作業療法:生活を豊かにする支援

作業療法:生活を豊かにする支援

介護を学びたい

先生、「作業療法」って、よく聞くんですけど、実際どんなことをするんですか?「介護」や「介助」との違いもよくわからないです。

介護の研究家

良い質問ですね。作業療法は、ケガや病気などで体が不自由になったり、こころの不調を抱えている人が、普段の生活をスムーズに送れるようにお手伝いをすることです。例えば、服を着たり、ご飯を食べたりといった動作の練習や、社会復帰に向けての訓練を行います。工作や手芸なども、機能回復のための手段として取り入れられます。

介護を学びたい

なるほど。でも、それって「介護」や「介助」とどう違うんですか?

介護の研究家

そうですね。「介護」は、食事や入浴、排泄など、日常生活を送る上で必要な身の回りの世話を中心に行います。「介助」は、一人では難しい動作をサポートすることで、例えば階段の上り下りを支えたり、車椅子を押したりすることです。一方、「作業療法」は、その人が持っている能力を最大限に活かせるように、訓練を通して自立を支援することに重点を置いています。資格も国家資格である「作業療法士」の免許が必要です。

作業療法とは。

『作業療法』(さぐりょうほう)という言葉について説明します。作業療法は、からだや心に障がいのある人が、ふだんの生活をうまく送れるようにしたり、社会で暮らしていくために必要な力をとりもどすために行う、リハビリテーションの一つです。作業療法では、機能の回復を目的として、工作や手芸などを行います。作業療法を行うためには、国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を取得する必要があります。この作業療法は『OT』と呼ばれることもあります。

作業療法とは何か

作業療法とは何か

作業療法とは、日常生活を送る上で何らかの困難を抱える人々に対し、その人らしく生き生きと過ごせるよう支援する医療専門職です。病気や怪我、加齢、発達障害など、様々な理由で身体機能や精神機能に支障をきたした場合、食事や着替え、入浴といった基本的な動作や、仕事、趣味、社会参加といった活動が難しくなることがあります。作業療法士は、その人が本当にやりたいこと、やるべきことを実現できるよう、様々な作業活動を通して身体と心の両面からサポートします。

例えば、脳卒中などで麻痺が残ってしまった方には、箸やスプーンを使って食事をする練習や、ボタンをかける練習などを通して、日常生活に必要な動作の回復を支援します。また、手先の細かい動作が難しい場合には、自助具の選定や住宅改修の提案なども行います。

作業療法では、身体機能の回復だけでなく、心の健康も大切にします。認知症の方には、記憶力や集中力を高めるためのゲームや、手芸、園芸などの活動を通して、認知機能の維持・向上を図ります。また、うつ病の方には、生活リズムを整えるための活動や、趣味や社会活動への参加を促すことで、社会とのつながりを再構築する支援を行います。

作業療法の目的は、単に身体機能を回復させることではなく、その人が自分らしく充実した生活を送れるようにすることです。そのため、作業療法士は、その人の生活背景や価値観、目標などを丁寧にヒアリングし、個別性を重視した支援計画を立てます。そして、その人と共に目標達成に向けて、共に歩んでいきます。作業療法は、医療、福祉、教育など、様々な分野と連携しながら、人々の生活を支える重要な役割を担っています。

対象者 課題 作業療法士の支援
脳卒中などで麻痺が残った方 食事、着替えなどの日常生活動作が困難 箸やスプーンの練習、ボタンかけの練習、自助具の選定、住宅改修の提案
手先の細かい動作が難しい方 日常生活動作が困難 自助具の選定、住宅改修の提案
認知症の方 記憶力や集中力の低下 記憶力や集中力を高めるゲーム、手芸、園芸などの活動
うつ病の方 生活リズムの乱れ、社会参加の困難 生活リズムを整える活動、趣味や社会活動への参加促進

作業療法の対象となる人

作業療法の対象となる人

作業療法の対象となる方は、実に様々です。年齢や症状に関わらず、日常生活の中で何らかの困難を感じている方が対象となります。具体的には、大きく分けて三つのグループに分類できます。

