クライエント

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福祉におけるシステム理論の活用

近頃は、人を支える仕事の中で、仕組みの考え方が大切になっています。これは、一人ひとりや、集まり、地域社会などを別々に考えるのではなく、お互いに繋がり、影響し合っている関係性の中で考えるということです。 例えば、木の葉一枚だけを見ても、それが何故そこにあるのかは分かりません。しかし、木全体を見れば、葉が光合成をするために枝についていることが分かります。さらに、木は森の一部であり、森は地域社会の一部です。このように、全体像を掴むことで、個々の要素の役割や意味が見えてきます。 福祉の仕事も同じです。困っている人を助ける時、その人だけを見るのではなく、家族や友人、地域社会との繋がりも考えます。家族関係が悪化していることで、本人が孤立しているのかもしれません。地域に交流の場がなければ、社会参加の機会を失っているかもしれません。このように、様々な要素が複雑に絡み合い、影響し合っているのです。 この考え方を、仕組みの考え方と言います。全体を一つの仕組みとして捉え、それぞれの部分がどのように働き、どう影響し合っているかを分析することで、より良い支援ができます。 例えば、一人暮らしの高齢者が転倒して怪我をしたとします。怪我の治療をすることはもちろん大切ですが、なぜ転倒したのかを考えることも重要です。家の中の環境に問題があったのかもしれません。あるいは、日々の買い物や食事の準備が負担になって、体力が落ちていたのかもしれません。 仕組みの考え方を用いれば、これらの問題を多角的に捉え、解決策を探ることができます。家の中の段差を解消したり、手すりを設置したり、配食サービスを利用したり、地域の見守り活動を導入したりと、様々な方法が考えられます。 このように、仕組みの考え方は、福祉の質を高める上で、とても役に立つ考え方です。この仕組みの考え方を介護の現場でどのように活かせるのか、これから具体的に見ていきましょう。
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人を支えるということ:支持の真意

いまの世の中では、さまざまな困難を抱える人が増えています。生活していく中での困りごと、心の悩み、社会とのつながりが薄れてしまうことなど、人々が抱える問題は実に様々です。こうした問題を解決するには、専門的な知識と技術を持った支えがなくてはなりません。福祉の仕事は、まさに困っている人たちに寄り添い、一緒に問題を解決していくための専門職です。その中で、「支える」という考え方は、利用する人が自分の力で生きていけるように、そして自分らしい生き方を見つけられるように手助けする上で、とても大切な役割を担っています。 福祉の仕事で「支える」とは、ただ困っている人を助けることだけではありません。相手の立場に立って、その人の気持ちを理解し、尊重しながら、共に考え、共に歩む姿勢が大切です。具体的には、話をじっくりと聞き、気持ちを受け止め、安心できる関係を築くことから始まります。そして、その人が持っている力や可能性を信じ、自分自身で問題を解決していく力を引き出すことを目指します。 例えば、経済的に困っている人がいたとします。ただお金を渡すだけでは、根本的な解決にはなりません。その人がなぜ経済的に困っているのか、その原因を探り、仕事を見つけられるように手助けをしたり、家計の管理方法を一緒に考えたり、公的な支援制度の利用を促したりするなど、その人に合った支援の方法を一緒に考えていくことが大切です。 また、「支える」ためには、地域社会とのつながりを作ることも重要です。孤立してしまうと、ますます問題が深刻化してしまうからです。地域の人々との交流の場を設けたり、ボランティア活動への参加を促したりすることで、社会とのつながりを作り、支え合える関係を築くことができるように支援します。 このように、福祉の仕事における「支える」とは、その人が自分らしく生きていけるように、様々な角度から多層的に支えていくことを意味します。そして、それは、福祉の仕事の中心となる、なくてはならない考え方です。
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クライエント:その人らしさを支える

