褥瘡を防ぐためにできること
介護を学びたい
先生、『褥瘡』って、よく聞くんですけど、何なのかイマイチ理解できていないんです。教えていただけますか?
介護の研究家
そうですね。『褥瘡』、つまり床ずれは、同じ場所にずっと圧力がかかったり、皮膚がむれたり、栄養が足りなかったりすることで、皮膚が傷ついてしまうことだよ。寝たきりなどで、ずっと同じ姿勢だと、体重がかかっているところが特にできやすいんだ。
介護を学びたい
なるほど。じゃあ、おしりとか、かかとにできやすいってことですね?
介護の研究家
その通り!まさに、おしりや、かかと、それに頭の後ろなどは要注意だね。ひどくなると、命に関わることもあるから、普段から姿勢を変えたり、皮膚を清潔に保ったりすることが大切なんだよ。
褥瘡とは。
『床ずれ』について説明します。床ずれとは、同じ場所にずっと圧力がかかったり、湿っていたり、栄養が足りなかったり、こすれたりすることでできる傷のことです。ひどくなると、皮膚が腐ったり、ばい菌が入ったりして、命にかかわることもあります。よくできる場所は、おしりや頭の後ろ、かかとなど、寝ているときに体重がかかる部分です。こういった場所に特に気をつけなければなりません。
褥瘡とは何か
褥瘡とは、一般的に床ずれと呼ばれる皮膚の損傷のことです。長時間同じ体勢で寝たきり、あるいは座りっぱなしの状態が続くと、体重で圧迫された体の部分が血行不良に陥ります。特に、骨の突出している部分、例えば、おしりの上の仙骨、かかと、くるぶし、肩甲骨などは、皮膚が薄く、骨と皮膚の間にクッションとなる組織が少ないため、褥瘡ができやすい場所です。
血流が悪くなると、皮膚への酸素と栄養の供給が滞り、皮膚組織が壊死し始めます。初期症状としては、皮膚の赤みや変色が見られます。指で押しても色が白く戻らない場合、すでに褥瘡が始まっている可能性が高いです。
褥瘡は進行すると、水ぶくれができたり、皮膚が剥けたりします。さらに悪化すると、潰瘍を形成し、細菌感染を起こす危険性があります。感染症を併発すると、発熱や強い痛みを伴い、重篤な場合は命に関わることもあります。
褥瘡は、寝たきりの方や車椅子を常用する方など、体の動きが制限されている方に多く見られます。加齢に伴い、皮膚の弾力性や抵抗力が低下するため、高齢者は特に褥瘡のリスクが高くなります。また、糖尿病や栄養状態の悪い方も、皮膚の再生能力が低下しているため、褥瘡ができやすく、治りにくい傾向があります。
褥瘡の予防と早期発見、そして適切な治療が非常に重要です。体位変換をこまめに行い、皮膚への圧迫を軽減することが大切です。栄養バランスの良い食事を摂り、皮膚の状態を常に観察することで、褥瘡の発生を予防し、早期に発見することができます。もし褥瘡が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
褥瘡の発生原因
床ずれ、褥瘡は、寝たきりや車いすの生活を余儀なくされている方にとって、大きな悩みの種です。主な原因は、体の特定の部分に継続的に圧力がかかることです。長時間同じ姿勢でいると、体重で血管が押しつぶされ、血の流れが悪くなります。血液は、酸素や栄養を皮膚やその下の組織に運びますから、血の流れが悪くなると、これらの組織が壊死してしまうのです。
圧迫以外にも、摩擦やずれも褥瘡の原因となります。寝具との摩擦や、ベッドの上で体がずれることで皮膚に負担がかかり、傷を悪化させることがあります。特に、おむつを使用している方は、湿った状態が続くことで皮膚が弱くなり、摩擦による損傷を受けやすくなります。
栄養状態も褥瘡の発生に大きく関わってきます。体に必要な栄養が不足すると、皮膚の再生能力が低下し、傷の治りが遅くなります。また、皮膚の乾燥も褥瘡のリスクを高めます。皮膚の表面は、本来水分を保つことで外部からの刺激を防ぐバリアの役割を果たしています。乾燥によってこのバリア機能が弱まると、わずかな刺激でも皮膚が傷つきやすくなります。
失禁も褥瘡の悪化要因の一つです。尿や便に含まれる成分が皮膚を刺激し、炎症を引き起こすことがあります。炎症を起こした皮膚は、バリア機能が低下し、褥瘡が発生しやすくなります。このように、圧迫、摩擦、ずれ、栄養状態、皮膚の乾燥、失禁など、様々な要因が複雑に絡み合って褥瘡が発生・悪化します。褥瘡の予防と治療には、これらの要因を一つ一つ丁寧に確認し、適切な対策を講じることが重要です。
褥瘡の予防方法
床ずれ、いわゆる褥瘡は、寝たきりや車椅子生活などで長時間同じ姿勢を続けることで、体重による圧迫が原因で皮膚やその下の組織が損傷してしまうことです。褥瘡の予防には、圧迫の軽減、皮膚の保護、栄養状態の改善という3つの重要な柱があります。