一つ目は、病気や怪我の後遺症で日常生活に支障が出ている方です。例えば、脳卒中で手足が麻痺してしまった方、骨折で関節の動きが悪くなった方などが該当します。作業療法では、箸やスプーンを使えるように練習したり、着替えやトイレなどの動作をスムーズに行えるように訓練したりすることで、再び自立した生活を送れるように支援します。一人ひとりの状態に合わせたプログラムを作成し、その方に合った方法で日常生活に必要な動作を練習していきます。

二つ目は、発達障害や精神疾患を抱えている方です。例えば、自閉スペクトラム症で対人関係に苦労している方、うつ病で気分が落ち込み、活動意欲が低下している方などが該当します。作業療法では、絵を描いたり、物を作ったりする創作活動や、仲間と協力して行う作業を通して、心の状態を安定させたり、社会性を高めたりする支援を行います。また、集中力や注意力を高めるための訓練も行います。

三つ目は、加齢に伴い身体機能が低下している高齢者です。例えば、足腰が弱くなり、一人で外出するのが難しくなった方、物忘れがひどくなり、家事が思うようにできなくなった方などが該当します。作業療法では、筋力トレーニングや歩行訓練を通して身体機能の維持・向上を図ったり、料理や掃除などの家事を練習したりすることで、少しでも長く自宅で安心して暮らせるように支援します

このように、作業療法は様々な困難を抱える人々にとって、日常生活の質を向上させるための重要な役割を担っています。作業療法士は、対象となる方とじっくり話し合い、その方の目標や希望に寄り添いながら、二人三脚で支援していきます。

対象者 具体的な例 作業療法の内容
病気や怪我の後遺症で日常生活に支障が出ている方 脳卒中による手足の麻痺、骨折による関節の動きの悪化 箸やスプーンの使用練習、着替えやトイレなどの動作訓練、一人ひとりの状態に合わせたプログラム作成
発達障害や精神疾患を抱えている方 自閉スペクトラム症、うつ病 創作活動、仲間と協力する作業、集中力や注意力向上訓練
加齢に伴い身体機能が低下している高齢者 足腰の衰え、物忘れ 筋力トレーニング、歩行訓練、料理や掃除などの家事練習

作業療法で行うこと

作業療法で行うこと

作業療法とは、様々な活動を通して心身の機能回復や維持、向上を目指すリハビリテーションの一つです。病気や怪我、加齢などによって日常生活に支障をきたしている方々に対し、その人らしい生活を送れるよう支援を行います。

作業療法では、その人の状態や目標に合わせて個別性のあるプログラムを作成します。例えば、身体機能の低下が見られる場合には、関節の動く範囲を広げたり、筋力を強化するための運動療法を行います。また、脳卒中などで麻痺が残ってしまった方に対しては、着替えや食事、トイレといった日常生活動作の練習を繰り返すことで、再び自立した生活を送れるよう支援します。

作業療法の特徴は、工作や手芸、料理、園芸といった作業活動を取り入れることです。これらの作業活動は、単に手先の器用さを高めるだけでなく、集中力や注意力を向上させる効果も期待できます。また、作品を完成させることで達成感を味わい、意欲や自信の回復にも繋がるため、楽しみながらリハビリテーションに取り組むことができます。

さらに、作業療法士は、住環境の整備についても支援を行います。例えば、自宅での生活を安全に送れるよう、手すりの設置や段差解消などの住宅改修を提案したり、車椅子や歩行補助杖といった福祉用具の選定をサポートします。また、家族への指導や助言も行い、周囲の理解と協力を得ながら、その人が安心して生活を送れるよう包括的な支援を提供します。

作業療法の目的 対象者 具体的な内容 特徴 その他
心身の機能回復・維持・向上、その人らしい生活の支援 病気、怪我、加齢などにより日常生活に支障をきたしている人
  • 関節可動域訓練、筋力強化訓練
  • 日常生活動作練習(着替え、食事、トイレなど)
  • 作業活動(工作、手芸、料理、園芸など)
  • 個別性のあるプログラム
  • 作業活動による意欲・自信の回復
  • 楽しみながらリハビリ
  • 住環境整備支援(住宅改修、福祉用具選定)
  • 家族指導・助言
  • 包括的支援

