医療における納得と同意:インフォームドコンセント
介護を学びたい
先生、「インフォームドコンセント」って、介護と介助の場面でも大切だって聞きました。具体的にどういうことですか?
介護の研究家
そうだね、医療行為だけでなく、介護や介助の場面でもとても大切だよ。例えば、高齢者の方に車いすへの移乗介助をするとき、「今から車いすに移りますよ。お手伝いしますね。」と声をかけ、どのように移乗するか説明し、同意を得てから行う必要があるね。
介護を学びたい
なるほど。でも、もし高齢者の方が認知症などで、うまく意思表示ができない場合はどうすればいいんでしょうか?
介護の研究家
いい質問だね。その場合は、ご家族や成年後見人など、本人に代わりに判断してくれる人に説明し、同意を得るようにするんだ。常に本人の尊厳と権利を尊重することが大切だよ。
インフォームドコンセントとは。
『お医者さんから十分な説明を受け、納得した上で治療を受ける』という考えについて、『介護』と『介助』という観点から見てみましょう。この考えは『インフォームドコンセント』と呼ばれ、『インフォームド』は『説明を受けた』、『コンセント』は『同意する』という意味です。お医者さんは、患者さんに薬を飲ませたり、手術をしたり、検査をしたりする前に、その目的や効果、その後どうなるかなどを説明する必要があります。そして、患者さんが納得しない限り、治療を始めることはできません。日本では、1990年代から『インフォームドコンセント』という言葉がよく使われるようになりました。それまでは、お医者さんの言う通りにするのが当たり前という風潮がありましたが、患者さん自身の意思や選択を大切にするべきだという考え方が広まってきたことが背景にあります。
説明と同意の大切さ
医療行為を受ける際には、患者さんが自分の体や健康について自分で決めることがとても大切です。そのためには、お医者さんから受ける治療について、どんな内容で、どのような効果やリスクがあるのか、他にどんな方法があるのかなどをしっかり理解し、納得した上で同意することが必要です。この一連の流れを「説明と同意」と言います。これは、ただお医者さんの指示に従うのではなく、患者さん自身が治療の進め方を決めることに参加するという意味で、より良い医療につながります。
患者さん中心の医療を実現するために、「説明と同意」は重要な土台となります。お医者さんは、患者さんが理解しやすいように、治療の内容、期待される効果だけでなく、起こりうる副作用や合併症、他の治療法の選択肢、治療を受けなかった場合の見通しなどについて、丁寧に説明する必要があります。また、費用についても説明することが求められます。患者さんは、わからないことや不安なことを遠慮なく質問し、納得いくまで説明を受ける権利があります。家族や親しい人に相談することも良いでしょう。十分な時間をかけて、患者さんが自分の状況を理解し、治療について納得した上で意思決定を行うことが重要です。
適切な説明と患者さんの理解に基づいた合意形成は、お医者さんと患者さんの信頼関係を築き、治療に前向きに取り組む意欲を高めます。また、治療中に起こりうる問題や予想外の事態にも、協力して対応できるようになります。説明と同意は、患者さんの権利を守るだけでなく、より良い医療の実現のために欠かせないものです。患者さんもお医者さんも、この重要性を理解し、共に協力していくことが大切です。
説明と同意の重要性 | 患者さんの役割 | 医療者の役割 |
---|---|---|
患者さんが自分の体や健康について自分で決めるためのプロセス | 治療内容、効果、リスク、代替案などを理解し、納得した上で同意する | 治療内容、効果、副作用、合併症、代替案、治療を受けなかった場合の見通し、費用などを丁寧に説明する |
患者さん中心の医療の実現のための土台 | わからないことや不安なことを遠慮なく質問し、納得いくまで説明を受ける | 患者さんの理解しやすいように説明する |
適切な説明と理解に基づいた合意形成は、信頼関係を築き、治療への意欲を高める | 家族や親しい人に相談する | – |
治療中の問題や予想外の事態にも協力して対応できるようになる | 十分な時間をかけて、自分の状況を理解し、納得した上で意思決定を行う | – |
患者さんの権利を守り、より良い医療の実現に欠かせない | – | – |
