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ペースメーカー:心拍を守る小さな装置
私たちの心臓は、体中に血液を送り届けるという大切な役割を担っています。まるで休むことを知らない働き者のように、昼夜を問わず収縮と拡張を繰り返し、血液を循環させています。この規則正しい心臓の動き、つまり拍動は、心臓自身が生み出す電気信号によって調整されています。
心臓の右心房の上部に位置する洞房結節は、心臓の拍動リズムを生み出す司令塔のようなものです。洞房結節から発生した電気信号は、心房全体に広がり、心房を収縮させます。その後、電気信号は房室結節という場所に伝わり、少しの間だけ遅れて心室に伝わります。このわずかな遅れによって、心房の収縮が終わってから心室が収縮する仕組みが保たれ、効率よく血液を送り出すことができるのです。洞房結節は、まるで心臓に組み込まれた天然の時計、自然のペースメーカーと言えるでしょう。
しかし、年齢を重ねたり、病気にかかったりすると、この洞房結節の働きが弱まることがあります。すると、心臓の拍動が遅くなったり、リズムが乱れたりする不整脈が起こる可能性があります。脈が遅すぎると、体全体に十分な血液が送られなくなり、めまい、息切れ、意識消失などの症状が現れることもあります。このような症状が現れた際に、心臓の拍動を正常なリズムに戻すために用いられるのが、人工ペースメーカーと呼ばれる医療機器です。人工ペースメーカーは、小さな電池とコンピューターを内蔵した機器で、リードと呼ばれる電線を心臓に挿入し、心臓に電気刺激を与えることで、拍動を調整します。人工ペースメーカーは、心臓の機能を補助し、私たちの健康な暮らしを支える重要な役割を担っているのです。