周辺症状

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認知症の遊離型:自信と意欲の喪失

初期認知症において、『遊離型』と呼ばれる特徴を持つ方々が見られます。これは、認知症の進行に伴い現れる様々な心理症状、いわゆる行動心理症状(BPSD)の一つです。遊離型の特徴は、現実から逃避しようとする心の動きにあり、これまでは見られなかった変化として現れます。 以前は活動的で、趣味や人付き合いを楽しんでいた方が、急に何事にも興味を失い、無気力な状態になることがあります。好きなことや得意だったことでさえ、取り組もうとせず、誘いを断るようになることもあります。このような変化は、周囲の人々にとって、病気の症状として理解することが難しく、対応に困ってしまうことも少なくありません。家族や友人は、「なぜ急に変わってしまったのか」「どう接すればいいのか」と戸惑い、いらだちや不安を感じてしまうかもしれません。 遊離型の特徴が現れる背景には、認知機能の低下が大きく関わっています。記憶力や判断力が少しずつ衰えていく中で、自分自身への自信を失い、物事への意欲が低下していくと考えられています。また、住み慣れた場所からの転居や、親しい人との別れといった環境の変化や、精神的な負担、ストレスなども、遊離型の症状を引き起こす要因となりえます。 初期認知症における遊離型への早期発見と適切なケアは非常に重要です。本人が置かれている状況を理解し、穏やかな気持ちで過ごせるように支えることが大切です。焦らせたり、無理強いしたりするのではなく、以前好きだったことや得意だったことを、負担にならない範囲で一緒に楽しむなど、穏やかに心に寄り添うことが重要です。周囲の理解と支えが、患者さんの生活の質を維持する上で大きな役割を果たします。
介護職

認知症の周辺症状を知る

認知症の中核症状は、脳の機能が衰えることで直接的に現れる症状です。物事を覚えられない記憶障害や、考えをまとめたり判断したりする力の衰えである思考力の低下などが、中核症状の代表的な例です。 これらは、脳の神経細胞がダメージを受けることで起こります。 一方、周辺症状は、中核症状とは異なり、脳の機能低下に加えて、周りの環境や人間関係、日々の暮らし方などが複雑に関係して現れる二次的な症状です。 中核症状が直接的な原因であるのに対し、周辺症状は間接的な原因によって引き起こされます。 例えば、いつもと違う場所に引っ越したとします。すると、認知症の方は慣れない環境に戸惑い、不安な気持ちになることがあります。この不安な気持ちが、家から出て行ってしまう、いわゆる徘徊につながるケースがあります。 また、毎日決まった時間に食事をしていた人が、急に食事の時間が変わると、混乱して怒りっぽくなることもあります。これは、生活のリズムが崩れることで、精神的なバランスが不安定になることが原因と考えられます。 このように、周辺症状は、中核症状のように脳の機能低下だけが原因ではなく、様々な要因が重なって現れます。そのため、症状だけを見るのではなく、なぜそのような行動や感情が生まれたのか、その背景にある理由を丁寧に探ることが大切です。 周りの人とのかかわり方や、生活環境を見直すことで、症状が落ち着き、穏やかに過ごせるようになることも少なくありません。周辺症状への適切な対応は、認知症の方の生活の質を向上させる上で、非常に重要な要素と言えるでしょう。