『利用する人』という意味を持つ『クライエント』という言葉は、福祉の場面でよく使われます。これは、高齢者や障がいを持つ方、様々な相談を必要とする方、体の機能を取り戻す訓練を必要とする方など、支援や援助を必要とする方々を指しています。これまで、こういった方々は『利用者』や『対象者』と呼ばれてきました。しかし、近年では『クライエント』という言葉がより多く使われるようになっています。 『クライエント』という言葉を使う背景には、支援を必要とする人たちの主体性や権利を尊重するという考えがあります。つまり、ただ単に支援を受けるのではなく、自分自身の意思や選択に基づいてサービスを利用する、一人ひとりの人間としての尊厳を大切にするという考え方です。 例えば、ある高齢の方が自宅で介護サービスを受けたいとします。この場合、その方がどのような生活を送りたいのか、どのような支援を必要としているのかを丁寧に聞き取り、その方の希望に沿ったサービスを提供することが重要になります。その方の望む生活を実現するために、食事や入浴、身の回りの世話といった身体的な支援だけでなく、趣味や楽しみ、社会とのつながりを維持するための支援も行う必要があるかもしれません。 支援する側は、『クライエント』という言葉を使うことで、その人らしさを尊重し、その人の立場に立って考える意識を持つことができます。これは、その人が自分らしく、満足のいく生活を送るために、とても大切なことです。そして、支援を受ける側も、『クライエント』と呼ばれることで、自分自身の権利や主体性を意識し、より積極的にサービスを利用しようという気持ちを持つことができると考えられます。このように、『クライエント』という言葉は、より良い福祉サービスの実現に欠かせないものとなっています。
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信頼関係を築くラポール

人と人とが穏やかに繋がる調和した間柄のことを、ラポールと言います。この言葉は、もともと心の専門家が相談者との信頼関係を表すために使っていたものでした。今では、医療や介護、教育、仕事の場など、様々な場面で使われています。 ラポールが築かれると、お互いに心を開き、安心して話し合うことができます。信頼関係がしっかりと築けていると、相手の話に素直に耳を傾け、相手の気持ちを汲み取りやすくなります。また、自分の考えや気持ちを伝えやすくなるため、お互いをより深く理解することができます。良いラポールは、良い話し合いを生み出し、より良い結果に繋がります。 ラポールは目に見えるものではありませんが、お互いの表情や態度、話し方などから感じ取ることができます。温かい雰囲気の中で、自然な笑顔で会話ができている時は、ラポールが築けていると言えるでしょう。反対に、緊張した面持ちで、ぎこちない会話しかできない時は、ラポールが築けていないかもしれません。 ラポールはすぐに築けるものではなく、時間をかけてじっくりと育てていく必要があります。日々の会話の中で、相手の言葉に耳を傾け、共感する姿勢を見せることが大切です。また、自分の気持ちや考えを正直に伝えることも、信頼関係を築く上で重要です。 介護の現場では、ラポール形成は特に重要です。要介護者にとって、介護者は日常生活を支える上で欠かせない存在です。信頼関係が築けていなければ、安心して身体を任せたり、心を開いて悩みを打ち明けたりすることは難しいでしょう。介護者は、要介護者の言葉にじっくりと耳を傾け、表情や仕草をよく観察することで、その方の気持ちやニーズを理解しようと努める必要があります。そして、常に寄り添う姿勢を示すことが、強いラポールに繋がります。
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主訴:利用者の声に耳を傾ける

利用者さんが抱える悩みや困りごとの中で、一番伝えたいと思っていること、それが主訴です。病院では、患者さんが訴える体の不調のことを指しますが、介護や福祉の現場では、生活していく上での悩みや不安、サービスに関する要望など、様々な内容が含まれます。 利用者さんにとって、主訴を聞いてもらうことは、問題解決の始まりと言えるでしょう。誰かに聞いてもらうことで安心感を得るという大切な意味合いもあります。ですから、私たち専門職は、利用者さんの言葉に真剣に耳を傾け、その言葉の裏にある思いや気持ちを理解しようと努めなければなりません。 例えば、『一人暮らしで買い物が大変』という主訴があったとします。これは、ただ単に買い物に行くのが難しいということだけを意味しているとは限りません。もしかしたら、一人暮らしであるがゆえの寂しさや、これからの健康に対する不安などが隠されているかもしれません。表面的な言葉だけに捉われず、その背景にある本当の思いを読み解くことが大切です。 また、『お風呂に入ることが怖い』という主訴の場合、転倒への不安や、一人でお風呂に入ることに抵抗があるなど、様々な理由が考えられます。このような場合、主訴を丁寧に聞き取り、その原因を探ることで、適切な支援内容を考えることができます。具体的には、入浴用の椅子や手すりを設置する、訪問入浴サービスの利用を検討するなど、利用者さんの状況に合わせた支援を提供することが重要になります。主訴は、利用者さんの思いを理解するための大切な手がかりです。常に利用者さんの立場に立ち、寄り添う姿勢を忘れずに、言葉の奥にある真のニーズを汲み取るよう心掛けましょう。