言葉の意味と背景
「説明を受けた上で同意する」という意味を持つ言葉は、英語の「インフォームド」と「コンセント」を組み合わせたものです。日本では、1990年代頃から広く使われるようになりました。それ以前は、お医者さんの立場が強く、患者さんはお医者さんの判断に従うのが当たり前という風潮がありました。お医者さんの言うことに疑問を持つということは、あまりありませんでした。
しかし時代が変わり、医療の技術も進歩しました。それと同時に、患者さんの意識も変化していきました。自分の体のことなのだから、自分も治療方針の決定に関わりたいと考える人が増えてきたのです。そこで、患者さん自身の意思決定を尊重するという考え方が広まり、説明を受けた上で同意するという考え方が大切になってきました。
今では、お医者さんは患者さんに病状や治療方法について、丁寧に説明するようになりました。どんな薬を使うのか、どのような手術をするのか、どのようなリスクがあるのかなど、患者さんが理解できるように分かりやすく説明することが求められています。患者さんは、説明を聞いた上で、納得できれば治療に同意します。もし納得できなければ、他の治療方法を相談したり、セカンドオピニオンを求めることもできます。
この「説明を受けた上で同意する」という考え方が広まったことは、医療の質を向上させる上で大きな役割を果たしました。患者さんが治療内容を理解し、納得した上で治療を受けることで、安心して治療に臨むことができます。また、お医者さんと患者さんの信頼関係を築く上でも大切なことと言えるでしょう。今では、医療現場だけでなく、介護や福祉の分野でも「説明を受けた上で同意する」という考え方が重視されています。
時代背景 | 医療現場の変化 | 患者さんの変化 | 結果 |
---|---|---|---|
1990年代以前:医師の立場が強く、患者は医師の判断に従うのが当たり前。 | 医師の説明責任は軽視されていた。 | 医師の言うことに疑問を持つことは少なかった。 | 患者の自己決定権は尊重されていなかった。 |
1990年代以降:医療技術の進歩、患者意識の変化。 | 医師は患者に病状や治療方法を丁寧に説明するようになった。薬の種類、手術の方法、リスクなどを分かりやすく説明することが求められる。 | 自分の体のことなので、治療方針の決定に関わりたいと考える人が増加。納得しなければ他の治療法を相談したり、セカンドオピニオンを求めるように。 | インフォームド・コンセントが普及し、患者の自己決定権が尊重されるように。医療の質の向上、医師と患者の信頼関係構築に貢献。介護や福祉の分野にも波及。 |
医療行為における具体例
医療行為は多岐に渡りますが、どのような行為であっても、患者さんの理解と同意を得ることが大切です。これをインフォームド・コンセントと言います。医療行為を行う前に、医療者は患者さんに対して、その行為の内容、目的、期待される効果、起こりうる危険性などを十分に説明する義務があります。患者さんは、説明を受けた上で、その医療行為を受けるかどうかを自分で決める権利を持っているのです。
例えば、手術を受けるという医療行為を考えてみましょう。医師は、患者さんに対して、手術の方法、手術によってどのような効果が期待できるのか、手術に伴う危険性はないのか、術後の経過はどうなるのか、他に治療の方法はないのかなどを詳しく説明する必要があります。患者さんは、これらの説明を理解した上で、手術を受けるかどうかを判断しなければなりません。もし、説明の内容が理解できない場合は、納得できるまで質問し、十分に理解した上で判断することが重要です。
薬を処方する際もインフォームド・コンセントは必要です。医師や薬剤師は、患者さんに対して、薬の名前、その薬の効果、副作用としてどのような症状が現れる可能性があるのか、どのように服用すれば良いのか、服用する上での注意点などを説明しなければなりません。患者さんは、これらの説明を受け、薬の効果や副作用、服用方法などを理解した上で、その薬を服用するかどうかを判断します。副作用が心配な場合は、医師や薬剤師に相談し、納得した上で服用することが重要です。