まず、圧迫の軽減には、体位変換が最も効果的です。同じ体勢を続けることで、特定の部位に圧力が集中し、血流が悪くなって組織が壊死してしまうため、2時間ごとに体位を変えることが推奨されています。仰向け、横向き、座位など、様々な姿勢を組み合わせて圧迫を分散させましょう。また、体位変換に加えて、エアマットレスやクッションなどの福祉用具を使用することも有効です。これらは体圧を分散させ、特定の部位への負担を軽減するのに役立ちます。
次に、皮膚の保護も重要です。皮膚は体の最外層で、外部からの刺激を防ぐバリアの役割を果たしています。褥瘡は、このバリアが壊れてしまうことで発生しやすくなります。清潔で乾燥した状態を保つことが、皮膚のバリア機能を維持する上で大切です。入浴後や失禁の後には、お湯で優しく洗い、しっかりと拭いて乾燥させましょう。ゴシゴシこすったり、熱いお湯を使ったりすると、皮膚への負担が大きくなってしまうため、注意が必要です。また、保湿クリームを使用して皮膚の乾燥を防ぎ、うるおいを保つことも効果的です。乾燥は皮膚のバリア機能を低下させ、褥瘡のリスクを高めるため、保湿は日頃から心がけましょう。
最後に、栄養状態の改善も褥瘡予防には欠かせません。バランスの良い食事は、健康な皮膚を維持し、傷ついた組織の再生を促進するのに役立ちます。タンパク質は、皮膚や筋肉などの組織を作る上で重要な栄養素です。肉、魚、卵、大豆製品などから積極的に摂取しましょう。ビタミンやミネラルも、皮膚の健康維持に必要です。野菜や果物など、様々な食品をバランスよく食べることが大切です。また、水分も忘れずにこまめに摂りましょう。水分不足は、皮膚の乾燥を招き、褥瘡のリスクを高める可能性があります。これらの予防策を組み合わせ、継続して行うことが、褥瘡の発生を防ぎ、健康な生活を送るために重要です。
褥瘡の兆候と観察
床ずれ、つまり褥瘡は、寝たきりなどで長時間同じ姿勢を続けると、体重で圧迫された体の部位の血行が悪くなり、皮膚やその下の組織が壊死してしまうことです。初期の褥瘡は、皮膚が赤くなる、腫れる、熱を持つといった症状が現れます。場合によっては、皮膚の色が紫色に変色したり、触ると痛みを感じたりすることもあります。このような皮膚の変化は、褥瘡の始まりを知らせる大切なサインです。少しでも異変に気づいたら、すぐに医師や看護師に相談することが大切です。早期発見と早期治療こそが、褥瘡の悪化を防ぐ最も効果的な方法です。
褥瘡は、骨が突出している部分、例えば、かかと、くるぶし、おしり、ひじ、肩甲骨などにできやすい傾向があります。また、寝具や衣類のしわ、身体を固定するためのベルトなども、皮膚への圧迫となり、褥瘡の原因となることがあります。そのため、日頃からこれらの部位を注意深く観察し、皮膚の状態をチェックすることが重要です。
褥瘡の観察ポイントは、皮膚の色、腫れ、熱、痛み、そして皮膚の硬さなどです。指で軽く押してみて、皮膚の色が白く戻らない場合は、血行が悪くなっている可能性があります。また、皮膚がいつもより硬くなっていたり、ブヨブヨと柔らかくなっていたりする場合は、褥瘡が進行しているかもしれません。これらの症状が見られた場合は、自己判断せずに、すぐに専門家に相談しましょう。
家族や介護者が、日頃から皮膚の状態をチェックし、異変に気づいたら適切な対応をすることも非常に重要です。体位を定期的に変えたり、適切なクッションやマットレスを使用したりすることで、皮膚への圧迫を軽減し、褥瘡の発生を予防することができます。また、皮膚を清潔に保ち、保湿することも大切です。褥瘡は進行が速いため、少しでも異常を感じたら、ためらわずに専門家に相談しましょう。
褥瘡とは | 寝たきりなどで長時間同じ姿勢を続けると、体重で圧迫された体の部位の血行が悪くなり、皮膚やその下の組織が壊死してしまうこと |
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初期症状 | 皮膚が赤くなる、腫れる、熱を持つ、皮膚の色が紫色に変色、触ると痛みを感じる |
好発部位 | 骨が突出している部分(かかと、くるぶし、おしり、ひじ、肩甲骨など)、寝具や衣類のしわ、身体を固定するためのベルトなどが当たる部分 |
観察ポイント | 皮膚の色、腫れ、熱、痛み、皮膚の硬さ |
予防策 | 体位を定期的に変える、適切なクッションやマットレスを使用する、皮膚を清潔に保つ、保湿する |
早期発見・早期治療の重要性 | 褥瘡の悪化を防ぐ最も効果的な方法 |
