生活を支える介助の力
介護を学びたい
先生、『手段的日常生活動作』って何ですか?『介護』と『介助』の違いもよくわからないです。
介護の研究家
良い質問ですね。まず『手段的日常生活動作』、略してIADLとは、買い物や料理、掃除、洗濯など、生活していく上で必要な活動のことです。一方『介護』と『介助』の違いですが、『介護』は生活全般の支援、『介助』はその一部を支援することです。例えば、食事を『介助』する、入浴を『介助』する、といったように使います。
介護を学びたい
なるほど。つまりIADLは、生活していく上で欠かせない活動で、『介助』は『介護』の一部ということですね。でも、IADLと『介護』『介助』は、どう関係しているのですか?
介護の研究家
IADLができなくなると、『介護』や『介助』が必要になります。例えば、料理ができなくなったら、食事の『介護』が必要になりますよね。IADLが維持できているということは、それだけ自立した生活を送れているということです。
IADLとは。
「介護」と「介助」について、日常生活動作の中でもより複雑な活動である「手段的日常生活動作」について説明します。これは、買い物、食事の準備、洗濯や掃除といった家事など、日常生活で行う動作の中でも、どのように行うか、といった判断や決断が必要となる動作を指します。この複雑な動作ができなくなると、基本的な日常生活動作も難しくなっていく傾向があります。
買い物や家事の介助
年を重ねると、これまで何気なく行っていた買い物や家事が、思うようにできなくなることがあります。足腰の衰えから、長い時間立っていることが難しくなったり、重たい買い物袋を運ぶのが大変になったりします。また、近年複雑になった家電製品の操作が分からなくなってしまう方もいらっしゃいます。このような体の変化や生活環境の変化によって、日常生活に支障が出てくることがあります。
買い物や家事の介助は、このような困難を抱える高齢者が、住み慣れた場所で安心して生活を続けられるようサポートするものです。買い物介助では、ご本人と一緒に買い物に出かけ、商品選びの付き添いや、重い荷物の持ち運びを支援します。また、ご本人に代わって必要な物を購入して届けることも可能です。ご家族に代わって買い物に行くことで、ご家族の負担軽減にも繋がります。
家事介助では、掃除機をかける、洗濯物を干す、布団を干す、食事の準備を手伝うなど、ご本人の状況や希望に合わせて、柔軟に対応します。たとえば、掃除機をかけるのが大変な場合は、ロボット掃除機の導入を提案したり、ご本人が掃除機をかけやすいように家具の配置を変えるお手伝いをすることも可能です。洗濯物を干すのが難しい場合は、洗濯乾燥機を活用したり、室内物干しを設置するなど、状況に合わせた対応を検討します。
介助は、身体的な負担を軽くするだけでなく、精神的な面でも大きな支えとなります。「自分のことは自分でやりたい」という気持ちを持ちながらも、思うように動けないもどかしさや、人に頼らざるを得ない状況を受け入れることは、誰にとっても容易ではありません。介助を通して、ご本人の「できること」を尊重し、できない部分を補うことで、安心感と自立心を育み、その人らしい生活の継続を支援します。また、介助者とのコミュニケーションを通して社会との繋がりを維持することにも繋がります。
種類 | 内容 | 目的 |
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買い物介助 |
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家事介助 |
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介助全般 | 身体的、精神的な支援 |
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介助と介護の違い
「介助」と「介護」は、どちらも人を支える行為を表す言葉であり、混同しやすい言葉ですが、実際には異なる意味を持っています。その違いを理解することは、適切な支援を行う上で非常に重要です。
「介助」とは、主に身体的な動作を助けることを指します。具体的には、食事の際に食べ物を口まで運んだり、入浴の際に体を洗ったり、衣服の着脱を助けたり、歩行を支えたりといった行為が挙げられます。つまり、本人が自分で行うことが困難な動作を、他の人がサポートすることで、その人の自立を促すという意味合いが強いと言えるでしょう。
一方、「介護」は、日常生活全般における様々な支援を含む、より包括的な概念です。食事や入浴、排泄などの身体的な介助はもちろんのこと、健康状態の確認や管理、金銭の管理、薬の管理、掃除や洗濯などの家事、外出の付き添いなど、生活のあらゆる場面での支援が含まれます。また、精神的な支えも介護の重要な要素です。話し相手になったり、趣味や活動を共に楽しんだりすることで、心身の健康を維持し、その人らしい生活を送れるように支援することも介護の大切な役割です。
