成年後見制度と旧準禁治産制度
介護を学びたい
先生、「準禁治産者」って最近聞かない言葉ですが、どういう意味ですか?何か特別な支援が必要な人のことですか?
介護の研究家
良い質問ですね。昔は、判断能力が少し弱っている人を「準禁治産者」と呼んでいました。例えば、浪費癖があったり、判断力が少し足りないために、財産管理などで不利な契約をしてしまわないように守る必要があったりする人のことです。
介護を学びたい
なるほど。今は使われていない言葉なんですよね?
介護の研究家
そうです。今は「成年後見制度」といって、より適切な支援ができる制度ができました。「準禁治産者」は「被保佐人」や「被補助人」という言葉に変わりました。それぞれの状態に合わせて、支援する人が選任されるんです。
準禁治産者とは。
「介護」と「介助」について説明する中で出てくる言葉に昔は『準禁治産者』というものがありました。これは、体が弱っていたり、お金を使いすぎてしまう癖のある人のために、家庭裁判所が決めたものでした。しかし、今は大人の人を守るための新しい仕組みができたので、『準禁治産者』という言葉は使われなくなりました。代わりに、『保佐人』の世話を受ける人、または『補助人』の世話を受ける人と呼ばれるようになりました。
制度の変遷
かつて日本では、判断能力が十分でない方を守るための仕組みとして、禁治産制度と準禁治産制度がありました。これらの制度は、家庭裁判所が、心や体の不調やお金の使い方が荒いことなどを理由に、禁治産者または準禁治産者と判断するものでした。
禁治産者と判断された方は、財産を管理したり、契約を結んだりといった、日常生活における様々な行動について、法律上の資格が制限されていました。例えば、自分で預金を引き出したり、家や土地を売買したりすることができませんでした。常に、親族や弁護士などが代理人として代わりに手続きを行う必要がありました。これは、判断能力が不十分な方を保護するためでしたが、同時に、本人の権利や自由を大きく制限してしまうという問題もありました。
一方、準禁治産者と判断された方は、禁治産者ほどではありませんが、一部の行動について資格が制限されていました。例えば、高額な商品の購入や不動産の売買など、重要な法律行為を行う際には、代理人の同意が必要でした。日常生活を送る上では、ある程度の自由は認められていましたが、大きな金額の取引など、判断を誤ると重大な不利益を被る可能性のある行為については、代理人のサポートが必要とされていました。
しかし、これらの制度は、時代の変化とともに、様々な問題点が指摘されるようになりました。例えば、本人の権利を必要以上に制限しているという批判や、現代社会の複雑な状況に対応できていないという指摘がありました。また、禁治産者や準禁治産者という名称は、差別的であるという意見もありました。そこで、平成12年、これらの制度は廃止され、成年後見制度へと移行しました。成年後見制度は、本人の意思や人格を尊重し、必要な範囲で支援を提供することを目的とした、より柔軟で、本人中心の制度です。判断能力が低下した方々も、社会の一員として尊重され、可能な限り自立した生活を送れるよう、様々な支援が提供されています。
制度 | 対象 | 制限内容 | 問題点 |
---|---|---|---|
禁治産制度 | 判断能力が十分でない方 | 財産管理、契約など、日常生活における様々な行動に制限 | 権利や自由の過度な制限 |
準禁治産制度 | 判断能力が一部不十分な方 | 高額な商品の購入や不動産の売買など、一部の行動に制限 | 大きな金額の取引など、判断ミスによる不利益発生の可能性 |
(共通) |
|
平成12年に廃止され、成年後見制度に移行(本人の意思や人格を尊重し、必要な範囲で支援)
準禁治産者の定義
今は使われていない言葉ですが、昔は『準禁治産者』という言葉がありました。これは、心や体が弱っている、もしくは無駄遣いが多いなど、自分の財産をきちんと管理するのが難しいと判断された人のことを指します。
具体的にどのような人が当てはまるかというと、お酒や賭け事、度を越した買い物などで財産を減らしてしまう人です。また、物忘れがひどくなるなど、判断する力が弱まっている人も含まれていました。
家庭裁判所というところが、本人の状態や家族からの願いなどをよく調べて、準禁治産者とするかどうかを決めていました。
準禁治産者になると、『保佐人』と呼ばれる手伝い役の人がつきます。家や土地を売る、高価なものを買うといった大きなお金が関わることについて、保佐人の同意がなければできませんでした。これは、本人が損をすることがないようにするための仕組みでした。
ただし、毎日の生活で普通に行うこと、例えば、ご飯を食べたり、服を買ったりといったことは、本人の判断で自由に行うことができました。
準禁治産者制度は、平成12年に廃止され、今は『成年後見制度』という制度になっています。成年後見制度では、判断能力の程度に応じて『後見』、『保佐』、『補助』の3つの類型があり、より柔軟に支援ができるようになりました。判断能力が低い人を守るという目的は変わりませんが、本人の意思を尊重し、できる限り自分で決められるようにすることが重視されています。