褥瘡の治療方法
床ずれ、つまり褥瘡の治療は、その深さや広がりによって大きく変わってきます。まず、皮膚が赤くなっただけの比較的浅い褥瘡の場合を見ていきましょう。褥瘡のできている場所への圧迫を減らすことが何よりも大切です。体位を変える、特別なクッションを使うなどして、患部への負担を軽くします。傷口は清潔に保つ必要があるので、洗い流したり、消毒したり、薬を塗ったりといった処置を行います。
次に、皮膚が深くえぐれたり、筋肉や骨まで達するような深い褥瘡の場合、より集中的な治療が必要になります。この場合、傷口に付着した壊れた組織を取り除く処置が欠かせません。外科的な手術が必要になることもあります。傷の治りを良くするために、皮膚を他の部分から移植することもあります。
褥瘡の治療は、医師や看護師だけでなく、栄養の専門家である栄養士や体の動きの専門家である理学療法士など、様々な専門家が協力して行います。それぞれの専門家が持つ知識や技術を組み合わせ、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立て、完治を目指します。
治療中は、傷口を清潔に保ち、ばい菌が入らないようにすることが非常に重要です。医師の指示に従って、正しく手当てを行い、褥瘡が悪化しないように注意深く見守りましょう。栄養状態を整えることも、皮膚の再生を促し、褥瘡の治りを早めるために大切です。
褥瘡の深さ | 治療内容 | 関係する専門家 |
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浅い褥瘡(皮膚が赤くなった程度) |
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深い褥瘡(皮膚が深くえぐれたり、筋肉や骨まで達する) |
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日常生活での注意点
床ずれを防ぎ、治すには、毎日の暮らしの中でも気を配ることが大切です。 まず、寝具や服は、風通しの良いものを選び、しわやたるみがないように整えましょう。体に触れる部分がなめらかであれば、摩擦による皮膚への負担を減らすことができます。
車いすを使う場合は、体に合ったクッションを選び、こまめに姿勢を変えることが重要です。同じ姿勢を長時間続けると、体重がかかり続ける部分が圧迫されて血行が悪くなり、床ずれの原因となります。座面の素材にも気を配り、通気性の良いものを選ぶとより効果的です。
バランスの良い食事と十分な水分も、健康な皮膚を保つために欠かせません。皮膚は体の一部であり、体の内側からの栄養補給が重要です。特に、たんぱく質やビタミン、ミネラルは皮膚の健康に深く関わっています。水分不足は皮膚の乾燥を招き、床ずれのリスクを高めるため、意識的に水分を摂るようにしましょう。
お風呂は、皮膚を清潔にするだけでなく、血の巡りを良くする効果もあります。しかし、熱いお湯は皮膚への刺激が強いため、ぬるめのお湯で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすらず、石鹸をよく洗い流すことも大切です。入浴後は、保湿クリームを塗って皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚を守る働きを高めましょう。乾燥した皮膚は傷つきやすく、床ずれになりやすい状態です。保湿は、皮膚のバリア機能を高めるために非常に重要です。
最後に、規則正しい生活を送り、心にゆとりを持つことも床ずれの予防に繋がります。ストレスは体の様々な機能に影響を与え、免疫力を低下させる可能性があります。睡眠をしっかりとる、適度な運動をするなど、心身ともに健康な状態を保つように心がけましょう。
カテゴリー | 対策 | 目的 |
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寝具・衣服 | 風通しの良い寝具・衣服を選び、しわやたるみをなくす | 摩擦による皮膚への負担軽減 |
車いす | 体に合ったクッションを選び、こまめに姿勢を変える、通気性の良い座面 | 圧迫による血行不良の防止 |
栄養・水分 | バランスの良い食事、十分な水分摂取 | 健康な皮膚の維持 |
入浴 | ぬるめのお湯で優しく洗い、石鹸をよく洗い流し、保湿クリームを塗る | 血行促進、皮膚の清潔、乾燥防止 |
生活習慣 | 規則正しい生活、心のゆとり | ストレス軽減、免疫力維持 |