エコマップ:地域資源を活かした介護

介護を学びたい
先生、「エコマップ」って言葉、初めて聞きました。介護と介助に関係あるんですか?

介護の研究家
そうだね。エコマップは、地域にある介護や介助など、様々なサービスを提供しているところを図にして、関係性を分かりやすく表したものだよ。例えば、お年寄りのAさんがいたとして、Aさんがどんなサービスを受けられるか、どこに相談すれば良いかを考える時に役立つんだ。

介護を学びたい
つまり、地域にある色々なサービスを繋げる地図みたいなものですか?

介護の研究家
まさにその通り!病院や役所、ボランティア団体など、色々な機関が載っていて、その人がどんなサービスを受けられるか、誰がどんな支援をしているのかが分かるようになっているんだ。関係性を視覚的に把握することで、より良いサービス提供体制を考えるための大切な資料となるんだよ。
エコマップとは。
「介護」と「介助」という言葉に関連した『関係図』について説明します。この関係図は、地域にある介護などのサービスを提供する場所を図にして、それぞれのつながりを分かりやすく表したものです。地域資源関係図とも呼ばれています。具体的には、その地域にある健康や医療、福祉に関するサービスはもちろん、住まい、移動手段、周りの環境、地域の人々で作る町内会や自治会、NPOなどの活動についても書き込みます。そして、介護が必要な人が何を求めているのかを踏まえて、それに合った介護サービスを提供できる仕組みを作るための資料となります。
エコマップとは

エコマップとは、ある個人や家族を中心として、周囲とのつながりを絵にしたものです。社会資源関係図とも呼ばれ、利用できる様々なサービスや、支えてくれる人々との関係を、分かりやすく示してくれます。
例えば、介護が必要な方を中心に考えると、その周りに病院や介護施設、訪問看護ステーションなどの医療・介護サービス、市役所や社会福祉協議会などの公的機関、そして地域包括支援センターなどの相談窓口などが配置されます。さらに、家族や親戚、友人、近所の人々など、個人的なつながりも大切なので、これらも合わせて図に書き入れていきます。
それぞれのつながりは、線で表され、線の種類によって関係性の強さや種類が分かります。例えば、太い線は強い結びつき、細い線は弱い結びつき、点線は希薄な関係を表します。また、実線は良好な関係、波線は緊張感のある関係といったように、線の種類を変えることで、より詳しい状況が把握できるようになります。
このエコマップを作成することで、どのような支援を受けられるのか、誰が支えてくれるのかが一目で分かるようになります。また、関係性が薄い部分や、支援が不足している部分も明らかになるため、今後の支援計画を立てる上でも非常に役立ちます。複雑な状況を整理し、関係者間で情報を共有することで、より良い支援体制を築き、本人や家族の生活の質を高めることにつながるのです。
例えば、高齢のお母様の介護をしている娘さんが、エコマップを作成することで、お母様を支える様々な資源の存在を認識し、ケアマネジャーとの連携を深めたり、地域のボランティア活動に参加するきっかけを見つけたりすることができるでしょう。このように、エコマップは、介護に関わるすべての人にとって、心強い味方となるでしょう。
活用事例

