摂食嚥下能力グレード:食事の安全性を評価

摂食嚥下能力グレード:食事の安全性を評価

介護を学びたい

先生、「摂食嚥下能力グレード」って、何ですか?なんか難しそうでよくわからないです。

介護の研究家

簡単に言うと、食べたり飲み込んだりする力がどれくらいあるかを10段階で表したものだよ。数字が小さいほど、食べたり飲み込んだりするのが難しいということだね。

介護を学びたい

なるほど。じゃあ、10段階って、どんなふうに分けられているんですか?

介護の研究家

例えば、グレード10は普通に食事ができる状態。グレード1は口から全く食べられない状態を表しているよ。その間に、少しずつ介助が必要な状態から、経管栄養が必要な状態まで、段階的に分けられているんだ。

摂食嚥下能力グレードとは。

「介護」と「介助」と関わる言葉である『食べることと飲み込むことの力の段階分け』について説明します。この分け方は、1993年に藤島一郎さんという人が考えだしたもので、食べたり飲み込んだりする様子を見て、十段階に分けられます。食べたり飲み込んだりするのが苦手な人の様子を、簡単に段階で表すためのものです。段階の数字が小さいほど、その人の状態は重いことを示しています。

摂食嚥下能力グレードとは

摂食嚥下能力グレードとは

口から食べ物を安全に飲み込む力を測る目安となるのが、摂食嚥下能力グレードです。これは、藤島一郎さんという方が1993年に考え出したもので、食べ物を飲み込む力の状態を10段階に分けています。食べ物を口に入れてから、それが胃に届くまでの一連の流れ、つまり「摂食嚥下」機能に問題がある人の状態を簡単に判断するために使われます。

このグレードは1から10までの数字で表されます。数字が小さいほど、食べ物を飲み込む力が弱いことを示し、つまり、状態が重いということです。たとえば、グレード1の人は、口から全く食べることができず、点滴などで栄養を補給する必要があります。反対に、グレード10の人は、普通の食事を問題なく食べることができます。

医療や介護に携わる人たちは、このグレードを使うことで、患者さんの状態をきちんと把握することができます。そして、その人に合った食事の形や、どのように食べ物を飲み込む支援をするかを決めることができます。例えば、とろみをつけた食事にする、食べやすい大きさに切る、姿勢に気を付けるなどです。また、時間とともにどのように変化していくかを見ることで、リハビリテーションの効果を確かめることもできます。例えば、リハビリテーションを続けることで、グレードが低い状態から高い状態へと変わっていけば、リハビリテーションがうまくいっていることが分かります。

摂食嚥下能力グレードは、食事を安全に行い、食べ物が気管に入ってしまうことによる肺炎などの病気を防ぐために大切な道具となっています。口から食べることは、栄養を摂るだけでなく、生活の楽しみにもつながります。摂食嚥下能力グレードは、患者さんが安全に、そして楽しく食事ができるようにするための、大切な役割を果たしていると言えるでしょう。

グレード 摂食嚥下能力 食事形態 支援の必要性 リハビリテーション効果の確認
1 口から全く食べることができない 点滴等 変化の観察
10 普通の食事を問題なく食べられる 通常食 維持の確認
その他 グレード1〜10の間で段階的に変化 とろみ食、刻み食など グレードに応じて変化 グレードの上昇

グレードごとの状態

グレードごとの状態

食事を飲み込む力に着目した評価段階は10段階に分かれており、それぞれの段階が、患者さんの食事の飲み込み具合を示しています。この段階を、摂食嚥下能力グレードと呼びます。グレード1は最も重い状態で、口から食べ物を摂取することはできません。栄養を摂るためには、点滴や胃ろうといった方法が必要です。

グレード2になると、少しずつ口からの摂取が可能になり始めます。まずは少量の水やお茶など、とろみのない水分を飲む練習から始めます。グレード3では、ゼリーのような、とろみがあり、口の中でまとまりやすい食品が食べられるようになります。さらに状態が良くなり、グレード4に進むと、ミキサーで細かくしたペースト状の食事がとれるようになります。

グレードが上がるにつれて、食べられる物の幅が広がっていきます。刻み食は、食べ物を細かく刻むことで、噛む力や飲み込む力が弱い人でも食べやすいように工夫した食事です。グレード5から7にかけては、刻みの大きさや食材の種類を調整しながら、刻み食へと徐々に移行していきます。

グレード8になると、ほぼ普通の食事に近い状態になります。ただし、まだ少し噛むことや飲み込むことに不安がある場合もありますので、食材によっては刻んだり、とろみをつけたりするなどの工夫が必要な場合もあります。グレード9では、ほとんど普通の食事と変わりませんが、硬いものや大きな塊のものは避けた方が良いでしょう。そして、グレード10では完全に自立した状態で、普段通りの食事を問題なく食べることが出来るようになります。

