脱健着患で楽に服を着脱

脱健着患で楽に服を着脱

介護を学びたい

先生、「脱健着患」ってどういう意味ですか?なんだか難しい言葉ですね。

介護の研究家

そうだね、少し難しいね。「脱健着患」は、服を着たり脱いだりする時の介助方法の一つだよ。体が動きにくい人や、痛みのある人の負担を少なくするために、順番を考えて服を着脱させる方法なんだ。

介護を学びたい

順番、ですか?具体的にどういう順番でするんですか?

介護の研究家

服を脱がせるときは、健康な方、つまり動かしやすい側から先に脱がせて、最後に麻痺している側や、痛みのある側を脱がせる。服を着せるときは、その逆で、麻痺している側や痛みのある側から先にするんだよ。こうすることで、負担を軽くすることができるんだ。

脱健着患とは。

「介護」と「介助」といった言葉の中で使われる『脱健着患』について説明します。脱健着患とは、服を脱がせるとき、体に痛みがあったり、まひがあったりする反対側から服を脱がせ、最後に動かしにくい方、もしくは痛みのある方をすっと脱がせる方法のことです。着患脱健という言葉もありますが、意味は同じです。

脱健着患とは

脱健着患とは

脱健着患とは、体の片側に麻痺やしびれ、痛みなどがある方の服の着脱を助ける方法です。たとえば、脳卒中などで片麻痺になった場合、体の動きに左右差が生じます。この時、動かしやすい側(健側)から服を着脱しようとすると、動かしにくい側(患側)に負担がかかり、痛みを増したり、関節を痛めてしまうことがあります。脱健着患はこのような負担を軽くし、安全に服を着脱するための介助方法です。

服を脱がせる時は、まず健側から始めます。例えば、シャツを脱がせる場合、麻痺のない腕から袖を抜きます。次に、麻痺のある腕をそっと引き抜き、服を脱がせます。ズボンの場合も同様に、健側の足から脱がせ、最後に患側の足をゆっくりと抜きます。

服を着せる時は、脱がせる時と逆で、患側から始めます。シャツを着せる場合は、まず麻痺のある腕に袖を通し、次に健側の腕を通します。ズボンも同様に、患側の足から履かせ、最後に健側の足を通します。

脱健着患では、相手の状態をよく見て、無理な力を加えないように優しく丁寧に行うことが大切です。痛みや不快感がないか、声かけをしながら進めると安心です。また、着脱しやすい服を選ぶことも重要です。ボタンやファスナーがたくさん付いている服よりも、伸縮性のある素材や前開きの服の方が着脱しやすいでしょう。

着脱する時の姿勢にも気を配りましょう。座った状態で行う場合は、背もたれのある椅子に座り、安定した姿勢を保つことが大切です。寝た状態で行う場合は、体を横向きにして、介助者が支えながら行うと安全です。これらの点に注意することで、脱健着患を適切に行うことができ、要介護者の生活の質を高めることに繋がります。

動作 手順 ポイント
脱衣 健側→患側 ・無理な力を加えない
・声かけをする
・着脱しやすい服を選ぶ
・伸縮性のある素材
・前開きの服
・適切な姿勢
・座る場合は背もたれのある椅子
・寝た場合は横向きで支える
例:シャツ→健側の腕から袖を抜く→患側の腕をそっと引き抜く
例:ズボン→健側の足から脱がせる→患側の足をゆっくり抜く
着衣 患側→健側
例:シャツ→患側の腕に袖を通す→健側の腕を通す
例:ズボン→患側の足から履かせる→健側の足を通す

脱衣の手順

脱衣の手順

衣服を脱ぐお手伝いは、いつもと違うので戸惑う方も多いでしょう。手順を正しく理解し、落ち着いて行うことが大切です。まず、痛みの少ない方、つまり健康な側から脱がせ始めます。

上着を脱がせる場合、まず健康な方の手を袖口から優しく抜きましょう。次に、痛みが気になる方の手を、ゆっくりと袖口から抜きます。この時、腕を急に引っ張ったり、ねじったりすると、痛めてしまうことがあるので、注意が必要です。もし痛みが強い場合は、無理せず、慎重に作業を進めましょう。

シャツのような場合は、裾を上にたくし上げてから、健康な方、痛みが気になる方の順に脱がせます。ズボンの場合は、まず健康な方の足をズボンから抜き、次に痛みが気になる方の足をゆっくりと抜きます。この時も、足を無理に曲げたり動かしたりすると、痛みが増す可能性があります。ですので、十分に配慮しながら行いましょう。スカートの場合は、ウエスト部分を持って、健康な方からゆっくりと下ろしていきます。

