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ろう便への理解と対応
ろう便とは、排泄された便を触ったり、弄ったりする行為のことです。便を手で触るだけでなく、壁や布団に塗りつけたり、口に入れてしまうといった行動も含まれます。この行動は、特に認知症の進む高齢者に見られることが多く、介護の現場でよく直面する課題の一つとなっています。
ろう便は、周囲に不快感を与えるだけでなく、本人や周囲の人々に感染症などの健康被害をもたらす可能性があります。また、介護する家族や施設職員の精神的な負担も大きくなります。そのため、ろう便への正しい理解と適切な対応は、介護にとって大変重要です。
ろう便の原因は様々ですが、認知症の進行に伴う判断力の低下や、感覚の異常、不安感やストレスなどが考えられます。また、便秘や下痢などの身体的な不調が原因となる場合もあります。排泄後の不快感を取り除こうとして、無意識に便を触ってしまうこともあるでしょう。さらに、過去に排泄に関する厳しいしつけを受けた経験が、ろう便につながるケースも指摘されています。
ろう便への対応としては、まず本人の行動の背景にある原因を探ることが大切です。身体的な不調があれば、医師に相談し治療を行う必要があります。また、環境の調整も重要です。トイレを明るく清潔に保ったり、排泄しやすいように工夫したりすることで、ろう便の発生を予防できる場合があります。さらに、本人が便を触ろうとした際に、優しく声をかけ、別の行動に気を向けさせることも有効です。焦らず、本人の気持ちを理解しようと努めることが大切です。決して叱ったり、無理に止めさせたりせず、穏やかに対応するように心がけましょう。