鼻からの栄養補給:経鼻経管栄養とは

鼻からの栄養補給:経鼻経管栄養とは

介護を学びたい

先生、「鼻腔経管栄養」って、口から食べられない人が鼻から栄養をとる方法ですよね?具体的にどんな人が対象になるんですか?

介護の研究家

そうだね。口から十分に栄養がとれない人が対象だよ。例えば、手術の後で口から食べることが難しい人とか、意識がはっきりしない人などがそうだね。でも、胃や腸に問題がない人が対象で、あくまで一時的な方法なんだ。

介護を学びたい

一時的な方法ということは、ずっと続けるわけではないんですね。どれくらいの期間行うんですか?

介護の研究家

そう。基本的には4週間以内に行うものと考えていいよ。4週間以上必要な場合は、胃に直接管を通す「胃ろう」など、患者さんの負担が少ない方法を検討するんだ。

鼻腔経管栄養とは。

「介護」と「介助」に関係する言葉である『鼻腔経管栄養』について説明します。鼻腔経管栄養とは、胃や腸に問題がないものの、口から十分に栄養を取れない場合に行う栄養補給の方法です。別名『経鼻経管栄養』とも呼ばれます。鼻から管を通して、栄養剤などを流し込み、体の中に栄養を取り入れます。例えば、医療処置の後などで、口から食べることが難しい人が対象です。この方法は、短期間で口から食べられるようになることが条件です。もし4週間以上経管栄養が必要な場合は、その人の負担を軽くするために、胃ろうといった他の方法を検討します。

経鼻経管栄養の概要

経鼻経管栄養の概要

経鼻経管栄養は、口から満足に食事を摂ることが難しいけれど、胃や腸などの消化の働きをする器官には問題がない方に対して行う栄養補給の方法です。鼻から細い管を通して、栄養剤を直接胃や腸に送り込みます。そのため、経鼻胃管栄養と呼ばれることもあります手術の後や病気など、一時的に口から食べられない状況にある方に必要な栄養を確実に届ける有効な手段です。

口から食事を摂れない理由は、意識障害や嚥下障害(食べ物をうまく飲み込めない状態)など様々です。また、十分な量の食事を口から摂ることができない場合にも、経鼻経管栄養が必要となることがあります。必要な栄養が不足すると、体力が低下し、病気の回復も遅れてしまうからです。経鼻経管栄養を行うことで、低栄養状態を防ぎ、患者さんの体力の維持や回復を助けます

経鼻経管栄養は、比較的短期間の使用を想定した方法です。鼻から管を入れるため、違和感や不快感を伴う場合があり、長期的に続けることは患者さんにとって負担が大きくなってしまいます。また、鼻の粘膜への負担も考慮する必要があります。

長期間にわたる栄養補給が必要な場合は、胃ろう造設術や空腸瘻造設術など、患者さんの負担が少ない他の方法を検討します。胃ろう造設術は、お腹に小さな穴を開けて胃に直接栄養を送るための管を繋げる方法です。空腸瘻造設術は、胃を迂回して、空腸に栄養を送るための管を繋げる方法です。これらの方法は、経鼻経管栄養よりも身体への負担が少なく、長期間にわたる栄養管理が可能となります。担当の医師や管理栄養士と相談し、患者さんの状態に合わせた最適な栄養補給の方法を選択することが大切です。

項目 内容
経鼻経管栄養とは 口から満足に食事を摂ることが難しいが、消化器官に問題がない方への栄養補給方法。鼻から管を通して栄養剤を胃や腸に送る。
別名 経鼻胃管栄養
目的 手術後や病気などで一時的に口から食べられない方に必要な栄養を確実に届ける。低栄養状態を防ぎ、体力の維持や回復を助ける。
対象者 意識障害、嚥下障害、十分な量の食事を口から摂れない方など。
実施期間 比較的短期間
長期的な対応 胃ろう造設術や空腸瘻造設術など、患者さんの負担が少ない方法を検討。
注意点 鼻への違和感、不快感、粘膜への負担があるため、長期的な使用は困難。

対象となる人

対象となる人

経鼻経管栄養は、意識がはっきりしていて、自分の意思を伝えられるものの、口から十分な量の食事を摂ることが難しい方を主な対象としています。

具体的には、脳卒中などの脳血管疾患や、パーキンソン病などの神経系の病気を患い、食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下している方が挙げられます。また、口や喉、食道の手術後、しばらくの間、口から食事を摂ることができない方にも用いられます。

さらに、拒食症や摂食障害などで、必要な栄養を食事から摂ることが難しい方も、一時的に経鼻経管栄養で栄養を補給することがあります。

高齢の方で、加齢に伴い飲み込む力が弱くなった方も、この方法で栄養を補給することがあります。

しかし、胃や腸などに病気があり、栄養をうまく吸収できない方や、鼻の粘膜が弱っていたり、鼻の病気を患っている方には、この方法は適さない場合があります。

経鼻経管栄養を行うかどうかは、医師が患者さんの状態を丁寧に診察した上で判断します。患者さんの病気や体質、栄養状態などを総合的に考慮し、口から食事を摂る以外の方法で栄養を補給する必要があると判断された場合に、経鼻経管栄養が選択されます。患者さんにとって安全で、かつ効果的な栄養補給の方法を選択することが大切です。

