ホスピスという選択
介護を学びたい
先生、「ホスピス」ってよく聞くんですけど、病院と同じ意味なんですか?
介護の研究家
そうだね、今までホスピスは病院の中にあることが多かったから、病院と同じように思っている人が多いのは確かだね。でも、最近は病院以外でもホスピスをおこなう施設が増えてきているんだ。
介護を学びたい
病院以外の施設でもできるんですか?どんなところがありますか?
介護の研究家
例えば、有料老人ホームなどでもホスピスを受けられるところがあるんだよ。病気の治療ではなく、苦痛を和らげたり、不安な気持ちを楽にするお手伝いをする場所と考えてみてね。
ホスピスとは。
『終末期ケア』というと、病院の中にある『緩和ケア病棟』で行われるものだというイメージを持っている方が多いかもしれません。この終末期ケアは、痛みを和らげ、穏やかに最期を迎えるための治療やケアを指す『ホスピス』と同じ意味です。これまでホスピスは病院で行われてきたため、『ホスピス=医療機関』という認識が広まりました。しかし、最近は有料老人ホームなど、ホスピスを提供する施設が増え、選べる場所も広がっています。ホスピスでは、病気を治すための治療は行わず、痛みをやわらげたり、心の不安を取り除いたりするケアを中心に行います。
ホスピスとは
ホスピスとは、人生の終末期を迎えられた方が、穏やかで安らかな時間を過ごせるよう、身体的、精神的な苦痛を取り除き、その人らしく最期の時を過ごせるように支えるためのケアです。医療機関で行われることもありますが、近年では住み慣れた自宅や介護施設など、様々な場所で受けることができます。
ホスピスでは、痛みや息苦しさなどの身体的な症状を和らげる医療を提供するだけでなく、不安や孤独、死への恐怖といった精神的な苦痛にも寄り添います。患者さんだけでなく、ご家族の精神的な支えとなることも、ホスピスの大切な役割です。医師や看護師だけでなく、介護福祉士、薬剤師、栄養士、社会福祉士、ボランティアなど、多職種が連携して、患者さんとご家族の気持ちに寄り添い、きめ細やかなケアを提供します。
従来の医療は、病気を治すことを目的としていますが、ホスピスは生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を高めることを目的としています。最期の時をどのように過ごしたいか、どのようなケアを受けたいか、患者さんの意思を尊重し、残された時間を大切に過ごせるように支援します。具体的には、好きな音楽を聴いたり、家族とゆっくり話したり、思い出の写真を見たり、穏やかな時間を過ごせるように様々な工夫を行います。
また、ホスピスではご家族への支援も重要です。患者さんの介護に関する相談に乗ったり、精神的な支えとなることで、ご家族が安心して患者さんと寄り添えるようサポートします。看取りの後も、悲しみに暮れるご家族を支え、立ち直るための援助を行います。ホスピスは、人生の最期を温かく、そして安らかに迎えられるよう、患者さんとご家族を支える大切な場所です。
項目 | 説明 |
---|---|
目的 | 人生の終末期を迎えた方が、穏やかで安らかな時間を過ごせるように、身体的、精神的な苦痛を取り除き、その人らしく最期の時を過ごせるように支える。生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を高める。残された時間を大切に過ごせるように支援する。 |
場所 | 医療機関、自宅、介護施設など |
ケアの内容 | 身体的な症状の緩和、不安や孤独、死への恐怖といった精神的な苦痛への寄り添い、患者さんの意思を尊重したケアの提供(好きな音楽を聴く、家族と話す、思い出の写真を見るなど)、ご家族への支援(介護相談、精神的な支え、看取り後のサポート) |
提供者 | 医師、看護師、介護福祉士、薬剤師、栄養士、社会福祉士、ボランティアなど多職種連携 |
対象 | 患者と家族 |
ホスピスの場所
終末期医療を受けながら、穏やかに過ごすための場所として「ホスピス」があります。ホスピスと聞くと、病院の一つの病棟である緩和ケア病棟を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は様々な場所でそのケアを受けることができます。
住み慣れた家で最期まで過ごしたいと願う方にとっては、在宅ホスピスが一つの選択肢です。この場合、訪問看護師や医師が定期的に自宅に訪問し、症状の緩和や療養上の世話、精神的な支えなどを行います。家族への支援も行われるため、自宅での介護負担を軽減することに繋がります。
また、自宅での生活が難しくなった場合には、施設を選ぶことも可能です。特別養護老人ホームなどの介護施設の中には、看取りケアに対応している所もあります。あるいは、ホスピスのための施設もあります。これらの施設では、医師や看護師による医療的なケアはもちろんのこと、日常生活の支援や精神的なケアまで、包括的なサービスを受けることができます。落ち着いた環境の中で、最期の時まで安心して過ごすことができます。
