人を支えるということ:支持の真意
介護を学びたい
先生、「支持」って言葉がよく分かりません。介護や介助とどう違うんですか?
介護の研究家
いい質問だね。「介護」や「介助」は、食事や移動など具体的な行動の援助を指すけど、「支持」はもっと精神的な援助のことだよ。その人の考えや気持ちを尊重し、自分で決めて行動できるように支えることをいうんだ。
介護を学びたい
なるほど。たとえば、どんな時に「支持」が必要になるんですか?
介護の研究家
例えば、高齢の方が施設に入居するか自宅で生活するか迷っている時、どちらが良いかを押し付けるのではなく、本人の気持ちを丁寧に聞いて、納得のいく選択ができるように支える。これが「支持」なんだよ。
支持とは。
「介護」と「介助」と似た言葉に「支持」というものがあります。これは、福祉の仕事で、その人のあり方や考え方、暮らしへの思いなどをそのまま受け止め、認めて、その人が自分の力で生きていけるように、また、自分らしい人生を送れるように、自分のことは自分で決められるように支えていくことを指します。
はじめに
いまの世の中では、さまざまな困難を抱える人が増えています。生活していく中での困りごと、心の悩み、社会とのつながりが薄れてしまうことなど、人々が抱える問題は実に様々です。こうした問題を解決するには、専門的な知識と技術を持った支えがなくてはなりません。福祉の仕事は、まさに困っている人たちに寄り添い、一緒に問題を解決していくための専門職です。その中で、「支える」という考え方は、利用する人が自分の力で生きていけるように、そして自分らしい生き方を見つけられるように手助けする上で、とても大切な役割を担っています。
福祉の仕事で「支える」とは、ただ困っている人を助けることだけではありません。相手の立場に立って、その人の気持ちを理解し、尊重しながら、共に考え、共に歩む姿勢が大切です。具体的には、話をじっくりと聞き、気持ちを受け止め、安心できる関係を築くことから始まります。そして、その人が持っている力や可能性を信じ、自分自身で問題を解決していく力を引き出すことを目指します。
例えば、経済的に困っている人がいたとします。ただお金を渡すだけでは、根本的な解決にはなりません。その人がなぜ経済的に困っているのか、その原因を探り、仕事を見つけられるように手助けをしたり、家計の管理方法を一緒に考えたり、公的な支援制度の利用を促したりするなど、その人に合った支援の方法を一緒に考えていくことが大切です。
また、「支える」ためには、地域社会とのつながりを作ることも重要です。孤立してしまうと、ますます問題が深刻化してしまうからです。地域の人々との交流の場を設けたり、ボランティア活動への参加を促したりすることで、社会とのつながりを作り、支え合える関係を築くことができるように支援します。
このように、福祉の仕事における「支える」とは、その人が自分らしく生きていけるように、様々な角度から多層的に支えていくことを意味します。そして、それは、福祉の仕事の中心となる、なくてはならない考え方です。
支持とは何か
「支持」とは、困っている人に対して、ただお金や物を与えることだけではありません。もちろん、そういう援助が必要な時もありますが、福祉の仕事における「支持」の意味はもっと深いものです。「支持」の土台となるのは、その人の個性、考え方、感じ方といった内面を大切にし、良いものとして受け止めることです。その人がどんな人生を歩んできたのか、何を大切に思っているのか、どんな気持ちでいるのか、そういったことを真剣に理解しようとすることが重要です。相手の立場に立って親身になって話を聞き、その人の気持ちを汲み取ることが大切です。
「支持」とは、その人のありのままの姿を受け入れることです。良い点だけでなく、弱い部分や欠点も含めて、その人全体を認めることが大切です。そして、その上で、その人が自分らしく生きていけるように、寄り添い、力になることが「支持」の真髄です。例えば、その人が何かをしたいと思った時、すぐに「難しい」とか「できない」と決めつけるのではなく、「どうやったらできるか」一緒に考え、その人が自分で答えを見つけられるように手助けすることです。
「支持」の最終的な目的は、その人が自分の力で生きていけるように支えることです。そのためには、その人が自分のことを自分で決められるように、情報提供や助言を行い、様々な選択肢を提示することも重要です。そして、その人が選んだ道を尊重し、その人が自分の力で歩んでいけるように、見守り、励まし続けることが大切です。「支持」とは、常にその人の側に立ち、その人の人生を共に歩む姿勢とも言えるでしょう。
傾聴の重要性
人と人とのつながりが大切な介護や介助の現場では、傾聴の姿勢がより一層重要になります。傾聴とは、ただ単に相手の言葉を聞くだけでなく、その言葉の奥にある気持ちや考えを理解しようと努めることを指します。お年寄りや体の不自由な方と接する際には、特にこの傾聴の心が欠かせません。
利用者の方々は、言葉で伝えにくい思いや、言葉にすることでさえ気づいていない気持ちを抱えている場合が多くあります。「つらい」「悲しい」といった直接的な言葉だけでなく、何気ない会話や仕草、表情などからも、たくさんの情報を読み取ろうとする姿勢が大切です。例えば、いつもは明るい方が急に静かになったり、食欲が落ちたりした場合、何か心に負担を抱えている可能性があります。このような変化に気づき、「何かあったのですか?」「最近、少し元気がないようですが…」など、穏やかに声をかけることで、相手は話しやすい雰囲気を感じ、心を開いてくれるかもしれません。
一方的に解決策を提示したり、自分の考えを押し付けたりするのではなく、まずはじっくりと話を聞き、相手の気持ちに寄り添うことが大切です。相槌を打ちながら、「そうだったのですね」「お気持ち、分かります」など、共感の言葉を添えることで、相手は安心感を得て、より深く自分の気持ちを話すことができるようになります。
