院内感染を防ぐために

院内感染を防ぐために

介護を学びたい

先生、『院内感染』って、病院で病気をもらっちゃうことですよね?どんなふうに起きるのですか?

介護の研究家

そうだね、病院の中で病気をもらってしまうことを『院内感染』と言うんだ。例えば、点滴や注射、手術などで使う器具を介して病気がうつってしまう場合や、空気中に漂っている病原菌を吸い込んでしまう場合、感染している患者さんと同じ病室で過ごしたりすることでうつってしまう場合など、様々な経路があるんだよ。

介護を学びたい

色々な経路があるんですね。でも、病院は清潔にしているはずなのに、どうして感染してしまうんですか?

介護の研究家

確かに病院は清潔にしているけど、治療のためにたくさんの病気を抱えた人たちが集まっている場所でもあるから、どうしても病原菌が多く存在してしまうんだ。それに、治療で薬をたくさん使うから、薬が効かない強い病原菌も出てきてしまう。だから、院内感染は完全に防ぐのが難しい問題なんだよ。

院内感染とは。

病院の中での感染について説明します。「病院内感染」とは、病院などの医療施設で、細菌やウイルスなどの病原体に感染してしまうことです。病院は病気を治す場所ですが、同時に色々な病原体を持った患者さんが集まるため、感染症にかかりやすい危険な場所でもあります。さらに、抗生物質や消毒薬をよく使うため、薬が効きにくい病原体が多い環境でもあります。ちなみに、病院の外で感染することを「市中感染」といいます。

院内感染とは

院内感染とは

病院で病気を治そうと訪れたのに、そこで新たな病気にかかってしまう、ということを想像してみてください。これが「院内感染」です。院内感染とは、病院などの医療施設内で起こるあらゆる感染症のことを指します。入院している患者さんだけでなく、検査や手術、通院などで病院を訪れた人も院内感染する可能性があります。

院内感染の原因となる病原体は様々です。風邪や季節性流行性感冒などの身近な病気から、肺炎、手術後の傷口の感染、尿の通り道の感染、血液の感染など、多くの病気が院内感染として発生する可能性があります。これらの感染症は、細菌やウイルス、真菌といった微生物によって引き起こされます。これらの微生物は、空気中を漂ったり、医療機器や人の手などを介して広がっていきます。

院内感染は、患者さんにとって大きな負担となります。治療のために病院を訪れたのに、新たな病気にかかってしまい、治療期間が延びたり、症状が悪化したりする可能性があります。さらに、高齢者や免疫力が低下している人などは、院内感染によって重症化しやすいため、命に関わる危険性も高まります。

そのため、病院では院内感染を防ぐための様々な対策を行っています。医療器具の消毒や滅菌、職員の手洗いの徹底、マスクの着用、患者さんの隔離など、様々な方法で感染の拡大を防ぐ努力をしています。患者さん自身も、咳エチケットを守ったり、手洗いをこまめに行うなど、感染予防に協力することが重要です。一人ひとりが意識を高め、協力することで、院内感染のリスクを減らし、安全な医療環境を守ることができます。

項目 内容
定義 病院などの医療施設内で起こるあらゆる感染症
感染対象 入院患者、検査・手術・通院などで病院を訪れた人
原因となる病原体 細菌、ウイルス、真菌などの微生物
感染経路 空気感染、接触感染(医療機器、人の手など)
代表的な感染症 風邪、季節性流行性感冒、肺炎、手術後の傷口の感染、尿路感染、血液感染など
リスクの高い人 高齢者、免疫力が低下している人
病院での対策 医療器具の消毒・滅菌、職員の手洗い、マスク着用、患者隔離
患者ができる対策 咳エチケット、こまめな手洗い

感染経路を知る

感染経路を知る

病院など医療機関で起こる感染は、主に三つの道筋をたどって広がります。一つ目は、接触感染です。接触感染とは、感染している人の体液や排泄物、あるいはそれらで汚れた医療器具などに直接触れることで、病原体が体に侵入し感染することを指します。例えば、感染した人の便や血液が付着した手すりやドアノブに触れた後、自分の口や鼻、目を触ってしまうと感染する可能性があります。そのため、石けんと流水を使った丁寧な手洗いや、アルコール消毒液による手指衛生、医療器具の適切な滅菌処理は、接触感染を防ぐ上で非常に大切です。

二つ目は、飛沫感染です。これは、感染している人が咳やくしゃみをした際に、口や鼻から飛び散る小さな水滴(飛沫)の中に含まれる病原体を吸い込むことで感染します。この飛沫は比較的大きく、空気中を遠くまで漂うことはありません。そのため、感染者と適切な距離を保つこと、マスクを正しく着用すること、咳やくしゃみをする際に口と鼻を覆う「咳エチケット」を心がけることが有効な予防策となります。