近年は、住み慣れた地域で最期まで自分らしく過ごせるように、「地域包括ケアシステム」の整備が進んでいます。これは、医療、介護、福祉、生活支援などの様々なサービスを地域で連携させ、切れ目なく提供していく仕組みです。在宅ホスピスもこのシステムの中に位置づけられており、住み慣れた地域での生活を継続するための様々な支援を受けることが可能になってきています。
ホスピスの場所は一つではなく、様々な選択肢があります。それぞれの状況や希望に合わせて、ご本人やご家族にとって最適な場所を選ぶことが大切です。医師や看護師、ケアマネジャーなどの専門家とよく相談し、納得のいく選択をしましょう。
ホスピスの種類 | 場所 | サービス内容 | メリット |
---|---|---|---|
在宅ホスピス | 自宅 | 訪問看護師・医師による定期訪問、症状緩和、療養上の世話、精神的支援、家族支援 | 住み慣れた自宅で最期まで過ごせる、家族の負担軽減 |
施設ホスピス | ホスピスのための施設、特別養護老人ホームなど | 医療ケア、日常生活支援、精神的ケア | 包括的なサービス、落ち着いた環境 |
地域包括ケアシステム | 住み慣れた地域 | 医療・介護・福祉・生活支援など | 住み慣れた地域での生活継続 |
ホスピスのケア内容
ホスピスでは、病気を治すための治療ではなく、病気によって生じる痛みや苦しみを取り除き、心も体も穏やかに過ごせるようにお手伝いすることを目的とした様々なケアを提供しています。具体的には、痛みを抑えるための薬による治療や、不安や落ち込みといった心の負担を軽くするための相談、そして体を動かす機能を維持・回復するための訓練などがあります。
痛みは、体に感じるだけでなく心に影響を与えることもあります。そのため、痛みを和らげることは、穏やかに過ごす上でとても重要です。医師や看護師が、それぞれの状態に合わせて薬の種類や量を調整し、痛みをできる限り抑えるよう努めます。また、心の痛みについても、専門の相談員が話を聞き、気持ちの整理や不安の軽減をサポートします。
体を動かす訓練は、寝きりや衰えを防ぎ、自分でできることを増やすことで、日々の暮らしをより豊かにすることを目指します。理学療法士や作業療法士などが、個々の状態に合わせて適切な運動や活動を提供します。
ホスピスでは、ご本人だけでなく、ご家族への心の支えも大切にしています。病気の進行に対する不安や、介護の負担など、ご家族が抱える様々な悩みに寄り添い、相談に乗ったり、必要な情報を提供したりすることで、ご家族が安心して過ごせるよう支援します。
食事やお風呂、トイレなどの日常生活の支援も、ホスピスにおいて大切なケアの一つです。できる限りご自分で行えるようにお手伝いし、その人らしさを尊重しながら、尊厳を保って生活を送れるよう支援します。最期まで、その方が望むような生き方ができるよう、一人ひとりの希望に合わせたケアを提供することを心がけています。
ケアの目的 | 具体的なケア内容 | 対象 |
---|---|---|
痛みや苦しみを取り除き、心も体も穏やかに過ごせるようにする | 痛みを抑えるための薬物療法(医師・看護師) | ご本人 |
不安や落ち込みといった心の負担を軽くするための相談(相談員) | ||
体を動かす機能を維持・回復するための訓練(理学療法士・作業療法士) | ||
ご家族の支援 | 病気の進行に対する不安や介護の負担など、ご家族の悩みに対する相談、情報提供 | ご家族 |
安心して過ごせるよう支援 | ||
日常生活の支援 | 食事、お風呂、トイレなどの日常生活の支援 | ご本人 |
その人らしさを尊重し、尊厳を保った生活の支援、最期まで望むような生き方をできるよう一人ひとりの希望に合わせたケアの提供 |
ホスピスと緩和ケアの違い
「看取りの場」として知られるホスピスと緩和ケア。どちらも苦痛を取り除き、穏やかな時間を過ごすためのものですが、提供される時期や内容に違いがあります。緩和ケアは、病気が見つかった時、すぐにでも始めることができます。病気の治療を行いながら、痛みや気持ちのつらさを和らげ、少しでも楽に過ごせるように支えるケアです。抗がん剤治療などを行う場合でも、同時に緩和ケアを受けることができます。つまり、緩和ケアは病気を治す治療と並行して行うことができるのです。
一方、ホスピスは、病気を治す治療が難しくなった時期に、人生の最期を穏やかに迎えるためのケアです。病気を治すための積極的な治療は行わず、痛みや苦しみを取り除き、心穏やかに過ごせるように支えます。食事や排泄の世話、身体を清潔にすることなど、日常生活の援助もホスピスの大切な役割です。そして、患者さんだけでなく、家族の気持ちの支えにもなります。
緩和ケアは、病気を治す治療と共存しますが、ホスピスは治療を目的とせず、生活の質を高めることに重点を置いています。過ごす場所は、緩和ケアの場合は自宅や病院、緩和ケア病棟など様々ですが、ホスピスはホスピス病棟、または自宅で行われます。