このように、それぞれのグレードに合わせて適切な食事の種類や介助の方法を選ぶことで、患者さんが安全に食事を楽しめるようにすることが大切です。

グレード 食事の状態 説明
1 経管栄養 口からの摂取は不可。点滴や胃ろうが必要。
2 少量のとろみのない水分 水やお茶などから開始。
3 とろみのある食品 ゼリー状のものが食べられる。
4 ペースト状の食事 ミキサー食。
5~7 刻み食 刻みの大きさや食材を調整しながら移行。
8 ほぼ普通食 一部刻み食やとろみをつける場合あり。
9 ほぼ普通食 硬いものや大きな塊は避ける。
10 普通食 完全に自立した状態。

評価の実際

評価の実際

食事をする力の段階分けを実際に行うには、患者さんの食事の様子をよく見たり、話を聞いたりすることが必要です。どのように評価していくのかというと、まず食事中の姿勢がどうかを見ます。きちんと座れているか、姿勢が崩れていないかを確認します。それから、食べ物を口の中でどのように噛んでいるか、どのように飲み込んでいるかを注意深く観察します。食べ物を噛むのが難しそうか、飲み込むときに詰まっている様子はないかなどを見ます。食事にかかる時間も大切な情報です。とても時間がかかっているようであれば、どこかに問題があるかもしれません。また、食事中にむせていないかどうかも確認します。むせが多い場合は、食べ物が気管に入ってしまう危険性があるので注意が必要です。食事の種類や量も評価の大切な項目です。どのようなものが食べやすいか、どのくらいの量が食べられるのかを把握します。さらに、食事をする際に手伝うことが必要かどうかも確認します。これらの情報を集めた上で、患者さんの状態を全体的に見て判断し、どの段階に当てはまるのかを決定します。この評価は、医師や看護師、ことばと聴覚の専門家、栄養の専門家など、様々な分野の専門家が行います。患者さんの状態は変化することがあるので、定期的に評価を行うことが大切です。定期的に評価することで、変化に気づき、その時々に合った適切な世話を提供することができます。

評価項目 詳細
食事中の姿勢 きちんと座れているか、姿勢が崩れていないか
咀嚼・嚥下 食べ物を口の中でどのように噛んでいるか、どのように飲み込んでいるか、噛むのが難しそうか、飲み込むときに詰まっている様子はないか
食事時間 食事にかかる時間
むせ 食事中にむせていないか
食事の種類・量 どのようなものが食べやすいか、どのくらいの量が食べられるのか
介助の必要性 食事をする際に手伝うことが必要か
総合的な判断 患者さんの状態を全体的に見て判断し、どの段階に当てはまるのかを決定
定期的な評価 患者さんの状態は変化するため、定期的に評価を行い、変化に気づき、適切な世話を提供

活用事例

活用事例

食事を飲み込む機能の段階分けは、病院や介護施設、自宅療養など様々な場面で使われています。

病院では、入院している方の食事の形態を決める際に役立ちます。例えば、食べ物をどれくらい細かく刻む必要があるのか、とろみをつける必要があるのかなどを判断する材料になります。また、機能回復訓練の目標設定にも役立ちます。現在の状態を把握し、目指すべき状態を明確にすることで、より効果的な訓練計画を立てることができます。さらに、医師や看護師、栄養士、言語聴覚士など、様々な職種の担当者間で情報を共有するためにも使われます。

介護施設では、食事の介助方法や口腔ケアの方法を検討する際に役立ちます。食事の形態や介助方法を適切に選択することで、誤嚥性肺炎などの合併症を予防することに繋がります。また、介護職員同士で情報を共有することで、一貫したケアを提供することができます。利用者の状態変化を早期に発見し、適切な対応をするためにも重要な情報となります。

自宅療養では、家族への食事の指導に役立ちます。適切な食事の形態や介助方法を学ぶことで、家族は安心して食事の世話を担うことができます。また、訪問看護師や訪問介護員などが家庭環境に合わせたケア計画を作成する際にも役立ちます。定期的な訪問を通して状態の変化を把握し、食事内容や介助方法を調整することで、自宅での生活をより安全に送ることができます。

このように、食事を飲み込む機能の段階分けは、様々な場面で活用されています。関係者間で情報を共有し、利用者一人ひとりに合わせたケアを提供することで、安全で安楽な食生活を支援することに繋がります。そして、利用者の生活の質の向上にも大きく貢献します。

場面 利用目的 関係者
病院 食事形態の決定
機能回復訓練の目標設定
職種間での情報共有
医師、看護師、栄養士、言語聴覚士など
介護施設 食事介助/口腔ケア方法の検討
介護職員間での情報共有
状態変化の早期発見と対応
介護職員
自宅療養 家族への食事指導
ケア計画作成
状態変化の把握と対応
自宅での生活の安全確保
家族、訪問看護師、訪問介護員

