ウィルソン病

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医療

知っておきたいウィルソン病

ウィルソン病は、生まれつき体のなかの銅という金属の処理がうまくいかないために、さまざまな臓器に障害が出てしまう病気です。ふつう、私たちが食べ物からとった銅は、肝臓という臓器で処理され、いらない分は便と一緒に体の外に出されます。しかし、ウィルソン病の人の場合は、この銅を体の外に出すしくみがうまく働かず、銅が体にたまってしまいます。 銅は私たちの体にとって大切な栄養素のひとつですが、多すぎると体に毒になります。ウィルソン病では、余分な銅が肝臓だけでなく、脳や腎臓、目の角膜など、さまざまな場所にたまってしまい、それぞれの臓器の働きを悪くしてしまいます。 肝臓では、炎症を起こしたり、硬くなってしまったりします。これは肝硬変と呼ばれる状態で、そのままにしておくと命にかかわることもあります。脳に銅がたまると、手足がふるえたり、うまく歩けなくなったり、言葉がうまく話せなくなったりします。また、精神的な症状が出ることもあり、性格が変わったり、うつ状態になったりすることもあります。腎臓に銅がたまると、腎臓の働きが悪くなり、体に老廃物がたまってしまいます。目の角膜に銅がたまると、カイザー・フライシャー環と呼ばれる茶色い輪っかができ、視力に影響が出ることもあります。 ウィルソン病は、世界的に見ると約3万人に1人の割合で発症すると言われており、決して珍しい病気ではありません。しかし、症状が出始める時期や症状の種類は人によってさまざまなので、診断が難しい場合もあります。早期に発見してきちんと治療すれば、症状の進行を抑え、日常生活を送ることは十分に可能です。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することが大切です。