傾聴によって得られた情報は、利用者の方にとってより良いケアを提供するための大切な手がかりとなります。例えば、過去のつらい経験を話してくれた場合、その経験が現在の生活にどのような影響を与えているのかを理解し、適切な支援につなげることができます。また、何気ない会話の中から、趣味や好み、大切にしているものなどが分かれば、より個別性に合ったサービスを提供することが可能になります。
傾聴は、信頼関係を築き、利用者の方の心に寄り添うための大切な第一歩です。相手の話に真剣に耳を傾け、共感することで、より深い理解と、より質の高いケアを提供できるよう努めましょう。
自己決定を尊重する
人のお世話をする際には、その人の自分で決める権利を何よりも大切にしなければなりません。どんな道を選び、どんな人生を送るかは、最終的にはその人自身が決めることです。お手伝いをする人は、その人が選んだ道を尊重し、その実現のために必要な手助けをしなければなりません。たとえ、その人の選んだ道が、お手伝いをする人自身の考えと違っていたとしても、それを否定したり、無理やり変えさせようとしたりしてはいけません。自分で選び、自分で決めたことに責任を持つことで、本当の意味で自立につながるからです。
自分で決める権利を尊重するということは、ただ単にその人の言うことを何でも聞くということではありません。その人が本当に望んでいること、その人にとって最善のことは何かを、じっくりと考え、話し合うことが大切です。そのためには、その人の気持ちを理解しようと努め、丁寧に話を聞き、一緒に考える姿勢が重要です。
時には、その人の選んだ道が危険を伴う場合もあります。そのような時でも、頭ごなしに反対するのではなく、なぜ危険だと思うのか、他にどんな方法があるのかを一緒に考え、その人が納得できるまで話し合うことが大切です。最終的な決定は、その人自身が行うということを忘れてはいけません。
また、自分で決める権利を尊重するためには、その人に必要な情報を正しく伝えることも重要です。様々な選択肢とそのメリット、デメリットを分かりやすく説明することで、その人がより良い選択をするための手助けとなります。
人のお世話をするということは、その人の人生を代わりに生きるということではありません。その人が自分らしく生きられるように、寄り添い、支えることが大切です。そして、その人が自分で決める権利を尊重することで、その人の尊厳を守り、より良い人生を送るための手助けをすることができるのです。
多様な関係性の中で
人は、生まれてから死ぬまで、実に様々な人と繋がりを持って生きています。乳幼児期は家族を中心に、成長するにつれて友人、学校の先生、地域の人々など、関わる人の輪が広がっていきます。そして社会に出れば、職場の上司や同僚、取引先の人々など、さらに多様な人間関係が構築されていきます。
介護や介助が必要な状態になった場合、こうした人間関係は、これまで以上に重要な意味を持ちます。家族や友人は、精神的な支えとなるだけでなく、具体的な介護や介助の担い手となることもあります。また、地域包括支援センターの職員やケアマネージャー、ヘルパー、医師、看護師など、専門職との関係も欠かせません。それぞれが持つ専門性と経験を活かし、連携を取りながら、利用者の生活を支えていくことが大切です。
支援を必要とする方が抱える問題は、その人自身だけの問題ではなく、周囲の人間関係と深く関わっていることが多くあります。例えば、家族の介護負担が大きくなり、心身の疲労が限界に達している場合、介護される方が適切な支援を受けられないだけでなく、家族の健康状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。また、近隣住民との関係が悪化している場合、孤立感を深め、生活の質の低下に繋がる恐れもあります。
そのため、介護や介助を行う際には、利用者を取り巻く人間関係を丁寧に把握することが不可欠です。家族構成や友人関係、地域との繋がりなどを理解することで、問題の根本原因が見えてくることがあります。そして、必要に応じて、家族や関係機関と連携を図り、多角的な視点から支援を提供していくことが重要です。そうすることで、利用者の生活の質を高めるだけでなく、関係者全体の負担軽減にも繋がります。周りの人との良好な関係は、利用者の社会参加を促進し、生きがいを持って生活していく上でも大きな力となります。
専門職としての倫理
人助けを仕事とする専門職にとって、倫理に沿った行動は欠かせません。特に、介護や介助といった、人の生活に深く関わる仕事では、倫理的な判断と行動が、利用者の人生に大きな影響を与えます。
利用者のプライバシーを守ることは、何よりも大切です。個人の情報や生活の詳細は、慎重に取り扱い、許可なく他者に開示することは許されません。秘密を守ることは、専門職としての信頼の基盤であり、利用者との良好な関係を築くためにも必要不可欠です。また、利用者の人権を尊重することも重要です。利用者の意思を尊重し、自己決定を支援することは、倫理的な行動の核心です。利用者は、どのような状況にあっても、自分らしく生きる権利を持っており、私たち専門職は、その権利を守る義務があります。
信頼関係は、質の高い支援を提供するための土台です。利用者と心を通わせ、安心してサービスを利用してもらえるよう、誠実な態度で接し、常に利用者の立場に寄り添うことが重要です。そして、専門職として、常に学び続ける姿勢も大切です。社会の変化や新しい知識、技術を学び続けることで、より質の高い支援を提供することができます。介護や介助の仕事は、常に変化していくものです。利用者のニーズも多様化しており、それに対応するためには、自己研さんを通して、知識と技術を磨き続ける必要があります。倫理的な行動を心がけ、利用者の視点に立ち、常に学び続けることで、専門職としての責任を果たし、人々の生活を支えることができます。