対象者 具体的な例
意識がはっきりしていて、自分の意思を伝えられるものの、口から十分な量の食事を摂ることが難しい方
  • 脳卒中などの脳血管疾患
  • パーキンソン病などの神経系の病気
  • 口や喉、食道の手術後
  • 拒食症や摂食障害
  • 高齢の方で、加齢に伴い飲み込む力が弱くなった方
不適合な方
  • 胃や腸などに病気があり、栄養をうまく吸収できない方
  • 鼻の粘膜が弱っていたり、鼻の病気を患っている方
その他
  • 医師が患者さんの状態を丁寧に診察した上で判断
  • 口から食事を摂る以外の方法で栄養を補給する必要があると判断された場合に選択
  • 安全で、かつ効果的な栄養補給の方法を選択することが大切

実施期間の目安

実施期間の目安

経鼻経管栄養は、口から食事を摂ることが難しい方への栄養補給法の一つですが、一般的には短期間の実施が推奨されています。実施期間の目安は通常4週間以内です。4週間を超えて継続する場合は、胃に直接栄養を送るための小さな穴を作る胃ろう造設術など、他の栄養補給法への移行を検討する必要があります。

なぜ期間が限られるのかというと、鼻腔からチューブを挿入したまま長期間過ごすことで、様々な問題が生じる可能性があるからです。まず、鼻の粘膜に負担がかかり、炎症や痛み、出血などを引き起こすことがあります。また、鼻腔は本来無菌状態ではありませんので、チューブの存在が細菌感染のリスクを高め、肺炎などの合併症を引き起こす可能性も懸念されます。

さらに、患者さん自身の負担も無視できません。鼻にチューブが入っている状態は、どうしても異物感や不快感を伴います。会話や呼吸がしづらくなることもあり、身体的にも精神的にもストレスが蓄積されやすいです。これらの負担は、患者さんの生活の質を低下させ、回復への意欲にも影響を及ぼす可能性があります。

そのため、経鼻経管栄養を実施する際は、患者さんの状態を注意深く観察し、定期的に評価することが非常に重要です。具体的には、経口摂取の練習を行い、食べられるようになってきたら、徐々に経鼻経管栄養から経口摂取へ切り替えていきます。もし経口摂取への復帰が難しい場合や、4週間を過ぎても栄養状態が改善しない場合は、医師や看護師、管理栄養士などの専門家と相談し、胃ろう造設術など他の栄養補給法への変更を検討します。患者さんにとって最適な栄養管理を行うためには、状況に応じて柔軟に対応していくことが大切です。

項目 内容
実施期間の目安 通常4週間以内
4週間超えの場合 胃ろう造設術など他の栄養補給法への移行を検討
長期間実施による問題点
  • 鼻の粘膜への負担(炎症、痛み、出血)
  • 細菌感染リスク増加(肺炎など)
  • 患者への負担(異物感、不快感、会話・呼吸のしづらさ、ストレス)
実施時の注意点
  • 患者さんの状態を注意深く観察し、定期的に評価
  • 経口摂取の練習を行い、徐々に経鼻経管栄養から経口摂取へ切り替え
  • 経口摂取への復帰が難しい場合や、4週間を過ぎても栄養状態が改善しない場合は、専門家と相談し、他の栄養補給法への変更を検討

メリットとデメリット

メリットとデメリット

経鼻経管栄養は、鼻から細い管を通して胃や腸に栄養を送る方法です。口から食事をとるのが難しい方にとって、必要な栄養を補給するための大切な手段となります。この方法は、比較的簡単な手順で始められるという利点があります。特別な手術などは必要なく、医師や看護師が管を挿入することで、すぐに栄養補給を開始できます。また、栄養を直接消化管に送ることができるため、必要な栄養を確実に届けることができます。口から食事をとる場合と比べて、消化吸収の負担を軽減できる点もメリットです。特に、短期間で口から食事をとれるようになる見込みのある方にとっては、体力を維持し、回復を促すための有効な方法です。

一方で、経鼻経管栄養にはいくつかの欠点も存在します。まず、鼻の中に管が入っているため、どうしても違和感を覚える方がいます。鼻の粘膜はデリケートなので、痛みを感じたり、鼻血が出たりする可能性があります。また、管の挿入部から細菌が侵入し、感染症を引き起こす危険性も少なからずあります。さらに、管が詰まったり、不意に抜けてしまったりといったトラブルも起こりえます。管が詰まると栄養を送り込むことができなくなり、抜けてしまうと再度挿入する処置が必要になります。そして、長期にわたって経鼻経管栄養を続けることは、患者さんの生活の質を低下させる可能性も否定できません。鼻の中に管が入っていることで、会話や呼吸がしづらくなる場合もあります。また、見た目にも違和感があるため、精神的な負担を感じる方もいるかもしれません。このように、経鼻経管栄養にはメリットとデメリットの両方があります。患者さん一人ひとりの状況に合わせて、他の栄養補給法と比較検討し、最適な方法を選択することが重要です。