暮らしの地図とも言われるエコマップは、介護だけでなく様々な場面で活用されています。その活用事例をいくつかご紹介します。
まず、高齢者の自宅での介護支援です。
ケアマネージャーは、エコマップを使って家族や地域包括支援センター、訪問看護ステーションなど、高齢者を取り巻く様々な関係性を目に見えるように整理します。これにより、関係者間の連携がスムーズになり、より適切なサービス提供へと繋がります。例えば、家族がどの程度介護に関われるのか、地域にはどのような支援資源があるのかなどが一目で把握できるため、ケアマネージャーは現実的な支援計画を立てることができます。
次に、子育て支援の現場です。
保育園や幼稚園、子育て支援センター、地域のサークル活動など、子育てに関わる様々な場との繋がりをエコマップで把握することで、子育て家庭の孤立を防ぎ、必要な支援を提供することに役立ちます。子育て中の親は、慣れない育児の不安やストレスを抱えがちです。エコマップは、親が気軽に相談できる場所や利用できるサービスを明らかにすることで、子育ての負担軽減を図ります。また、地域との繋がりを強めることで、子育て家庭が孤立してしまうことを防ぎ、地域ぐるみで子育てを支える体制づくりに貢献します。
さらに、障害のある方の支援にも活用されています。
就労支援機関や相談支援事業所、地域活動支援センターなどとの関係性をエコマップで整理することで、一人ひとりの状態や希望に合わせた支援計画を立てることができます。障害のある方は、仕事、住まい、日常生活など様々な面で支援が必要となる場合があります。エコマップは、どのような支援機関が関わっているのか、どのようなサービスが提供されているのかを明確にすることで、多様なニーズに対応した、切れ目のない支援を実現します。
このように、エコマップは様々な分野で活用され、人々の暮らしを支える上で重要な役割を果たしています。
| 活用場面 | 対象者 | エコマップで可視化する関係性 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 高齢者の自宅での介護支援 | 高齢者 | 家族、地域包括支援センター、訪問看護ステーションなど | 関係者間の連携促進、適切なサービス提供、現実的な支援計画策定 |
| 子育て支援 | 子育て家庭 | 保育園、幼稚園、子育て支援センター、地域のサークル活動など | 子育て家庭の孤立防止、必要な支援提供、子育て負担軽減、地域ぐるみでの子育て支援体制づくり |
| 障害のある方の支援 | 障害者 | 就労支援機関、相談支援事業所、地域活動支援センターなど | 状態や希望に合わせた支援計画策定、多様なニーズに対応した切れ目のない支援の実現 |
作成手順

人が中心となる図を書くことで、その人と周りの関わりを分かりやすく整理することができます。この図は、真ん中にその人自身か家族を置き、周りに病院や福祉サービス、役場、近所の集まり、親戚、友達など、関わるもの全てを配置して作ります。
それぞれの繋がりは線で表し、線の種類で関わり具合を示します。例えば、しっかりとした線は良い関係を表します。点線のように途切れた線はあまり関わりがないことを示し、波線は関係に問題があることを表します。さらに、矢印を使って、どちらからどちらへ助けや情報が流れているのかも示すことができます。
例えば、病院からその人へ矢印が向いていれば、病院から治療を受けていることが分かります。反対に、その人から病院へ矢印が向いていれば、その人が病院へ何か働きかけていることを示します。福祉サービスや役場、近所の集まりなども同じように矢印で関係性を示すことができます。
親や兄弟、友達との関係も、線の種類や矢印で表現できます。良い関係であれば実線で繋ぎ、連絡をあまり取っていなければ点線で繋ぎます。もし、関係が悪ければ波線を使います。誰から連絡を取ることが多いのか、誰から助けてもらっているのかなども矢印で示すと、より分かりやすくなります。
この図を作る上で大切なのは、その人にとって関係のあるもの全てを漏らさず書き出し、それぞれの繋がりを正しく表現することです。そうすることで、その人がどのような支えの中で生きているのか、また、どのような問題を抱えているのかを理解することができます。そして、より良い関係を築くために何をすれば良いのかを考えるヒントになります。
得られる効果

生活を取り巻く様々な関係性を図式化したエコマップを作成することで、多くの良い影響が期待できます。まるで地図を描くように、自分自身や家族を中心とした人間関係や社会資源との繋がりを視覚的に整理することで、複雑な状況全体を把握しやすくなります。これまで見えにくかった問題点や課題が浮き彫りになり、状況を客観的に理解することができます。
例えば、高齢者の介護を例に挙げると、家族や親戚、友人、近隣住民、ケアマネージャー、ヘルパー、デイサービス、病院など、様々な人や機関が関わっています。これらの関係性を線で繋ぎ、強さや種類を書き込むことで、誰がどのような形で関わっているのかが一目で分かります。これにより、どこに負担が集中しているのか、どの関係性が弱まっているのかといった問題点が明確になります。
また、エコマップは利用できる資源や足りない資源を把握するためにも役立ちます。例えば、近くに頼れる親戚が住んでいる、地域のボランティア団体と繋がっている、といった活用できる資源を把握することで、より効果的な支援体制を築くことができます。反対に、金銭的な支援が不足している、専門的な知識を持つ人がいない、といった足りない資源を把握することで、必要な支援を早期に見つけることができます。
さらに、作成したエコマップを関係者間で共有することで、お互いの役割や状況に対する理解を深め、連携を強めることができます。介護する家族と専門職が同じ情報を共有することで、よりスムーズな連携が実現し、利用者にとって最適な支援を提供することに繋がります。定期的にエコマップを見直し、更新することで状況の変化を捉え、柔軟に対応していくことも可能です。変化する状況に合わせて関係性や資源を見直すことで、常に最適な支援を続けることができます。