どちらも、患者さんとその家族が身体的、精神的な苦痛から解放され、穏やかな時間を過ごせるように支えるための大切なケアです。どちらのケアを選択するかは、患者さんの状態や希望、家族の状況などを考慮して決めることが大切です。
項目 | 緩和ケア | ホスピス |
---|---|---|
開始時期 | 病気と診断された時(治療と並行可能) | 治癒が難しい時期 |
目的 | 痛みや苦痛の緩和、QOL向上 | 人生の最期を穏やかに過ごすためのケア |
治療との関係 | 治療と並行可能 | 積極的な治療は行わない |
内容 | 痛み、精神的苦痛の緩和、生活の支え | 痛み、苦痛の緩和、日常生活の援助、精神的支え |
場所 | 自宅、病院、緩和ケア病棟など | ホスピス病棟、自宅 |
ホスピスの利用
人生の最期を穏やかに過ごす場所として、ホスピスという選択肢があります。ホスピスは、病状が進行し、治癒を目指す治療が難しくなった方々が、痛みや苦しみを和らげ、自分らしく最期の時を過ごすことができるように支援する施設です。
ホスピスの利用を検討し始めたら、まずは主治医や病院に勤務する相談員(医療ソーシャルワーカー)に相談してみましょう。病状や生活状況に合わせた適切な助言や、利用可能なホスピスの紹介など、様々な支えを得ることができます。
病院以外にも、地域包括支援センターや市区町村の窓口でも相談を受け付けています。これらの窓口では、地域にある様々な介護サービスや医療機関の情報提供、手続きの支援などを行っています。住んでいる地域で利用できるホスピスについても、詳しく教えてもらうことができます。
ホスピスでは、医師や看護師、相談員などの専門スタッフが24時間体制で、身体のつらさだけでなく、心の悩みにも寄り添ったケアを提供します。家族への支援も行っているため、最期の時を大切な人と穏やかに過ごすことができます。
ホスピスには、利用できる期間や費用、提供されるサービス内容など、それぞれに特徴があります。複数の施設を比較検討し、自分らしい最期を迎えられる場所を選ぶことが大切です。そのためにも、早めの情報収集と相談が重要です。人生の最期をどう過ごしたいのか、じっくりと考え、悔いのない選択をしましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
ホスピスとは | 人生の最期を穏やかに過ごすための施設。治癒困難な病状の方々が、痛みや苦しみを和らげ、自分らしく最期の時を過ごせるよう支援する。 |
相談窓口 |
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ホスピスのサービス | 医師、看護師、相談員等による24時間体制のケア(身体的・精神的なケア、家族への支援など) |
ホスピス選び | 利用期間、費用、サービス内容などが異なるため、複数の施設を比較検討し、自分らしい最期を迎えられる場所を選ぶことが重要。早めの情報収集と相談が大切。 |
まとめ
人生の終わりが近づいた時、穏やかに過ごせる場所としてホスピスという選択肢があります。ホスピスは、ただ病気を治すためだけの場所ではなく、残された時間を大切に、そして自分らしく生きるための場所です。以前は病院の中にあることが多かったホスピスですが、今では自宅や介護施設など様々な場所で利用できるようになり、一人ひとりの希望に合わせた過ごし方ができるようになっています。
ホスピスでは、痛みや苦しみを取り除くための医療はもちろんのこと、心のケアにも力を入れています。病気への不安や死への恐怖、やり残したことへの後悔など、様々な思いを抱える患者さんの心に寄り添い、穏やかに過ごせるよう支えてくれます。また、患者さんだけでなく、家族のサポートも大切な役割です。介護の負担を軽くするための手伝いや、心のケア、悲しみを分かち合う場などを提供することで、家族が患者さんと共に安心して最期の時間を過ごせるように支えています。
ホスピスには、医師や看護師だけでなく、様々な専門家が関わっています。例えば、心のケアを行うカウンセラー、身体の痛みを和らげる理学療法士、栄養のバランスを整える管理栄養士などです。それぞれの専門家が協力して、患者さんと家族を支える体制が整えられています。人生の最終段階において、どのようなケアを受けたいのか、家族とよく話し合い、準備を進めておくことが大切です。ホスピスという選択肢があることを知り、必要に応じて積極的に利用を検討することで、自分らしい最期を迎えることができるでしょう。残された時間をどのように過ごすのか、悔いのないように大切な人と話し合い、穏やかな時間を過ごせるよう準備を進めていきましょう。
項目 | 説明 |
---|---|
ホスピスの場所 | 病院内だけでなく、自宅や介護施設など様々な場所で利用可能 |
ホスピスの役割 | 病気の治療ではなく、残された時間を大切に、自分らしく生きるための場所 |
ホスピスで提供されるケア |
|
ホスピスに関わる専門家 | 医師、看護師、カウンセラー、理学療法士、管理栄養士など |
大切なこと | 家族とよく話し合い、どのようなケアを受けたいのか準備しておく |