項目 内容
方法 鼻から細い管を通して胃や腸に栄養を送る
対象 口から食事をとるのが難しい方
メリット
  • 比較的簡単な手順で開始できる(手術不要)
  • 栄養を直接消化管に送ることができる(消化吸収の負担軽減)
  • 短期間の栄養補給に有効
デメリット
  • 鼻の中に管が入るため違和感、痛み、鼻血の可能性
  • 感染症のリスク
  • 管の詰まりや抜け
  • 長期使用は生活の質低下(会話、呼吸、精神的負担)
その他 他の栄養補給法と比較検討が必要

栄養管理の重要性

栄養管理の重要性

健康な暮らしを送るためには、栄養バランスのとれた食事が欠かせません。これは、病気や怪我からの回復を目指す方々にとって、さらに重要になります。十分な栄養が摂れないと体力が低下し、病気の悪化や合併症を引き起こす危険性が高まります。

十分な食事が難しい方にとって、経鼻経管栄養は命をつなぐ大切な役割を担います。鼻から管を通して栄養を直接胃や腸に送り込むことで、口から食べられない場合でも必要な栄養を補給できます。しかし、栄養補給は、ただ量を多く摂れば良いというものではありません。患者さん一人ひとりの病状や年齢、普段の活動量に合わせた栄養バランスを考えることが大切です。例えば、同じ病気でも、高齢の方と若い方では必要な栄養の量や種類が違います。また、安静にしている方とリハビリで体を動かす方でも、必要なエネルギー量は異なります。

そのため、栄養管理は医師や管理栄養士といった専門家の協力が不可欠です。専門家は、患者さんの状態を詳しく調べ、必要な栄養量や適切な栄養バランスを計算し、個々に合わせた栄養計画を作成します。そして、計画に基づいて栄養補給の方法や内容を決定します。さらに、定期的な血液検査などを通して患者さんの栄養状態をこまめに確認し、必要に応じて栄養計画を見直すことで、より効果的な栄養管理を行います。患者さんやそのご家族も、栄養に関する疑問や不安を気軽に相談し、専門家と協力しながら健康維持や回復に向けて取り組むことが大切です。

健康な暮らしのための要素 栄養補給の重要性 栄養管理のポイント 専門家の役割 患者さんと家族の役割
栄養バランスのとれた食事 体力の維持、病気の悪化や合併症の予防、命をつなぐ役割 患者さん一人ひとりの病状、年齢、活動量に合わせた栄養バランス 栄養状態の確認、栄養計画の作成、栄養補給の方法の決定 栄養に関する疑問や不安の相談、専門家との協力

自宅での実施

自宅での実施

経鼻経管栄養は、入院中の患者さんだけでなく、自宅で療養されている方々にも広く行われています。自宅という慣れ親しんだ環境で、口から食事をとることが難しい方でも、必要な栄養をしっかりと摂ることができるため、生活の質の維持・向上に繋がります。しかし、自宅で安全に経鼻経管栄養を行うためには、患者さんご本人やご家族の方々への丁寧な指導と継続的な支援が欠かせません。

まず、看護師や管理栄養士といった専門家から、チューブの適切な管理方法について指導を受ける必要があります。具体的には、チューブの固定方法や清潔な状態を保つ方法、交換の時期や方法などを学びます。また、栄養剤の種類や注入方法、注入速度の調整方法、注入後のチューブの洗浄方法なども、実践を通して確実に身に付けることが重要です。さらに、誤嚥やチューブの詰まり、栄養剤の漏れといったトラブルが発生した場合の対処法についても、事前にしっかりと理解しておく必要があります。

ご家族の方々も、患者さんの日々の様子を注意深く観察し、少しでも異常に気付いたら、すぐに主治医や訪問看護師に連絡することが大切です。定期的な訪問診療や訪問看護を通して、医師や看護師は患者さんの全身状態や栄養状態を継続的に確認し、必要に応じて栄養管理計画を見直し、患者さんの状態に合わせたきめ細やかな対応を行います。栄養剤の種類や量、注入時間などを調整することで、患者さんがより快適に過ごせるよう支援します。

このように、在宅医療における経鼻経管栄養は、医療専門家による適切な指導とご家族の協力のもと、患者さんが住み慣れた自宅で安心して療養生活を送る上で、大きな役割を担っています。患者さんにとって、自宅で過ごす時間は心の安寧に繋がり、療養生活の質の向上に大きく貢献すると言えるでしょう。

対象者 指導・支援内容 実施者 目的
患者と家族 チューブの管理方法(固定、清潔保持、交換)、栄養剤の種類と注入方法、注入速度調整、注入後の洗浄、トラブル対処法 看護師、管理栄養士 安全な経鼻経管栄養の実施
家族 患者さんの日々の観察、異常時の連絡 家族 早期発見・対応
患者 栄養状態、全身状態の確認、栄養管理計画の見直し、調整 医師、看護師 患者状態に合わせたきめ細やかな対応