検査も医療行為の一つです。医師は、患者さんに対して、検査の目的、どのような方法で行うのか、検査の結果から何が分かるのか、検査に伴う危険性はあるのかなどを説明しなければなりません。例えば、血液検査であれば、なぜ血液検査をする必要があるのか、どのような方法で採血するのか、採血によって得られた結果からどのようなことが分かるのか、採血に伴う痛みや内出血などの危険性はあるのかなどを説明する必要があります。患者さんは、検査を受ける目的や方法、危険性を理解した上で、検査を受けるかどうかを判断します。
このように、どんな医療行為であっても、患者さんが納得して治療を受けるために、インフォームド・コンセントは欠かせません。医療の安全性を確保する上でも、医療者と患者さんとの信頼関係を築く上でも、インフォームド・コンセントは非常に重要な役割を果たしているのです。
医療行為 | 説明事項 | 患者の判断 |
---|---|---|
手術 | 手術の方法、期待される効果、危険性、術後の経過、他の治療法 | 説明を理解した上で、手術を受けるかどうかを判断 |
薬の処方 | 薬の名前、効果、副作用、服用方法、注意点 | 薬の効果や副作用、服用方法などを理解した上で、服用するかどうかを判断 |
検査 | 検査の目的、方法、結果から分かること、危険性(例:血液検査) | 検査を受ける目的や方法、危険性を理解した上で、検査を受けるかどうかを判断 |
患者が理解しやすい説明
お医者さんは、たくさんの専門的な知識を持っています。しかし、病院に来る人は、医療のことがよくわからない場合が多いです。ですから、お医者さんは難しい言葉を使わずに、誰でもわかる簡単な言葉で説明することが大切です。
たとえば、「血圧が高い」ではなく「血管に流れる血液の勢いが強すぎる」といったように、具体的な表現を使うと理解しやすくなります。また、「肝機能障害」のような難しい言葉ではなく、「肝臓のはたらきが弱くなっている」と、体の中で何が起きているかをわかりやすく伝えることが重要です。
さらに、言葉だけで説明するだけでなく、図や絵、模型などを見せるのも効果的です。たとえば、心臓の模型を見せながら、心臓のどの部分がどのように働いているかを説明すれば、患者さんはより具体的に理解できます。検査結果をグラフで見せることで、自分の体の状態を視覚的に把握しやすくなります。
そして、患者さんが質問しやすい雰囲気を作ることも大切です。お医者さんが忙しそうだったり、怖い顔をしていると、患者さんは質問しづらくなってしまいます。笑顔で優しく接し、「何か質問はありますか?」と積極的に声をかけることで、患者さんは安心して質問できます。もし質問があった場合は、丁寧に時間をかけて答えることが重要です。すぐに専門用語を使って説明するのではなく、患者さんの理解度に合わせて、ゆっくりとわかりやすく説明する必要があります。
患者さんがきちんと理解し、納得した上で治療を受けられるように、お医者さんは、患者さんとよく話し合い、信頼関係を築くことが大切です。わかりやすい説明は、より良い信頼関係を築くためにも重要です。
患者さんへの説明で大切なこと | 具体的な方法 |
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誰でもわかる簡単な言葉で説明する |
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視覚的な説明を取り入れる |
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質問しやすい雰囲気を作る |
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質問に丁寧に答える |
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患者さんとよく話し合い、信頼関係を築く | わかりやすい説明をする |
家族の役割と代理意思決定
病気やけがで、自らの意思を伝えることが難しい状況になった時、家族が代わりに意思決定を行うことがあります。例えば、意識がない状態や、認知症が進んでいる場合などが考えられます。このような代理意思決定は、患者さんの人生に関わる大切な選択となるため、慎重に進める必要があります。