このように、「介助」は「介護」の一部であり、「介護」の中には「介助」が含まれています。高齢者の状態に合わせて、必要な「介助」や「介護」の程度は変化します。たとえば、自立度の高い高齢者には、必要な場面での「介助」を中心とした支援を行い、自立度の低い高齢者には、日常生活全般を支える「介護」が必要となるでしょう。それぞれの状況を的確に把握し、適切な支援を提供することで、高齢者の尊厳を守り、より豊かな生活を送れるように支えることが大切です。
項目 | 介助 | 介護 |
---|---|---|
意味 | 主に身体的な動作を助けること | 日常生活全般における様々な支援を含む、より包括的な概念 |
目的 | 本人が自分で行うことが困難な動作を、他の人がサポートすることで、その人の自立を促す | 心身の健康を維持し、その人らしい生活を送れるように支援する |
内容 | 食事、入浴、着衣、歩行など | 食事、入浴、排泄、健康管理、金銭管理、薬の管理、家事、外出、精神的な支えなど |
関係性 | 介護の一部 | 介助を含む |
例 | 自立度の高い高齢者への必要な場面での支援 | 自立度の低い高齢者への日常生活全般の支援 |
手段的日常生活動作(IADL)とは
手段的日常生活動作(IADL)とは、基本的な日常生活動作(BADL食事、更衣、移動、排泄、入浴など)に加えて、生活を営む上で必要となるより高度で複雑な活動のことを指します。これらの活動は、単に身体を動かすだけでなく、状況を判断する力、計画を立てる力、物事を記憶しておく力といった認知機能も必要とします。
IADLには具体的にどのような活動が含まれるのでしょうか。代表的な例としては、買い物があります。買い物に行くためには、何が必要かリストアップし、お店まで行き、商品を選び、お金を払い、持ち帰るといった一連の行動が必要です。また、食事の準備もIADLに含まれます。献立を考え、材料を買い揃え、調理し、後片付けをするまで、多くの手順と判断が必要です。掃除や洗濯も、手順を理解し、道具を使い、適切な方法で行う必要があります。
さらに、金銭の管理も重要なIADLです。収入と支出のバランスを考え、家賃や光熱費などの支払いを管理する能力が必要です。また、薬を適切な量とタイミングで服用する服薬管理も、健康を維持するために欠かせないIADLです。
現代社会では、電話や手紙、電子メールなどを使った連絡も重要なIADLです。情報を正確に伝え、受け取る能力が求められます。そして、バスや電車などの交通機関を適切に利用することも、社会参加のために必要なIADLです。時刻表を読み、切符を買い、目的地まで移動する能力が必要です。
これらのIADLが低下すると、日常生活に支障が出て、社会的な孤立につながる可能性があります。例えば、買い物に行けなくなると、栄養バランスの取れた食事が難しくなり、健康状態が悪化する可能性があります。また、電話や交通機関が使えなくなると、友人や家族との交流が減り、社会的に孤立する可能性があります。そのため、高齢者のIADLの低下に早期に気づき、適切な支援を行うことが非常に重要です。家族や周囲の人々は、日頃から高齢者の様子を観察し、IADLの低下に兆候が見られたら、地域の相談窓口や専門機関に相談することが大切です。適切な支援があれば、IADLの低下を予防し、より長く自立した生活を続けることができます。
IADLの例 | 必要な能力 | 低下時の影響 |
---|---|---|
買い物 | リスト作成、移動、商品選択、金銭管理、持ち運び | 栄養バランスの悪化、健康状態の悪化 |
食事の準備 | 献立作成、材料購入、調理、後片付け | 栄養バランスの悪化、健康状態の悪化 |
掃除・洗濯 | 手順理解、道具使用、適切な方法の実行 | 不衛生な環境、健康状態の悪化 |
金銭管理 | 収入支出バランス管理、支払い管理 | 経済的な困窮 |
服薬管理 | 適切な量とタイミングでの服用 | 健康状態の悪化 |
連絡(電話、手紙、メール) | 情報伝達、情報受信 | 社会的な孤立 |
交通機関利用 | 時刻表理解、切符購入、移動 | 社会的な孤立 |
IADL低下の兆候
日常生活動作(IADL)の衰えは、最初は小さな変化として現れます。普段はきちんと生活を営んでいる方が、少しずつ家事や身だしなみに困難を抱え始めるのです。具体的には、冷蔵庫の中に賞味期限切れの食品が増えていたり、中身が整理されていなかったり、以前はきちんと片付いていた部屋が散らかり始めたりすることがあります。また、公共料金や税金の支払いが滞るのも、注意すべき点です。金銭管理は、複雑な思考力や判断力を必要とするため、IADL低下の初期症状として現れやすいのです。