三つ目は、空気感染です。空気感染は、空気中に漂う非常に小さな粒子(エアロゾル)の中に含まれる病原体を吸い込むことで感染します。この粒子は非常に小さいため、長時間空気中を漂い、遠くまで運ばれる可能性があります。そのため、空気感染を防ぐためには、病室や共有スペースの換気を十分に行うことが最も重要です。窓を開けて自然換気を行う、あるいは換気扇や空気清浄機を使用して空気を入れ替えることで、空気中の病原体の濃度を下げ、感染リスクを低減することができます。

このように、院内感染には複数の経路があり、それぞれの経路に適した対策を講じる必要があります。医療従事者はもちろんのこと、患者やその家族も感染経路と予防策について正しく理解し、協力して感染予防に取り組むことが、院内感染の発生や拡大を防ぐために不可欠です。

感染経路 説明 予防策
接触感染 感染者の体液や排泄物、またはそれらで汚染されたものに触れることで感染 石けんと流水での手洗い、アルコール消毒、医療器具の滅菌
飛沫感染 感染者の咳やくしゃみによって飛び散る飛沫を吸い込むことで感染 感染者との距離確保、マスク着用、咳エチケット
空気感染 空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込むことで感染 換気

患者ができること

患者ができること

病院では、患者さん自身も院内感染を防ぐためにできることがいくつかあります。感染を防ぐためには、一人ひとりの心がけが大切です。まずもっとも大切なのは、まめな手洗いです。トイレの後や食事の前だけでなく、病棟内を移動した後や、色々な物に触れた後などにも、こまめに手を洗う習慣をつけましょう。流水と石鹸で丁寧に洗うことで、手に付いたウイルスや細菌を洗い流すことができます。手洗いは感染のリスクを大きく下げることにつながります。

次に、咳やくしゃみが出るときには、周りの人への感染を広げないための工夫をしましょう。「咳エチケット」という言葉を知っていますか?咳やくしゃみが出るときは、マスクを着用するのが一番良い方法です。もしマスクを持っていない場合は、ティッシュやハンカチ、または肘の内側などで口と鼻を覆い、飛沫が周囲に広がらないようにしましょう。咳やくしゃみは、感染を広げる主な原因の一つです。咳エチケットを心がけることで、周りの人を守ることができます。

自分の体の状態に気を配ることも大切です。熱っぽい、咳が続く、体がだるいなど、いつもと違うと感じたら、すぐに看護師さんや医師に伝えましょう。些細なことでも構いません。早く異常に気付くことで、早期の発見と治療につながり、病気を重くしないために役立ちます。また、他の患者さんへ感染を広げるリスクも減らすことができます。

これらのことを心がけることで、院内感染のリスクを減らし、より安全に治療を受けることができます。皆さんの協力が、院内感染を防ぐ力となります。

項目 具体的な行動 目的
手洗い トイレの後、食事の前、病棟内移動後、色々な物に触れた後など、流水と石鹸で丁寧に手を洗う 手に付いたウイルスや細菌を洗い流し、感染のリスクを下げる
咳エチケット 咳やくしゃみが出るときは、マスクを着用する。マスクがない場合は、ティッシュ、ハンカチ、肘の内側などで口と鼻を覆う 飛沫が周囲に広がるのを防ぎ、感染を広げるのを防ぐ
体調管理 熱っぽい、咳が続く、体がだるいなど、いつもと違うと感じたら、すぐに看護師や医師に伝える 早期発見・早期治療、病気の重症化防止、他患者への感染リスク軽減

医療機関の取り組み

医療機関の取り組み

病院などの医療機関では、院内での病気が広がるのを防ぐために、さまざまな活動をしています。医療で使う道具は、きちんと菌をなくしたり、消毒したりすることはもちろん、病院の中をいつも清潔に保つために掃除や空気の入れ替えをしっかり行っています。また、そこで働く人たちが感染予防についてきちんと理解し、実践できるように、定期的に勉強会や研修会を開いています。

さらに、どんな病気がどれくらい発生しているかを常にチェックし、もし病気が広がりそうになったら、すぐに対応できる準備をしています。感染症の専門家である感染制御医や感染管理認定看護師といった専門家が中心となって、院内感染対策チームを作る病院も増えてきました。このチームは、病院内で病気が広がらないように対策を考え、実行していく大切な役割を担っています。

たとえば、患者さんの状態に合わせて部屋を分けたり、病気に感染した疑いのある患者さんをすぐに隔離したりするなど、感染拡大を防ぐための細かい対応を決めています。また、職員一人ひとりが正しい方法で手洗いや消毒、マスクの着用などを徹底して行うように指導しています。

これらは、患者さんが安心して治療を受けられる安全な環境を作るための大切な取り組みです。医療機関は、このような活動を通して、常に医療の安全性を高める努力を続けています。そして、地域住民の健康を守るという重要な役割を担っているのです。