制度名 | 対象者 | 役割 | 制限 | 自由な行為 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
準禁治産者制度 (廃止) | 心身衰弱、浪費癖など財産管理が難しい人 | 保佐人:重要な財産行為に同意 | 不動産売買、高額商品購入などに保佐人の同意が必要 | 日常生活における行為 (食事、衣服購入など) | 平成12年に廃止 |
成年後見制度 (現行) | 判断能力の程度に応じて支援が必要な人 | 後見人、保佐人、補助人:判断能力に応じて支援 | 判断能力に応じて制限あり | 判断能力に応じて可能な限り自由 | 本人の意思を尊重、3類型 (後見、保佐、補助) |
成年後見制度への移行
平成12年4月1日、成年後見制度が始まりました。これに伴い、それまでの禁治産制度と準禁治産制度はなくなりました。新しい制度では、本人の持つ権利や自分で物事を決める力を大切にしながら、困っている部分を助けることを目指しています。
この成年後見制度には、判断する力の状態に合わせて「後見」「保佐」「補助」の三つの種類があります。判断する力がとても弱くなってしまっている場合は「後見」となり、日常生活を送るのも難しい場合に利用されます。たとえば、一人では契約を結ぶことが難しい、お金の管理ができないといった場合です。次に「保佐」は、判断する力が弱まっているものの、日常生活は送れる程度の場合に利用されます。重要な契約を結ぶ際に、保佐人の同意が必要となります。最後に「補助」は、判断する力が少し弱っている場合に利用されます。本人の判断を補助人がサポートすることで、より確実な意思決定を目指します。
それぞれの制度には、後見人、保佐人、補助人という役割の人が選ばれ、本人の生活やお金の管理を助けます。家族や親族、社会福祉士、弁護士などが選ばれることもあります。成年後見制度に移行したことで、禁治産者や準禁治産者といった呼び名は使われなくなり、それぞれ被後見人、被保佐人、被補助人と呼ばれるようになりました。これは、本人の尊厳を守るための大切な変更です。成年後見制度は、誰もが安心して暮らせる社会を作るための重要な制度です。
制度 | 判断能力の状態 | 必要な支援 | 支援者の役割 | 旧制度での呼称 | 新制度での呼称 |
---|---|---|---|---|---|
後見 | とても弱っている (日常生活も困難) | 契約締結や金銭管理の代行 | 後見人 | 禁治産者 | 被後見人 |
保佐 | 弱っている (日常生活は可能) | 重要な契約締結時の同意 | 保佐人 | 準禁治産者 | 被保佐人 |
補助 | 少し弱っている | 判断のサポート | 補助人 | – | 被補助人 |
被保佐人と被補助人
かつて準禁治産と呼ばれていた方々は、今の成年後見制度では、主に被保佐人に当たります。被保佐人とは、物事を考え判断する力が弱まっているため、財産に関する大切な決め事をする時には、保佐人というサポート役の同意を得る必要がある人のことです。例えば、家や土地などの不動産を売買する場合や、高額な買い物をする場合、またはお借入れをする場合などには、保佐人がその方の利益を守り、不利益を被らないようにサポートします。具体的には、契約内容をよく理解しているかを確認したり、本当に必要な取引かどうかを一緒に考えたり、場合によっては代わりに契約手続きを進めてくれたりします。
また、以前準禁治産と呼ばれていた方々の中には、今の制度では被補助人に当たる場合もあります。被補助人は、判断する力が一部弱まっているものの、普段の生活を送る上では大きな問題はありません。食事や着替え、外出といった日常生活動作は自立して行うことができます。しかし、特定の行為、例えば複雑な内容の契約を結ぶ時や、預貯金の管理など、財産を扱う場面においては、補助人というサポート役の援助を受けることで、より安全に、そして確実に物事を進めることができます。補助人は、被補助人の意思を尊重しながら、必要な情報を提供したり、手続きを一緒に進めたり、アドバイスをすることで、被補助人が安心して生活を送れるよう支えます。
このように、以前の準禁治産制度に代わって導入された成年後見制度では、本人の状態に合わせて、保佐と補助という二つのサポートの仕方が用意されています。どちらの制度を利用するかは、本人の判断能力の程度や、日常生活における自立度、そしてどのような場面でどのようなサポートが必要かによって、家庭裁判所が判断します。そして、本人の権利を守り、安心して生活を送れるように支援することを目指しています。
制度 | 対象者 | 判断能力 | 日常生活 | サポート内容 | サポート役 |
---|---|---|---|---|---|
保佐 | 被保佐人 (かつての準禁治産者に相当) | 弱まっている | 記載なし | 財産に関する大切な決め事をする際に同意を得る必要がある (例: 不動産売買、高額な買い物、借入) | 保佐人 |
補助 | 被補助人 (かつての準禁治産者に相当) | 一部弱まっている | 自立して行える (食事、着替え、外出など) | 特定の行為(複雑な契約、預貯金管理など)で援助を受ける | 補助人 |
制度変更の目的