衣服の種類や、お手伝いする方の状態に合わせて、適切な方法を選びましょう。焦らず、ゆっくりと、そして丁寧に進めることが大切です。お手伝いを受けている方が、痛みや不快感を訴えた場合は、すぐに作業を中断し、状態を確認してください。必要に応じて、医師や看護師に相談することも大切です。

脱衣介助は、単に服を脱がせるだけでなく、相手への思いやりが大切です。声かけをしながら、安心感を与え、快適に過ごせるように心がけましょう。

衣服の種類 手順 注意点
上着
  1. 健康な側の手を袖口から抜く
  2. 痛みが気になる方の手を袖口から抜く
腕を急に引っ張ったり、ねじったりしない
シャツ
  1. 裾を上にたくし上げる
  2. 健康な側から脱がせる
  3. 痛みが気になる方を脱がせる
ズボン
  1. 健康な側の足をズボンから抜く
  2. 痛みが気になる方の足をズボンから抜く
足を無理に曲げたり動かしたりしない
スカート
  1. ウエスト部分を持って、健康な方からゆっくりと下ろす
  • 衣服の種類や状態に合わせて適切な方法を選ぶ
  • 焦らず、ゆっくりと、丁寧に進める
  • 痛みや不快感を訴えた場合は、すぐに中断し状態を確認、必要に応じて医師や看護師に相談
  • 声かけをしながら、安心感を与え、快適に過ごせるように心がける

着衣の手順

着衣の手順

着る動作を助ける介助は、脱ぐ動作を助ける介助と反対の手順で行います。つまり、動かしにくい側から服を着せていきます

上着を着せる場合は、まず動かしにくい方の手を袖口に通し、それから動かしやすい方の手を通します。
袖口が狭くて通しにくい場合は、袖口を少し広げながら、優しく手を袖に通してください。腕を曲げ伸ばしするのが難しい場合は、肘や肩を支えながら、ゆっくりと動かして袖を通します。シャツなどの場合は、まず動かしにくい方の腕を通し、次に動かしやすい方の腕を通してから、裾を下ろします。
裾を下ろす際は、服がねじれたり、しわになったりしていないか確認しましょう。

ズボンの場合は、まず動かしにくい方の足をズボンに通し、次に動かしやすい方の足を通します。この際、動かしにくい方の足を無理に動かさないようにゆっくりと丁寧に行うことが大切です。座った状態でズボンを履くことが難しい場合は、寝た状態で履かせ、その後、ゆっくりと起き上がらせます。ズボンを履かせた後、ウエストの位置や丈が適切かどうか確認し、必要に応じて調整します。

スカートの場合は、ウエスト部分を持って、動かしにくい方からゆっくりと持ち上げます。スカート丈が長すぎると、転倒の危険性があるので注意が必要です。

服を着せる介助全体を通して、脱がせる介助と同様に、介助を受ける方の様子をよく観察しながら行うことが大切です。痛みや不快感を訴えた場合は、すぐに作業を中断し、状態を確認しましょう無理に着衣させようとせず、介助を受ける方の調子に合わせて進めることが重要です。また、着脱しやすい服を選ぶことも、着せやすく、介助を受ける方の負担を減らすことに繋がります。ボタンやファスナーが少ない、伸縮性のある素材の服を選ぶと、介助を受ける方自身も着脱しやすくなります。前開きの服もおすすめです。服の選択も、介助を受ける方が心地よく生活する上で重要な要素となります。

衣服の種類 介助の手順 注意点
上着
  1. 動かしにくい方の手を袖口に通す
  2. 動かしやすい方の手を袖口に通す
  3. 袖口が狭い場合は、広げながら優しく手を通す
  4. 腕の曲げ伸ばしが難しい場合は、肘や肩を支えながらゆっくりと動かす
  • 肘や肩を支える
  • ゆっくりと動かす
シャツ
  1. 動かしにくい方の腕を通す
  2. 動かしやすい方の腕を通す
  3. 裾を下ろす
  • 服がねじれたり、しわになったりしていないか確認する
ズボン
  1. 動かしにくい方の足をズボンに通す
  2. 動かしやすい方の足を通す
  3. 座った状態で難しい場合は、寝た状態で履かせ、その後、ゆっくりと起き上がらせる
  • 動かしにくい方の足を無理に動かさない
  • ゆっくりと丁寧に行う
  • ウエストの位置や丈が適切か確認し、必要に応じて調整する
スカート
  1. ウエスト部分を持って、動かしにくい方からゆっくりと持ち上げる
  • スカート丈が長すぎると、転倒の危険性があるので注意する
全般
  • 介助を受ける方の様子をよく観察しながら行う
  • 痛みや不快感を訴えた場合は、すぐに作業を中断し、状態を確認する
  • 無理に着衣させようとせず、介助を受ける方の調子に合わせて進める
  • 着脱しやすい服(ボタンやファスナーが少ない、伸縮性のある素材、前開き)を選ぶ
  • 介助を受ける方の負担を減らす
  • 心地よく生活できる