注意点

注意点

食事をする力や飲み込む力の状態を段階分けしたものを摂食嚥下能力段階と呼びますが、これはあくまでも簡単な目安となる評価方法です。つまり、この段階だけで、利用者の方の状態すべてを理解することは難しいです。この段階分けは、食事の形態を決めるための大切な手がかりの一つではありますが、他の詳しい調べ方と合わせて、全体をよく見て判断することが必要です。例えば、同じ段階に分類されていても、人によって食べやすいものや飲み込みやすいものは違います。口の周りの筋肉の状態や、舌の動き、食べ物を噛む力、飲み込む時の喉の動きなどを詳しく観察することで、より適切な食事の形態を判断することができます。また、スプーンやフォーク、箸などの道具の使いやすさも考慮する必要があります。さらに、利用者の方の状態は毎日変化する可能性があります。昨日までスムーズに食べられていたものが、今日はむせてしまうこともあるかもしれません。定期的に状態をもう一度調べ直すことが大切です。食事の形態を適切に提供することは、安全に食事を楽しむために不可欠です。むせたり、食べ物が気管に入ってしまう誤嚥を防ぐことはもちろん、楽しい食事の時間を提供するためにも、利用者の方一人ひとりの好き嫌い、育ってきた環境での食習慣などを考慮することも必要です。画一的な対応ではなく、状況に合わせて柔軟に対応することで、利用者の方の生活の質を高めることに繋がるのです。例えば、同じ刻み食であっても、彩り豊かに盛り付けたり、食べやすい大きさに調整したりすることで、食欲を増進し、食事への満足度を高めることができます。このように、摂食嚥下能力段階はあくまで目安であり、他の情報と組み合わせ、一人ひとりに合わせた対応を心がけることが大切です。

摂食嚥下能力段階の活用 注意点と詳細
食事の形態を決めるための手がかり
  • 段階だけでは利用者の状態を全て理解できない
  • 他の詳しい調べ方と合わせて全体をよく見る必要がある
一人ひとりに合わせた判断
  • 同じ段階でも、食べやすいものや飲み込みやすいものは人それぞれ
  • 口周りの筋肉、舌の動き、噛む力、喉の動きなどを観察
  • 道具の使いやすさも考慮
定期的な状態確認
  • 利用者の状態は毎日変化する可能性がある
  • 定期的に状態を再確認
安全で楽しい食事の提供
  • むせや誤嚥を防ぐ
  • 好き嫌い、食習慣などを考慮
柔軟な対応
  • 画一的な対応ではなく、状況に合わせて柔軟に対応
  • 例:刻み食でも彩り豊かに盛り付け、食べやすい大きさに調整

今後の展望

今後の展望

これからの日本では、高齢化がますます進んでいきます。それに伴い、食べ物をうまく飲み込めなくなる、いわゆる摂食嚥下障害を抱える人も増えていくと予想されます。このような状況の中で、摂食嚥下能力の程度を段階的に評価する摂食嚥下能力グレードは、ますます重要性を増していくでしょう。

現在、摂食嚥下能力グレードは、患者さんの状態を的確に把握し、適切な支援を行うために役立っています。しかし、より多くの人の役に立てるためには、さらなる発展が必要です。例えば、現状よりもさらに正確に評価できる方法を開発していくことが求められています。また、それぞれのグレードに合わせた、より効果的な訓練や支援の方法を確立していく必要もあります。食事の介助方法や、適切な食事の形態、口腔ケアの方法なども、グレードに応じて細かく検討していく必要があるでしょう。

さらに、科学技術の進歩も、摂食嚥下能力グレードの進化に貢献する可能性を秘めています。近年、様々な分野で活用が進む人工知能(AI)の技術を用いて、摂食嚥下能力を自動で評価する仕組みの開発も進められています。将来的には、AIによる評価システムが実用化されれば、より多くの患者さんを、より速く、簡単に評価できるようになることが期待されます。

摂食嚥下能力グレードは、ただ単に飲み込みの状態を評価するだけでなく、人々が健康に楽しく食事をし、より良い生活を送るための大切な手助けとなるものです。今後、様々な研究開発や技術革新を通して、摂食嚥下能力グレードはさらに進化し、人々の健康な暮らしを支える上で、なくてはならないものになっていくでしょう。

課題 解決策
高齢化に伴い摂食嚥下障害を抱える人が増加 摂食嚥下能力グレードの重要性が増加
現状より正確な評価が必要 より正確に評価できる方法を開発
グレードに合わせた効果的な訓練・支援方法が不足 効果的な訓練・支援方法を確立
食事介助方法、適切な食事形態、口腔ケアの方法をグレードに応じて検討
迅速で簡便な評価方法が必要 AIによる摂食嚥下能力の自動評価システムの開発