まず、医師は家族に対して、患者さんと同じように丁寧に病状や治療方法について説明する義務があります。専門用語を避け、分かりやすい言葉で伝えることで、家族は状況を正しく理解し、適切な判断ができます。また、医師は複数の治療方法がある場合は、それぞれのメリットとデメリットを詳しく説明し、家族が納得いくまで話し合う必要があります。家族からの質問にも真摯に耳を傾け、不安や疑問を解消することが大切です。
家族は、患者さんの一番の幸せを考え、患者さん自身が望むであろう治療方針を選ぶ責任があります。もし、患者さんが元気な頃に将来の治療について希望を伝えていた場合は、その意思を尊重する必要があります。延命治療の希望の有無や、どのような医療を受けたいかなど、事前に話し合っておくことは、いざという時に家族の負担を軽くし、患者さんの意思に沿った医療を実現するために重要です。
患者さんが意思表示できない状況でも、これまでの人生や価値観、大切にしていることを家族が理解していれば、より患者さんらしい選択をすることができます。例えば、患者さんが自然を愛する人であれば、最期まで自然の中で過ごせるように自宅での療養を希望するかもしれません。また、患者さんが家族との時間を大切にしていた人であれば、たとえ意識がなくても、家族に見守られながら最期を迎えられるように配慮することが望ましいでしょう。
家族と医療者が良好な関係を築き、互いに協力し合うことは、円滑な治療を進める上で欠かせません。医師は家族の意見に耳を傾け、家族は医師の専門的な知識を尊重することで、患者さんにとって最善の医療を提供することができます。日頃から患者さんを中心とした話し合いの場を持つことで、相互理解を深め、信頼関係を築くことが大切です。
主体 | 役割・責任 | 行動 |
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医師 | 患者家族への丁寧な説明義務 患者さんの最善の医療の提供 |
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家族 | 患者本位の意思決定 円滑な治療のための協力 |
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これからの医療とインフォームドコンセント
医療の進歩はめざましく、日々新しい治療法や薬が生まれています。このような状況の中で、患者さんが自分の治療についてきちんと理解し、納得した上で治療を受けるということが、これまで以上に大切になっています。これが「インフォームド・コンセント」と呼ばれるものです。
これからの医療では、患者さんも医療に関する情報を集め、学ぶ姿勢が求められます。インターネットや書籍などで、自分の病気や治療法について調べてみましょう。もちろん、医師の説明を聞くことも重要です。医師は専門家として、患者さんに分かりやすく病気や治療法について説明する責任があります。
医師と患者さんは、対等な立場で話し合う必要があります。患者さんは自分の希望や不安を伝え、医師はそれに対して丁寧に説明し、一緒に最善の治療方針を決めていきます。医師は一方的に治療方針を押し付けるのではなく、患者さんの意思を尊重しなければなりません。患者さんも、医師の説明をよく聞き、自分の考えを伝える努力が必要です。
特に、高齢化が進む日本では、医療を必要とする人がますます増えることが予想されます。限られた医療資源を有効に活用し、質の高い医療を提供するためにも、インフォームド・コンセントは欠かせません。
インフォームド・コンセントは、より良い医療を実現するための大切な考え方です。患者さん一人ひとりが、自分の治療について理解し、納得した上で治療を受けることができるように、医師と患者さんが共に協力していくことが重要です。
インフォームド・コンセントの重要性 | 具体的な行動 |
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患者さんが自分の治療について理解し、納得した上で治療を受ける | 患者:医療情報を集め、学ぶ 医師:分かりやすく説明する |
医師と患者さんは、対等な立場で話し合う | 患者:希望や不安を伝える 医師:丁寧に説明し、一緒に治療方針を決める |
限られた医療資源を有効に活用し、質の高い医療を提供する | インフォームド・コンセントの実践 |
より良い医療を実現するための大切な考え方 | 医師と患者さんの協力 |