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ワーキングプアの実態と対策
「働く貧困層」とも呼ばれるワーキングプアとは、仕事をしているにもかかわらず、生活が苦しい状態にある人たちのことを指します。国の統計では、最低限度の暮らしに必要な衣食住やサービスを得るための収入の基準、つまり貧困線を下回る収入で働いている人をワーキングプアと定義しています。日本では、ひとり親で子どもを育てている世帯や、契約社員やパートタイマー、アルバイトなどの非正規雇用の働き手を中心に、ワーキングプアが増える傾向にあります。
彼らは、長時間働いているにもかかわらず、賃金が低いため、生活は苦しく、満足に食事をとったり、安心して暮らせる住まいを確保することも難しい状況に置かれています。十分な栄養がとれない食生活や、劣悪な住環境は、健康を損なう大きな原因となります。また、医療にかかる費用や子どもの教育にかかる費用を捻出することも難しく、将来への不安を抱えながら、ギリギリの生活を送っているのです。このような状況は、心身に大きな負担をかけ、健康問題を引き起こすリスクを高めます。さらに、経済的な理由から社会参加の機会が減り、社会的に孤立してしまう危険性もはらんでいます。
ワーキングプアの問題は、個人の責任や努力不足によるものではなく、社会全体の仕組みが原因となっていると考えるべきです。低賃金で不安定な雇用形態の増加や、子育てや介護など生活と両立しやすい働き方の選択肢が少ないこと、生活保護などの支援制度の利用のしづらさなど、様々な要因が複雑に絡み合い、ワーキングプアを生み出しています。この問題を解決するためには、社会全体で支え合う仕組みを構築し、誰もが安心して暮らせる社会を目指していく必要があるでしょう。