身だしなみにおいても、IADLの衰えは現れます。服装が乱れていたり、同じ服を何日も着続けていたりする場合は、注意が必要です。また、入浴の頻度が減ったり、以前は楽しんでいた外出をしなくなったりするのも、見逃せないサインです。人と会うことを避けるようになり、電話にも出なくなることもあります。これらの変化は、本人が意図して行っているのではなく、IADLの低下によって、以前のようにスムーズに物事を進めることができなくなっていることが原因である可能性があります。
こうした変化に気づいたら、早期に対応することが非常に大切です。IADLの低下を放置すると、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、健康状態の悪化につながる恐れもあります。例えば、栄養状態が悪化したり、衛生管理が不十分になったりすることで、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。また、社会的な孤立は、精神的な健康にも悪影響を及ぼします。家族や周囲の人々は高齢者の些細な変化にも気を配り、必要に応じて地域包括支援センターや高齢者相談窓口などの専門機関に相談するなど、適切な支援につなげていくことが重要です。
初期症状 | 具体的な例 | 注意点 |
---|---|---|
家事の困難 | 冷蔵庫の中に賞味期限切れの食品が増える 冷蔵庫の中が整理されていない 部屋が散らかり始める |
小さな変化に気づく |
金銭管理の困難 | 公共料金や税金の支払いが滞る | 複雑な思考力や判断力を必要とするため、IADL低下の初期症状として現れやすい |
身だしなみの変化 | 服装が乱れる 同じ服を何日も着続ける 入浴の頻度が減る |
本人が意図して行っているのではなく、IADLの低下によって以前のようにスムーズに物事を進めることができなくなっている |
社会的な活動の減少 | 外出をしなくなる 人と会うことを避ける 電話にも出なくなる |
社会的な孤立は精神的な健康にも悪影響を及ぼす |
早期対応の重要性 | 日常生活への支障 健康状態の悪化 精神的な健康への悪影響 |
適切な支援(地域包括支援センター、高齢者相談窓口など) |
IADLを維持するための支援
日常生活動作(ADL)と比べて、より複雑な活動である手段的日常生活動作(IADL)の維持は、高齢者の自立した生活の継続に不可欠です。しかし、加齢や病気によって、これらの活動が困難になる場合があります。そこで、本人の状態に合わせた適切な支援を行うことが重要になります。
例えば、買い物が難しくなった場合を考えてみましょう。単に買い物ができなくなったと決めつけるのではなく、本人の状況を丁寧に確認することが大切です。足腰が弱っているなら、一緒に買い物に行く、カートを押すのを手伝うなどの付き添い支援が有効です。外出が難しい場合は、宅配サービスやインターネットスーパーなどを利用するのも良いでしょう。これらのサービスを利用することで、本人の選択の幅を広げ、社会との繋がりを維持することにも繋がります。
家事が負担になっている場合も同様です。掃除、洗濯、料理など、どの家事が困難なのかを具体的に把握し、それに応じた支援を検討します。家事代行サービスを利用する、家族が分担して手伝う、あるいは福祉用具を導入するなど、様々な方法があります。例えば、掃除機をかけるのが大変ならロボット掃除機を導入したり、調理が難しいなら簡単な調理器具を使う、配食サービスを利用するなどの工夫が考えられます。
金銭管理が難しくなった場合は、家族が家計簿の確認や支払いを手伝ったり、通帳や印鑑の管理を一緒に行うなどの方法があります。状況によっては、成年後見制度の利用を検討する必要があるかもしれません。ただし、本人の意思を尊重し、できる範囲で自分で管理できるように支援することが大切です。
IADL維持の支援において最も重要なのは、本人の意欲を尊重し、できることは自分で行ってもらうように促すことです。できない部分を適切に支援することで、自立した生活を長く続けられるだけでなく、自己肯定感の維持にも繋がります。また、地域包括支援センターなどの専門機関に相談することで、様々な支援策の情報を得ることができます。これらのサービスを必要に応じて活用し、IADLの維持に努めることが、高齢者の生活の質の向上に繋がります。
IADLの困難 | 状況確認 | 支援内容 | 目的・効果 |
---|---|---|---|
買い物 | 足腰の衰え、外出の可否 | 付き添い、カートを押す、宅配サービス、ネットスーパー | 選択の幅を広げる、社会との繋がりを維持 |
家事 | 掃除、洗濯、料理など、どの家事が困難か | 家事代行、家族の分担、福祉用具(ロボット掃除機、簡単調理器具)、配食サービス | 負担軽減 |
金銭管理 | どの程度管理が困難か | 家計簿確認、支払い補助、通帳・印鑑の共同管理、成年後見制度 | 本人の意思の尊重、自立した生活の支援 |