作成時の注意点

生活を支える地図、エコマップを作る上での大切な点をいくつかお伝えします。
まず、地図に書き込む情報は、個人や家族の大切な秘密です。取り扱いには十分注意し、許可なく他の人に見せない、話さないようにしましょう。信頼関係を守ることは、支援の第一歩です。
次に、エコマップを作ることは、目的ではありません。地図を作ることで、どんな支援が必要か、どんな資源を活用できるかが分かります。作った地図をじっくり見て、具体的な支援の計画を立て、実際に行動に移すことが大切です。
そして、人の繋がりや使える資源は、常に変化します。そのため、エコマップは定期的に見直し、更新する必要があります。例えば、3ヶ月ごとに見直す機会を設けるなど、常に最新の状況を反映した地図を保つよう心がけましょう。
最後に、エコマップは、関係者みんなで一緒に作るものです。支援する側が一方的に作るのではなく、本人の思いや家族の考えを尊重し、一緒に話し合いながら作り上げていくことが大切です。良い関係性を築きながら、より良い支援を目指しましょう。
これらの点をしっかり守ることで、エコマップは、本当に役立つ、生活を支える地図となります。
| 大切な点 | 説明 |
|---|---|
| 秘密の保持 | 地図に書き込む情報は個人や家族の大切な秘密です。許可なく他の人に見せない、話さないようにしましょう。 |
| 目的の明確化 | エコマップを作ることは目的ではなく、支援に必要なことや活用できる資源を明確化するための手段です。地図をもとに具体的な支援計画を立て、行動に移しましょう。 |
| 定期的な見直し | 人の繋がりや使える資源は常に変化するため、エコマップは定期的に(例:3ヶ月ごと)見直し、更新する必要があります。 |
| 共同での作成 | エコマップは関係者みんなで一緒に作るものです。本人の思いや家族の考えを尊重し、一緒に話し合いながら作り上げていきましょう。 |
まとめ

人や家族が持つ、周りの様々な資源との繋がりを図に表す方法として、エコマップがあります。これは、中心にある人や家族と、周りの病院や役所、近所の人々、友人、親族といった様々な資源との関係性を線で繋いで表すものです。線の種類や太さで、関係性の強さや種類(例えば、良好な関係、葛藤のある関係、経済的な援助など)を示すことができます。
このエコマップは、介護の現場だけでなく、様々な分野で役立っています。例えば、現在の状況を把握するために使ったり、これからどのような支援が必要かを考える際の計画づくりに役立てたり、色々な専門職の人たちが協力して支援を行う際の連携を深めるためにも活用できます。
エコマップを作る際には、いくつか注意すべき点があります。まず、個人情報を取り扱うため、プライバシーに十分配慮することが大切です。また、人を取り巻く環境や状況は変化するものですから、定期的にエコマップを見直し、更新していく必要があります。さらに、エコマップを作る際には、中心となる人や家族、そして関係する人たちと、よく話し合いながら進めることが重要です。良好な関係を築き、信頼関係を保ちながら作成することで、より実態に即した、役に立つエコマップを作ることができます。
このように、エコマップを適切に活用することで、より質の高い支援を提供することができ、ひいては人や家族の生活の質を向上させることに繋がります。複雑に絡み合った状況を整理し、必要な支援を届けるための道しるべとして、エコマップはこれからますます重要になっていくでしょう。