成年後見制度への移行は、名前が変わっただけではありません。制度の根本的な考え方が大きく変わりました。以前の禁治産制度や準禁治産制度では、本人を守ることを重視しすぎて、権利を制限しすぎるという問題点が指摘されていました。本人の気持ちを考えずに、一方的に判断する能力がないと決めつけてしまうことが多かったのです。これに対し、成年後見制度は、本人の権利と自分で決める権利を大切にすることを基本としています。できる限り本人の気持ちを尊重し、必要な手助けをすることで、本人が社会の中で自立した暮らしを送れるようにすることを目指しています。
具体的には、以前の制度では、家庭裁判所が本人に代わりに財産管理や契約などを行うことが一般的でした。しかし、成年後見制度では、本人が自分でできることは自分で行い、できない部分だけを後見人が支援するという考え方が重視されています。例えば、日常生活の買い物や趣味の活動などは、本人が自分で行うことを尊重し、後見人は必要に応じて助言や金銭管理のサポートを行います。また、重要な契約や不動産取引など、本人が判断することが難しい場合には、後見人が代理人として手続きを行います。
このように、成年後見制度は、本人の意思を尊重し、必要な支援を提供することで、本人が社会参加できるよう後導することを目的としています。これまでの制度のように、ただ保護するだけでなく、本人の持っている力を最大限に活かし、自立した生活を送れるように支えることが重要です。つまり、守ることから支えることへ、制度の役割が大きく変わったと言えるでしょう。制度の変更によって、本人の尊厳と人権がより尊重されるようになったと言えるでしょう。
項目 | 旧制度(禁治産・準禁治産) | 新制度(成年後見) |
---|---|---|
制度の考え方 | 本人保護重視・権利制限 | 本人の権利・自己決定権尊重 |
判断能力 | 一方的に判断能力がないと決めつけ | できる限り本人の気持ちを尊重 |
財産管理・契約 | 家庭裁判所が代行 | 本人が自分でできることは自分で行い、できない部分だけを後見人が支援 |
日常生活 | 制限される傾向 | 買い物や趣味は自分で行い、後見人は必要に応じて助言や金銭管理をサポート |
重要な契約等 | 家庭裁判所または後見人が代行 | 後見人が代理人として手続き |
制度の目的 | 保護 | 社会参加の後導、自立支援 |
制度の役割 | 守ること | 支えること |
その他 | 本人の尊厳と人権があまり尊重されていない | 本人の尊厳と人権が尊重されている |
現代社会への適合
現代社会は、高齢化や障害を持つ方の社会参加といった、様々な課題に直面しています。これらに適切に対応するために、成年後見制度が設けられました。
まず、高齢化の進展に伴い、認知症など判断能力が低下する高齢者が増えています。このような方々は、財産管理や契約など、日常生活を送る上で様々な困難に直面することがあります。成年後見制度は、本人の意思を尊重しつつ、必要な支援を提供することで、高齢者が安心して暮らせるよう支える役割を担っています。具体的には、後見人が本人に代わって必要な手続きを行ったり、適切な助言やサポートを提供したりすることで、本人の権利と利益を守ります。
また、障害者権利条約の批准も、成年後見制度導入の大きな要因です。この条約は、障害を持つすべての人が、他の人々と同じように社会に参加し、尊厳ある生活を送る権利を保障しています。成年後見制度は、障害を持つ方の意思決定を支援し、社会生活を円滑に進めるための重要な役割を果たしています。例えば、日常生活における意思決定の支援や、社会参加を促進するための必要な手続きの代行などを通じて、障害を持つ方の自立と社会参加を後押しします。
従来の禁治産制度や準禁治産制度は、画一的な判断基準に基づいており、現代社会の多様性に対応しきれていませんでした。例えば、判断能力の程度や、生活状況、ニーズなどは人それぞれ異なるにもかかわらず、柔軟な対応が難しかったのです。これに対し、成年後見制度は、個々の状況に合わせた柔軟な対応を可能にし、本人の権利と尊厳をより効果的に守ることができます。
今後、社会はますます変化していくと考えられます。成年後見制度も、社会の変化に適応していくために、継続的な見直しと改善が必要です。より良い制度とするために、関係者一人一人が現状の課題を認識し、制度の改善に協力していくことが大切です。
課題 | 従来の制度の課題 | 成年後見制度の対応 | 目的 |
---|---|---|---|
高齢化の進展に伴う認知症高齢者の増加 | 禁治産・準禁治産制度: 画一的な判断基準 柔軟な対応が難しい |
本人意思を尊重しつつ、必要な支援(手続き代行、助言、サポート)を提供 | 高齢者の権利と利益を守り、安心して暮らせるようにする |
障害者権利条約批准による障害者の社会参加促進の必要性 | 個々の状況に合わせた柔軟な対応(意思決定支援、手続き代行など) | 障害者の自立と社会参加を後押しし、尊厳ある生活を保障する |
今後の展望 | 社会の変化に適応するための継続的な見直しと改善が必要 |
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