中核症状

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医療

実行機能障害:認知症を知る

実行機能障害とは、ものごとを順序立てて計画し、実行する能力が損なわれた状態を指します。まるで、頭の中で描いた設計図通りに体を動かせない、あるいは行動の順番が分からなくなるようなものです。これは、認知症の中核症状の一つであり、日常生活に大きな影響を及ぼします。 例えば、料理をする場面を考えてみましょう。献立を考え、材料を買い出し、下ごしらえをし、調理し、盛り付け、そして後片付けまで、いくつもの手順があります。実行機能障害があると、これらの手順を適切な順番で実行することが困難になります。献立を立てたのに材料を買い忘れたり、野菜を切る前に鍋に火をかけてしまったり、あるいは、作った料理を盛り付ける前に食べてしまったりといったことが起こり得ます。 また、行動を適切に抑制することも難しくなります。例えば、スーパーのレジで順番を待てずに割り込んでしまったり、他人の持ち物に無断で触れてしまったりするといった行動が見られることもあります。このような行動は、社会生活を送る上で大きな支障となる可能性があります。 実行機能障害は、脳の前頭連合野と呼ばれる領域の損傷によって引き起こされます。この領域は、思考や判断、意思決定といった高次の脳機能をつかさどる司令塔のような役割を果たしています。そのため、この領域が損傷を受けると、実行機能が低下し、日常生活での様々な場面で支障が出てきます。 実行機能障害は認知症の進行とともに悪化する傾向があります。そのため、早期に発見し、適切な支援を行うことが重要です。周囲の理解と適切なサポートがあれば、実行機能障害を抱える人々がより穏やかに、そして自分らしく生活を送る助けとなります。
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失見当識:認知症の中核症状を知る

失見当識とは、認知症の中核症状の一つです。これは、時間、場所、人物など、自分が置かれている状況を正しく認識できなくなる状態を指します。 例えば、「今日は何月何日か」「ここはどこなのか」「目の前にいる人は誰なのか」といった、ごく当たり前の情報が分からなくなります。症状が進むと、「自分は一体誰なのか」という、自身の存在さえも認識できなくなることもあります。この状態は、見当識障害とも呼ばれ、認知症の進行と共に悪化する傾向があります。 初期段階では、日付や曜日が曖昧になる程度の軽い症状が見られます。例えば、今日が何曜日か分からなかったり、日付を一日二日間違えたりするといったことです。しかし、病状が進行すると、自宅に居ながらにして「ここは見知らぬ場所だ」と感じて強い不安や混乱に陥ったり、長年連れ添った家族の顔を見ても誰だか分からず、他人と勘違いして拒絶するといった行動が見られるようになります。 このような症状は、日常生活に大きな支障をきたします。一人で外出することが困難になったり、食事や着替えといった基本的な動作でさえ一人では行えなくなることもあります。また、介護する家族にとっても、常に見守っていなければならない、何度も同じ説明を繰り返さなければならないなど、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。 したがって、失見当識について正しく理解し、状況に応じた適切な対応策を講じることが、本人にとっても家族にとっても非常に重要になります。焦ったり叱ったりするのではなく、穏やかに接し、安心できる環境を整えることが大切です。
医療

中核症状:認知症の基礎知識

中核症状とは、認知症の中心となる症状です。もの忘れのように、表面に見える症状だけではありません。脳の萎縮や損傷によって、さまざまな認知機能の衰えが生じ、日常生活に大きな影響を及ぼす状態を指します。 代表的な症状の一つとして、記憶障害が挙げられます。昨日の夕食を思い出せない、新しく覚えた人の名前をすぐに忘れてしまう、といった短期記憶の障害がよく見られます。また、昔の出来事を思い出せないといった長期記憶の障害も現れることがあります。 理解力の低下も、中核症状の特徴です。周りの人が話す内容が理解できなかったり、状況を把握することが難しくなったりします。例えば、テレビのニュースの内容が理解できない、会話についていけない、といったことが起こります。 さらに、判断力の低下も深刻な問題です。適切な判断ができなくなるため、一人で買い物に行ったり、お金の管理をしたりすることが難しくなります。状況に応じて適切な行動をとることができなくなり、日常生活でのさまざまな場面で支援が必要になります。 これらの認知機能の低下は、脳の神経細胞の損傷が原因です。神経細胞の情報伝達がうまくいかなくなることで、記憶や理解、判断といった機能が正しく働かなくなります。中核症状は、病気の進行とともに悪化していく傾向があります。早期に適切な診断を受け、必要なケアを受けることが進行を遅らせ、より良い生活を送るために重要です。 中核症状への対応は、ご本人にとって大きな負担となります。周囲の理解と適切な支援が不可欠です。焦らせたり、叱ったりするのではなく、穏やかに接し、ご本人のペースに合わせた支援を心がけましょう。
介護職

認知症のBPSDについて

認知症によって起こる行動や心理面の変化は、専門用語で「BPSD」と呼ばれています。これは、「行動及び心理症状」のそれぞれの単語の頭文字をとったものです。BPSDは、認知症の中核症状である記憶の障害や、自分がどこにいるのか、今がいつなのかが分からなくなる見当識の障害とは異なり、周囲の環境や接し方によって大きく変化します。 BPSDには、様々な症状があります。例えば、落ち着きがなくなり、興奮したり、不安や焦燥感を訴えたりすることがあります。また、目的もなく歩き回る徘徊や、必要のないものを集めたり、食べられないものを口に入れたりするといった行動も見られることがあります。さらに、身だしなみに気を遣わなくなったり、 hallucinations といった症状が現れることもあります。 これらの症状は、認知症の方が置かれている環境や、周囲の人との関わり方に大きく影響を受けます。例えば、慣れ親しんだ環境から急に新しい場所に移ると、不安や混乱が生じやすくなります。また、周囲の人が忙しそうにしていると、認知症の方は寂しさや不安を感じ、落ち着かなくなることがあります。 BPSDへの適切な対応として、まずは認知症の方が安心して過ごせる環境を作ることが大切です。静かで落ち着いた雰囲気の中で、規則正しい生活リズムを維持することが症状の軽減に繋がります。また、認知症の方の気持ちに寄り添い、優しく声を掛けることも重要です。否定的な言葉遣いは避け、安心感を与えるように努めましょう。 BPSDは、介護する家族にとって大きな負担となることがあります。症状への理解を深め、適切な対応を学ぶことで、負担を軽減し、認知症の方とのより良い関係を築くことができるでしょう。地域包括支援センターや認知症疾患医療センターなどに相談することで、専門的な助言や支援を受けることもできます。