注意点

注意点

衣服の着脱介助は、日常生活における基本的な動作ではありますが、要介護者にとっては大きな負担となる場合もあります。そのため、介助を行う際には、要介護者の尊厳を守り、プライバシーに配慮することが何よりも大切です。

衣服を着脱させる際は、身体の露出を最小限にするよう心がけましょう。タオルや毛布などを活用し、必要な部分だけを露出させながら、他の部分は覆うようにすることで、羞恥心や不安感を軽減することができます。また、明るい照明の下ではなく、落ち着いた雰囲気の中で行うことも重要です。

介助中は、常に要介護者とコミュニケーションを取り、状況を説明しながら進めることが大切です。「これからズボンを脱がせていただきますね」「腕を少し持ち上げてもらえますか」といった声掛けをすることで、要介護者の不安を和らげ、協力体制を築くことができます。表情や声色にも気を配り、安心感を与えられるように努めましょう。

さらに、室温にも配慮が必要です。冬場は暖房で部屋を暖め、夏場は冷房で涼しくするなど、季節に応じた温度調整を行い、快適な環境を整えましょう。急激な温度変化は体調を崩す原因となる場合もあるため、衣服を着脱させる前後の室温管理にも注意が必要です。

衣服の着脱介助は、単に衣服を着脱させる行為だけではなく、要介護者との信頼関係を築き、身体的・精神的な負担を軽減するための重要な介護技術です。常に要介護者の立場に立ち、思いやりの心を持って接することで、より良いケアを提供できるでしょう。

衣服の着脱介助のポイント 具体的な方法
尊厳とプライバシーの配慮 身体の露出を最小限にする、タオルや毛布などを活用する
落ち着いた環境 明るい照明を避け、落ち着いた雰囲気で行う
コミュニケーション 状況説明、声掛け、表情や声色に気を配る
室温への配慮 季節に応じた温度調整、着脱前後の室温管理

まとめ

まとめ

片麻痺などの麻痺や痛みを抱える方にとって、衣服の着脱は容易ではありません。そこで、「脱健着患」という介助技術が大きな役割を果たします。これは、麻痺や痛みのある側(患側)から服を着せ、麻痺や痛みのない側(健側)から服を脱がせる方法です。

患側から着衣することで、腕や肩の動きを最小限に抑え、痛みや不快感を軽減することができます。たとえば、シャツを着せる際、まず患側の腕を袖に通し、次に健側の腕を通します。こうすることで、患側の腕を必要以上に動かすことなく、スムーズに着衣できます。反対に、脱衣時は健側から行うことで、患側の関節への負担を減らし、痛みを和らげることができます。

脱健着患を行う際は、手順を正しく理解することが重要です。手順を間違えると、かえって痛みを増強させてしまう可能性があります。また、要介護者の状態に配慮することも欠かせません。痛みや麻痺の程度、関節の可動域などは一人ひとり異なります。それぞれの状態に合わせて、優しく、丁寧に着脱を介助する必要があります。

衣服の選び方も大切です。ボタンやファスナーの多い服、きつい服は着脱が困難です。前開きで、伸縮性のある素材の服など、着脱しやすい衣服を選ぶことで、要介護者の負担を軽減できます。

脱健着患は、ただ服を着脱させるだけの行為ではありません。要介護者の尊厳を守り、日常生活の質を高めるための大切な介助です。介助者は常に要介護者の気持ちに寄り添い、安心感を与えられるよう努めなければなりません。必要に応じて、医師や理学療法士などの専門家と連携し、より良い介助方法を検討することも大切です。適切な脱健着患の実践は、要介護者の自立を支え、より豊かな生活を送るための大きな力となります。介護に携わる者にとって、脱健着患の技術を身につけ、実践することは必要不可欠と言えるでしょう。

脱健着患とは 麻痺や痛みのある側(患側)から服を着せ、麻痺や痛みのない側(健側)から服を脱がせる介助技術
目的 麻痺や痛みを抱える方の衣服の着脱を容易にし、痛みや不快感を軽減すること、日常生活の質を高めること
着衣 患側から行うことで、腕や肩の動きを最小限に抑え、痛みや不快感を軽減
脱衣 健側から行うことで、患側の関節への負担を減らし、痛みを和らげる
重要なポイント
  • 手順を正しく理解する
  • 要介護者の状態(痛みや麻痺の程度、関節の可動域など)に配慮する
  • 優しく、丁寧に介助する
  • 着脱しやすい衣服を選ぶ
  • 要介護者の尊厳を守る
  • 必要に応じて、医師や理学療法士などの専門家と連携する
効果 要介護者の自立を支え、より豊かな生活を送るための力となる