対策 具体的な活動
衛生管理 医療器具の滅菌・消毒、院内の清掃、換気
教育・研修 感染予防に関する勉強会・研修会の定期開催
サーベイランス 院内感染発生状況のモニタリング
チーム医療 院内感染対策チームによる対策立案・実行

  • 患者状態に合わせた部屋分け
  • 感染疑いのある患者の隔離
  • 職員への手洗い・消毒・マスク着用指導

多剤耐性菌の問題

多剤耐性菌の問題

病院内でかかる感染症の中で、特に心配されているのが、複数の薬が効かない細菌、多剤耐性菌による感染です。この多剤耐性菌とは、様々な種類の抗生物質が効かなくなってしまった細菌のことを指します。

病院では、病気を治すために抗生物質を使う機会が多く、抗生物質が効かない細菌が生まれやすく、広まりやすい環境になっています。

このような多剤耐性菌による感染症は、治療が難しく、症状が重くなる危険性も高いことから、院内感染の中でも特に大きな問題となっています。多剤耐性菌感染症にかかると、使える薬が限られてしまい、治療に時間がかかったり、場合によっては命に関わることもあります。

この多剤耐性菌の発生を抑えるためには、抗生物質を正しく使うことが何よりも重要です。抗生物質は、本当に必要な時に、必要な量だけを使うべきです。風邪などのウイルス性の病気には効果がないため、むやみに抗生物質を服用することは、耐性菌の出現につながる可能性を高めます。

病院では、抗生物質がどのように使われているかを常に監視し、本当に必要な場合にのみ抗生物質を使うという方針を徹底するなど、多剤耐性菌対策に力を入れています。また、医療従事者は、手洗いや消毒を徹底することで、多剤耐性菌の拡散を防ぐ努力をしています。

患者さん自身も、医師の指示に従って抗生物質を服用し、自己判断で服用を中止しないことが大切です。医師や薬剤師から、抗生物質の使い方についてきちんと説明を受け、正しく服用することで、多剤耐性菌の発生を防ぐことに繋がります。

問題点 原因 対策
病院内での多剤耐性菌感染の増加
  • 抗生物質の使用機会が多い
  • 抗生物質が効かない細菌が発生・拡散しやすい環境
  • 抗生物質の適正使用(必要時、適量のみ)
  • 抗生物質の使用状況の監視
  • 医療従事者の手洗いや消毒の徹底
  • 患者の自己判断による服用中止の防止
多剤耐性菌感染症の治療困難 使える薬が限られる 医師の指示に従った抗生物質の服用

私たち全員で防ぐ意識を

私たち全員で防ぐ意識を

病院内で病気が広まることを院内感染といいます。これは病院の中だけの問題ではなく、私たちみんなが気を付けて防がなければなりません。院内感染が起きると、入院している人だけでなく、見舞いに来た人や病院で働く人にも感染が広がる恐れがあり、地域社会全体に影響を及ぼす可能性もあるのです。

一人ひとりができる対策として、最も基本的なことは手洗いです。流水と石鹸で丁寧に手を洗い、病原菌を洗い流すことで感染のリスクを減らすことができます。また、咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、肘の内側などで口と鼻を覆う、いわゆる咳エチケットも大切です。これらの基本的な感染対策をしっかり行うことで、感染の可能性を大きく下げることができます。

病院に見舞いに行く際も、感染予防に協力することが重要です。医療スタッフの指示に従い、面会時間や人数制限などを守りましょう。また、病院によってはマスクの着用を求められる場合がありますので、指示に従ってください。体調が悪い場合は、無理に見舞いに行かず、回復してから訪れるようにしましょう。感染を広げないためにも、周りの人の健康に配慮することが大切です。

院内感染を防ぐには、病院で働く人と患者さん、そして地域に住む人たちが協力し、一緒に取り組むことが重要です。そのためには、正しい知識を身につけることが大切です。テレビや新聞、インターネットなどで、感染症に関する情報を積極的に収集し、正しい理解を深めましょう。また、地域社会全体で感染予防の意識を高める取り組みも重要です。

一人ひとりが感染予防を意識し、行動することで、安全な医療の場を守り、みんなの健康を守ることができます。私たち全員で協力して、院内感染を防ぎましょう。

対象者 対策
みんな
  • 手洗い
  • 咳エチケット
  • 感染症に関する情報を収集し、正しい理解を深める
見舞いに行く人
  • 医療スタッフの指示に従う(面会時間、人数制限など)
  • マスク着用(指示がある場合)
  • 体調が悪い時は見舞いに行かない
病院で働く人、患者、地域住民
  • 協力して感染予防に取り組む
  • 地域社会全体で感染予防の意識を高める