入り口を塞ぎ、食べものや飲みものが気管に入らないようにしています。この複雑な一連の動作が、わずか数秒間で行われています。
嚥下困難になると、食べものや飲みものがスムーズに飲み込めなかったり、むせたりすることがあります。ひどい場合には、飲み込んだものが気管に入り誤嚥し、肺炎などの深刻な病気を引き起こす危険性もあります。高齢になると、筋肉の衰えや神経の伝達機能の低下により、嚥下困難になりやすいです。また、脳卒中などの病気の後遺症として、嚥下機能に障害が残る場合もあります。さらに、発達障害を持つお子さんにも、嚥下困難が見られることがあります。
飲み込みに少しでも不安を感じたら、早めに耳鼻咽喉科、口腔外科、リハビリテーション科などの専門医に相談することが大切です。専門医は、飲み込みの様子を観察したり、検査を行ったりして、適切な診断と対応をしてくれます。日常生活で、食べこぼしが増えた、食事に時間がかかるようになった、むせるようになったなどの変化に気づいたら、見逃さずに対応しましょう。適切な対応をすることで、より安全で快適な食生活を送ることが可能になります。