作業療法の資格

作業療法の資格

作業療法士とは、心身に不自由を抱える人々が、日々の生活をより豊かに送れるよう支援する専門家です。作業療法士になるには、国家資格である作業療法士免許を取得する必要があります。この免許は、国の厚生労働大臣が発行するもので、取得への道のりは決して容易ではありません。まず、国が指定した養成学校(大学や専門学校など)で3年以上、専門的な教育を受けることが必要です。

養成学校では、人体構造を学ぶ解剖学や体の働きを学ぶ生理学、心の仕組みを学ぶ心理学といった基礎科目に加え、作業療法に関する専門的な知識や技術を幅広く学びます。机上の学習だけでなく、実際の医療現場での臨床実習も重要です。病院や施設で患者さんと直接関わることで、教科書だけでは学べない実践的な経験を積み、専門家としての能力を磨いていきます。

そして、3年間の学びの集大成として、国家試験に挑みます。国家試験は、筆記試験と実技試験から成り、例年の合格率は70%前後です。決して高いとは言えない合格率からも、試験の難しさが分かります。この難関を突破し、晴れて作業療法士免許を取得した後は、活躍の場は多岐に渡ります。病院や診療所といった医療分野はもちろん、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの福祉分野、さらには学校や地域社会といった教育分野でも、作業療法士は人々の生活を支える重要な役割を担っています。高齢化が進む現代社会において、作業療法士はますます必要とされる、やりがいのある仕事と言えるでしょう。

作業療法の資格

作業療法のこれから

作業療法のこれから

近ごろ、耳にする機会が増えた「作業療法」という言葉。高齢化が進む社会の中で、また、障がいのある方々が地域で当たり前に暮らせる社会を目指す中で、作業療法の大切さは、ますます大きくなっています。作業療法士は、病気やけが、あるいは加齢などによって生活に不自由を感じている人々が、再び自分らしく日々の暮らしを送れるように、様々な活動を通して支援する専門職です。

これまで作業療法といえば、病院でのリハビリテーションをイメージする方が多かったかもしれません。しかし、医療機関だけでなく、介護施設やリハビリテーションセンター、学校、企業など、活躍の場は年々広がっています

在宅医療においては、住み慣れた家で安心して暮らせるように、家の中の段差をなくしたり、手すりを設置するなどの住宅改修のアドバイスを行います。また、日常生活動作の練習や、福祉用具の使い方の指導なども行います。地域包括ケアシステムにおいても、作業療法士は中心的な役割を担っています。地域住民の心身の健康を維持し、生活の質を高めるための様々な取り組みを、関係機関と連携しながら進めています。

作業療法士が大切にしているのは、その人が本当にやりたいこと、大切にしていることを尊重することです。一人ひとりの状況や希望に合わせて、作業活動を通して身体機能の維持・向上だけでなく、心の健康や社会参加の促進も目指します。例えば、料理や洗濯、買い物などの日常生活動作の練習だけでなく、趣味や仕事への復帰に向けた支援も行います。

誰もが自分らしく、生き生きと暮らせる社会を実現するために、作業療法はこれからも進化を続けていくでしょう。作業療法士は、人々の生活を支え、社会全体をより良くしていくという重要な役割を担っています。

作業療法士の役割 活動場所 具体的な活動内容
生活の支援 病院、介護施設、リハビリテーションセンター、学校、企業、在宅 日常生活動作の練習、福祉用具の使い方指導、住宅改修アドバイス、趣味・仕事復帰支援
地域包括ケアシステムの中心的役割 地域 地域住民の心身の健康維持、生活の質向上、関係機関との連携
個人の尊重 個人の希望に合わせた作業活動、身体機能の維持・向上、心の健康、社会参加促進